第77話 魔人覚醒

「まてっ!!」


ドスの効いた声を聞いて、武器を振りかざして須藤とルイーゼに襲い掛からんとするモンスターの群れが突如止まった。


ドスンッ!


重いハルバートを地面に突き立てた際の衝撃が頭のてっぺんにまで響いた。


まるで地震のような響きはかなりの重さであることが分かる。


「よう、スドウじゃないか。こんなところで何をしているんだ?」


葉巻を口にくわえたまま、スコットはしかし明らかに今まで須藤が見てきたそれとは違う目つきで彼を見ていた。


あれは獲物を狩る猛獣の目。


そこに情けなどはなく隙あらば襲い掛からんとする野獣の目つきだ。


「スコットさんこそなぜここにいる?」


俺は感情を出さずに目の前の“仲間”に声をかけた。


緊張している内面を感づかれないか心配だ。



須藤の懸念が拍子抜けするかのような口調でスコットは口を開いた。


「オレは2週間の休暇中にもモンスター狩りのリクエストをギルドの受付から要請されてよ。王国の騎士団と一緒に人里を襲う凶暴なモンスターを丁度今しがた掃討し終わったところよ」


「じゃあ・・・・、あのエルフたちは何なんだ?」


須藤は手かせをはめられ、足を鎖で数珠つなぎにされて馬車へと乗せられていくエルフの若い男女を指さした。


「ああ、あれは大魔王にくみする悪いエルフたちでこれから王国で裁判にかけるために護送するところさ」


「あんな小さな子までか?」


須藤が指さした先に幼いエルフの少女がおびえた表情で彼らの成り行きを見ていた。


「おい、さっさと歩け!」


甲冑を着た兵士が少女を鉄の槍の柄で小突いて馬車へ歩くよう命令した時。


「・・・・・・・ケッ、“日本”でもやたら厄介な思考をしている生意気なガキだと聞いてたが、余計なことにばっかり気づくような性格してると早死にすることになるぜ、スドウ!」


「かああああああああああああああああああっっっっっ!!!!!」


スコットの目に異様な紫色の光が輝き、見る見るうちに戦闘力と魔力が急上昇していくのがステータスのデータからすぐに分かった。


分かっていても緊張するのはパーティを組んでいた時からスコットの異様な威圧感に内心恐怖を感じていたからだ。


「何だよ、このすさまじい妖気は!!!!!!!?」


「気を付けてくださいスドウさん!あの男はただの人間種じゃない!!!!!!!」


「お前が余計なことに気づいたときはいつでも消していいって女王様からも“特公”からも言われてるからなあ!冥途の土産に見せてやるよ、オレ様の真の姿を!!!!」


奴の着込んでいた甲冑が醜く盛り上がりその鉄板の表面にひびが入って割れた!


そこには醜い面構えの黒い体表をした、凶暴さを嫌が応にも見た者に見せつける赤い目をした筋骨隆々のオーガがそこに現れた!


それも通常のオーガの倍の体躯を持つ化け物。


これでもかといわんばかりにホオジロザメのようなギラつく凶暴な牙を見せつけ、狂戦士のごとき突風のような激しい闘気を放つオーガが須藤たちの前に立ちふさがった!

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