第67話 ”冒険者ども”との遭遇

鬱蒼とした森。


時刻は午前中、空は快晴だというのに森の中は暗く、気のせいか空気までよどんでいる。


“神明”という割にはやけに薄暗くて気味悪い森だな・・・・。


俺は中央駅で買った地図を基にハウゼンドルフという町まで徒歩で行くことにしたのはいいが、“神明の森”とかいうここは想像以上に気味が悪い場所だった。


駅馬車の人が言ってた通り、森の中の道は入り組み、少しでも道から外れれば確実に迷子になると直感的に分かるような不気味な場所だ。


動物の気配はなく、しかし邪悪な気配を感じるときは時々ある。


「こんなことならガトリングさんとこでもう一杯コーヒーもらっといたらよかった・・・」


いつモンスターが出てきても対処できるよう、愛刀をすぐに抜けるように常に意識しながら速足で歩く。


その時だった!


「誰か助けて!!!!!」


鬱蒼とした森の中から誰かの声が聞こえた気がした。


俺は声のする方へと走り、しゃがんで茂みの中に隠れた。


木々と茂みの間に隠れながら、葉っぱの合間から向かってくる足音の主を確認する。


「はあっ、はあっ、はあっ、はあ!!!!」


「エルフ?」


耳が長く、金髪に白みがかったプラチナブロンドの美しい少女。


それが必死の形相で俺のいる方向へ走ってくる。


遠目から見る限り、それはプラチナブロンドに耳の長い少女。


典型的なエルフ種族の少女だ。


そう言えばエルフの少女を見るのはこの世界に来て初めてだ。


遠目から見る限り、彼女が身につけている物は簡素な旅人が身につける服と短剣のみ。


昼間でも差し込む光が少ない陰気な木々の中を一人の少女が駆け抜けていく。


「エルフの若い子ってあんまり見かけないな・・・。何でこんな陰気な森に・・・」





そして、彼女に続いて背後からそれを追う足音が複数。





何だ?



気配を限りなく消す。


何かがエルフの後に来る!


ガチャガチャ!!


鈍い金属の音と混じり合った足音は追跡者たちが防具を身につけていることを示している。


だが、走る音の感じからそれほど重量のある甲冑を身につけていないか、もしくは何らかの力で重量を軽くする手練れの者か!?


「いたぞ!!」


あとから3名の男たちがそれを追って走ってきた。


よく見ると、


「まてよ~エルフちゃん♬」


「この世界ってホント最高!VRの世界へ転生できるってアニメの世界とおんなじことが現実に起こるなんてヨ~♬」


「ここにゃ警察も何んにもいないっす。バレなきゃなにしてもいいってわけっす♬」


聞こえてくる会話から追跡者の連中に情けなどかけてはならぬことを瞬時に理解した。


エルフの少女は巨大な岩が道を塞ぐ袋小路に追い詰められた。


「誰か!!!」


「ここには誰も来ないよ~♬」


「こりゃ結構な上玉。マスターも喜んでくれる♬」


俺はおびえるエルフの表情を見ていられなくなった。


「痛で!!」


投擲したイシツブテが軽装の小太り野郎に当たった。


「なんだようっとうしい!!!!誰だ!?」


俺の姿を認めるなり、アゴと口元に剃り残しの髭を持つひょろがりロン毛マンがちんけな軽装鎧をガチャガチャさせながら珍獣を見るような目でこちらを見てきた。


「おっ、モブ1が出てきた」


「ちがうちがう、ザコ1だろ?ほら、町で序盤か中盤に出てくるチンピラみたいな」

眼元にクマのある野郎がダガーナイフを回りを見ずに振り回しながら俺の上から下までねっとりとした視線で見てきた。

マジでキモイ。


「凝った演出ありのアニメでは、魔族に理解を示す悲しい人間の登場ってとこっすね♬」


それぞれが自分の世界観でものを語っている。

何だこいつら?


「お前たちは何者だ?」


「いや、俺らの名前なんか知る間もなく死ぬんだよモブ1!!!!」


3名の中でも一番頭悪そうな革の腰巻をつけた小太りの野郎が金属製のモーニングスターを振り回しながら鼻息をブヒブヒふかして襲い掛かってきた!


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