第70話 エルフの少女
変質者どもは仕留めた。
脳内にステータスを表示させて奴らの能力を図りながら戦っていたが、戦いの中で奇妙なことに気づいた。
奴らには3人とも“固有の魔力周波数”がなかった。
ベルリオーネさん曰く、修行して魔力を身につけた者には必ず固有の魔力周波数が発生する。
丁度、指紋や銃の施条痕(せんじょうこん)のようなもので、魔力を発動した場合、熟練した魔導士・魔法使いならば遠方からでも発動している者が誰なのかを一発で分かるらしい。
そのため、魔法で敵を倒せばその死体に残るわずかに残る魔力で仕留めた術士を特定できる。
故に、魔法には相手を洗脳して操ったり、他人に化けて成り済ますなどの犯罪に悪用できるものが無数に存在するが、そんなことをすると練度の高い魔導士や魔法使いに即座にバレるがため、うかつに魔法を悪用できないようになっているとベルリオーネさんは言っていた。
他人に固有の周波数がばれないレベルで魔法を操れるのは第一級魔導士クラスにならなければできる芸当ではないともベルリオーネさんは言っていたのを思い出した。
同時に、奴ら3人とも、死ぬ一歩手前で魔力の数値が一気にゼロになったのも気になった。
通常、魔力を消費しきらずに術士が死んだ場合、魔力はしばらくその場に残置する。
ベルリオーネさんが言うには、心霊現象やらは術士などの魔力を持っていた人間ないしモンスターの残留思念が魔力の滞留によってあたかも幽霊のように出現するとのこと。
だからステータスでは魔法を使うモンスターを倒してもしばらくその死体や周辺に連中の魔力の痕跡が結構残る。
それが嫌な場合、一種の魔力除去を行う魔導士や魔法使いもいるらしい。
なんか神社や寺の御払いみたいだなとベルリオーネさんから聞いたときは思った。
それが、こいつらからは死ぬと同時に魔力が完全に消えたのだ。
全く魔力がその場に残らない。
まるでその魔力がそいつらの物ではなかったとしか言いようがない。
奴らが言っていた通り、奴らに力を与えた親玉が奴らを体よく操っていただけなのか?
まあ、どのみち連中に同情の余地はない。
考えていると、はたにエルフの少女が体を震わせながらこちらを見ていた。
「助けてください!私たちの故郷が・・・・、襲われているんです!!!」
開口一番、エルフの少女は涙目でそう言った。
「襲われている?大魔王の軍勢にか?」
「大魔王?何ですかそれは?」
「俺は仲間たちとともにこの世界をわがものにせんとする大魔王とその軍勢と戦っている」
俺がそう言うと、急にエルフの少女の表情が険しくなった。
「何ですかそれは!まさかあなたも“異世界”からここに転生して私たちを襲っている連中の一味なんですか!?」
エルフの少女は後ろにバク転して飛び、着地と同時に腰から短剣を引き抜いて順手(セイバーグリップ)に構えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます