第64話 亡者との戦闘
「おい!そこで何してんだよ、お嬢ちゃん!」
「!?」
いつの間にかベルリオーネの後ろに冒険者風の男が立っていた。
年齢は16~7くらいと言った感じ。
あまり品のある顔つきではない。
ショートヘアくらいまでやや長くした長髪はメッシュのように部分的に色が違う。
染めたのか、それとも別の要因なのかは分からない。
うつ伏せになって崖の上から下をこっそりのぞいている彼女の背後距離3メートル。
両刃の鋼の剣を手にし、もう片手の手のひらにはで青白い炎を揺らめかしている。
通常のフレイムボールの上位強化版であることを彼女は一瞬で理解した。
慌ててベルリオーネはうつ伏せの状態から飛び上がった!
体操選手のように空中で数度回転して見事に着地するベルリオーネを若い冒険者風の男は手にした鋼の剣を手首で適当に振り回しながら口笛を吹く。
「ひゅー、やるじゃん♬魔法使いって体は弱いのが定番って聞くけど体術にも秀でてるって感じだな」
「あっ、あなたは・・?」
「しらばっくれんじゃねえよ、旅商人のお嬢ちゃんよお!」
気配を感じなかった!
私の周囲に近づく魔力持ちはすべて探知できるはずなのに!?
「いやまてよ・・・・・・、こりゃもしかして結構レべチな魔導士様かなあ~♬」
「何のことでしょうか?」
平静を装いつつベルリオーネの内心に微妙な焦りが出る。
こいつ私の正体に勘づいている!?
だが、この程度の相手なら容易く蹴散らせ・・・・。
「あっ、シュヴァルツ様!!」
「えっ!???」
聞き覚えのある宿敵の名前。
それを少年冒険者が大声で叫んだことに一瞬視線を後ろに向けたのが仇だった!
「化けの皮を剥いでやるぜ!!」
少年がギラつく視線をベルリオーネに向けながら一瞬で鋼の剣を地面に突き立て、その右手から黒い光を放った!
「くっ!!!」
後方にジャンプしながら間合いを開ける!
しかし、一瞬の隙をつかれてかわし切れない!!
空中で黒い光を浴びて、そのまま着地した時、旅商人の娘の姿はなかった。
白い魔女帽に白いローブ。
茶色のロングブーツに胸にはハイン王国第一級魔導士の金属製記章。
凛とした表情の美少女魔導士がそこにいた。
「お~!!!!そのバッジ、第一級魔導士のじゃん!!!!なんでそんな方がここにいんのかな~♬」
「私の変身魔法と認識阻害魔法を共に見破るとは、あなたは何者ですか?」
「おれはなあ、女神様に選ばれてこっちの世界に転生してきたハンマーヘッドっていうのよ!」
「女神様より下賜していただいた“神性銀”の力は最高だぜ!!おかげで何にもしなくてもまじすげえ魔力が手に入ったしなあああ!!!!」
「“神性銀”?あなたもしかして・・・」
「いや~、こんな簡単にすげえ力が手に入るってマジ最高♬努力するとかダサくてやってらんねえわ♬」
「あなた転生者なのですか?」
ベルリオーネの叫びに男は飛び切りのゲス顔を浮かべた。
「おうよ、この世界で大魔王と軍勢を刈り取ればそのほかは何してもいいって御墨付きもらってんだよ!!!!」
「おかげで毎日やりたい放題!!エルフのお嬢ちゃんたちをいくらでも狩っていいわ寝ていわ天国だよ♬」
「詳しく聞きましょうか!」
「お~怖い怖い♬何急にそんな怖い顔するわけ?」
「エルフって魔王の一味、いわば悪の種族だもん。だからいくら殺そうが犯そうが構わねえ」
「おまけにエルフってマジ美人から美少女、さらには美少年の宝庫だし、それを女神さまに献上する役割を担ってるってわけよ」
「そうですか!」
刹那!
ベルリオーネの姿が一瞬で消えた。
男が右手で保持して弄んでいた鋼の剣の刀身が根元から折れた。
折れるというより“豆腐を斬る”ように鮮やかに無音で刀身と柄が分離されたような感じだ。
「へっへっへっ、て、はあ!?」
うぬぼれた表情の男の横を高速ですれ違ったベルリオーネは男の背後4メートル先にいた。
「大層な力と誇っているようですが、今のであなたの首は飛んでいましたよ、見知らぬ冒険者さん」
「こっ、こんの女!!!!ちょっときれいだからってつけあがんじゃねえぞ!!!!」
「あなた“神性銀”がどのようなものなのかを知らないのですか?そんなもので力を身につけたような驕りは哀れみを感じますね」
「うるさい、おれは天才なんだ!!!!」
「オレは選ばれたんだ!!!女神さまになあ!!!!」
「誰も俺をわかっちゃいねえ!!陰キャだのみんなバカにしやがって!!!!」
「オレは特別な人間なんだああああああ!!!!」
「メガフレイムボール!!!!」
男はベルリオーネめがけて攻撃魔法をところかまわず乱射し始めた。
「おまえは・・・」
「ただのにんげんだ!!!」
ベルリオーネは短距離走のランナーがスタートするときのように背を低くした。
そこから一気にがむしゃらにフレイムボールを放ちまくる男めがけて突進する!
寸でのところで男の放つ青白い火の玉をかわし、一気に間合いを詰めた。
「哀れです」
ドカッッッッッッッ!!!
ベルリオーネの金属製の杖が高速の一閃を男の頭にめり込んだ。
男は白目をむいて倒れ、体をびくつかせながら動かなくなった。
手加減したので死にはしないだろう。
「この人もおそらく“日本”からの転生者。“処分場”の噂は事実の様ね」
けれど、転生者の闇の一端を捉えた。
これをゴルフ様に!局長に報告しないと!!
「ど~こへいくのかなあ~、お嬢ちゃん!」
!?
聞きなれた声がベルリオーネの思考に死の恐怖を呼び起した。
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