第68話 最前線で機能するのは魔導のみ
モーニングスターは金属製の杖の先端に棘付きの鉄球を鎖でつないだRPG定番の武器。
下品なブタ鼻が臭い息をまき散らしながら禍々しい棘の付いた鉄球を高速で振り回す!
「死ねよモブ1!!!!」
ドガッッッ!!!!!!!!!!!!
空中に飛んで鉄球をかわす。
思った以上に正確に鉄球を投擲してきた。
俺と同じようにこの世界に来て身の丈以上の力を与えられた口か!?
「ぶももももももも!!!!素早いっす!!ウザッといモブっす!!!!」
「それで終わりか豚野郎!」
「ブヒい!!!!サンダーファイヤー!!!!」
「!!」
目の前に雷撃が飛んできた!
何とか交わしたが、エネルギーが集束した電撃が俺の後方の木々に直撃し、数メートル先までそれらを消し炭にした。
「ブヒヒほほほっほ♬僕をただの鉄球ブン回しキャラだと思ってるとマジひき肉にしちゃうよ♬」
こいつ・・・、見かけによらずまあまあ魔力を持ってるな・・・。
「オイ、デブ!お前なぜエルフを追いかけている?」
「んなもん決まってんじゃないすか~。僕の彼女にして毎晩宿屋でコスプレしてもらっていちゃつくために追いかけっこしてるだけっすよ~」
「それをお前に許可した奴はいるのか?」
「僕に力をくれた女神さまがエルフは魔王に協力する悪者だから捕まえたら女神さまの元に連れて行って牢屋に入れろって言ったんだ!それで悪いエルフを定期的に捕まえたらその中から好きな子は何人か自由にしてもいいって言われたんだもん!」
「オイバカ!それはお前んとこの女神さまからヒミツにしろって言われてるだろ♬」
ひょろがりロン毛マンが得意げに笑った。
目にクマのある小太りの方はキモイ目つきで鼻をほじりながらエルフの方を嘗め回すように見ている。
人身売買をしているのかこいつら・・・!?
丁度いい、テストを兼ねて試すか。
「見たところ日本から転生してきたって感じだが、よほど向こうではもてなかったんだろうなお前!」
俺の発言の直後、奴の額に青筋が一気に浮き上がった。
「うるさい!うるさいうるさい!!何を粋がってるっす!!!!死ぬっす、モブ1!!!!!!!!」
俺は目をつむり、正面から襲い来る恐怖をギリギリまで我慢する。
目の前からさっきに充ちた気と鉄球が荒々しく振り回される際の軋む鎖の音と凶暴な殺意のこもった風が迫ってくる!
“危険な時ほどよく狙え!”
ガトリングさんの教えの通り俺は目の前に意識を集中した。
「混沌よりいでし欲望よ、深淵よりいでし黎明よ、我の意志に応じ無限の創造を眼前に示せ!」
唱えると同時進行で心の中で奴の魔力をイメージする。
そして奴の魔力が奴らに逆流するよう念じた!
「目えつむって瞑想でもしてんのかー!!!!!死ねモブの分際でえええええええ!!」
「秘儀・・・・・・・・・・、“回天冥獄陣”!!!!!!!」
両の手のひらから放たれる赤黒い光が奴に直撃した。
直後、奴の足が止まり、ご自慢のモーニングスターを地面に落とした。
勢いを失ったトゲトゲ付きの鉄球がドッ!!という鈍い音を響かせて物理的に停止する。
「はっ!?なにやって!!・・・な・・・・、何すか!?これは!?」
野郎の体内から発する魔力の雰囲気が変わった。
何かが詰まったような不気味な音と光がデブの体から発し、それが奴自身の体の中心に凝縮されていく。
「今回は派手に花火と行くか!魔力を解放しながら俺と戦おうなんざ自殺志願者と同じよ!」
デブは恐怖に顔が引きつり、ズボンからは悪臭を放つ液体を派手に垂れ流していた。
「フ・・・・・ん……んうううぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「暴行魔なんぞ生きている価値はない。ウンコ花火になって散りな!」
「ぶびいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
空中高く浮かび上がった豚野郎は世にも醜悪な叫び声とキモ面を浮かべながら爆散した。
俺は瞬時に身の回りに防護魔法を張る。
奴の汚い肉片と血と臓物が降ってきた。
後ろを振り返るとエルフの女の子も俺と同じことをしていた。
俺が言わなくてもやるべきことを分かっていてなんかほっとした。
後の2名の顔からう余裕のある表情が一気に消え、ひょろがりは腰を抜かしてその場にへたり込んだ。
クマ目の野郎は歯をガチガチ震わせ、ダガーナイフを必要以上に固く握りしめているのが見えた。
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