第72話 亜空間の罠

血を流しながら走るベルリオーネ!


顔色は悪く、ゼエゼエと苦し気な息を吐きながら襲い来るモンスターを走り際に斬り捨てていく。


「こうも早く法眼に気づかれるとは!早くここから脱出を!」


警報がけたたましく鳴り響き、赤い警告ランプが彼女の白い魔女帽とローブを真っ赤に照らす。


「おいっ!魔導士が潜入してるって本当なのかよ!!」


「そんなバカな!監視カメラにも魔導探知機にも何の反応もないぞ!」


「出来るだけ捕縛しろ!!」


武器庫のロッカーを開け、ゴブリンとリザードマンがRPK軽機関銃とAKMを取り出し、各自真っ白な廊下を走りながら上から見て右側にある大型のセレクターレバーを一番上のセーフティ状態から一つ下げてフルオートの位置にした。


廊下の角から白い魔女帽とローブが走ってきたのを視認するや否や、奇声を上げながらゴブリンとリザードマンそしてオークたちが乱暴に引き金を絞った。


反動の強いRPKとAKMのフルオート射撃がベルリオーネに撃ち込まれる!


ベルリオーネは防御魔法を全開にした!


複雑な術式が書かれた青白い魔法陣が彼女の前面に展開され、分厚い土嚢や木々、鉄板も貫通する7.62mm×39弾をすべて弾き返す!


だが、7.62mm弾が撃ち込まれるたびにベルリオーネの表情に苦しみが増していく。


そのまま突撃した彼女はRPK軽機関銃の長い銃身を手刀の先に展開した青白い魔法の刃で一刀両断した!


所持者のオークが動揺の表情を浮かべる直前にそいつを切り捨てた!


「いつの間にそばまで来やがったこのアマ!!!!」


モンスターたちの中をかき分けて一瞬でその中心に到達したベルリオーネ。


すさまじい速さで至近距離まで来たベルリオーネにモンスターたちはパニックを起こす。


「ぶっ殺してやる!!!!」


「わっ、バカやろ!!!!!!!!!」


ダダダダダダダダダッッッッ!!!!


重い発砲音が狭い廊下に反響する!


「ぶべっ!!!!」


銃声のコンマ2秒前に空中に飛ぶベルリオーネ。


狭い廊下でのパニックに身を任せたオークの見境のないフルオート射撃は近くのゴブリンやリザードマンの胴体に7.62mm弾を見境なく撃ち込んだ!!


白い廊下は青の魔族の血で染まっていった。


同士撃ちで肉塊とかしたモンスターを振り返らずにベルリオーネはひたすら走る!


漸く外へのドアを見つけて力任せに突進した!


漸く外の空気に触れた・・。


瞬間だった!


「ウンハイルフォル!」


「!?」


一瞬で周囲が暗黒に染まり何も見えなくなった。


「しまった!!!これはあの女の亜空間魔法!!」


「つっかまえた~♬ベルリオーネちゃん♬」

「いや・・・・、冥龍穂香(めいりゅうほのか)警部!」


「ほ・・・法眼夏美(ほげんなつみ)・・・警部!」


スーツ姿の知的な雰囲気な女性。


だが、笑っているその表情とは裏腹に瞳の奥には一点の温かみもない。


「あなたが特別選抜課程の時に会った時からな~んかあんたのことが妙に気になっててね~♬」


「私ら特務系の組織に入るには“始原の暁”に入ることが不文律」


「だが、あんたは最初から私らが陰に陽にアプローチをかけても頑として私らの教祖様に忠誠を誓うことをのらりくらりと避け続けた」


「・・・・・・・」


「さっきも聞いたけどあんた“桔梗”の一味なんだろ、冥龍穂香(めいりゅうほのか)!!!!」


「・・・・・・・・・・」


ベルリオーネの握る金属製の杖に埋め込まれた赤い宝玉が光り輝き始める。


「何もあなたに答える気はありません、法眼警部!」


「ヒュー♬私の亜空間で魔力をなおも発揮できるなんてさすがだねえ~♬」


目を一瞬つむった法眼夏美はカッと目を見開き、眉間にシワを寄せて夜叉の様な表情と化した!


「話す気ないなら殺すよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る