第61話 ベルリオーネ、ビルへ潜入す
ベルリオーネの脳内に表示される時刻は20時を回っていた。
鬱蒼とした小さな藪のような中に入り、素早く高い木に登る。
姿かたちは旅の商人の娘のままだ。
見る限り“現代的な監視装置”は無視できるか・・・。
魔力探知装置は複数あるようだが、第一級魔導士の認識阻害魔法と、魔力抑制による省エネ魔力発動まで探知できるモデルではないようだ。
侵入経路を透視魔法で調べる。
「武装したオーガにスケルトンの群れが2個分隊か・・・・。今戦うのは避けないと・・・・・・。表の入り口はまず入れない・・・・・」
ベルリオーネの脳内に建物の構造がCGの形状で表示され、侵入可能な経路を調べていく。
「あの小屋に地下室と通路がある・・・」
「白いビルへの侵入経路はあそこしかないか」
スタッ!!
タッタッタッタッ!
高い木から下を見下ろすと、警備中の武装したモンスターが数名見えたが、魔力を極限まで制御して気配を消しているから気づかれない。
誰もないことを確認してから飛んで金網を越えた。
着地してすぐにビル近辺の物置小屋らしき掘っ立て小屋の影に身を隠す。
素早くドアに入る。
かび臭い小屋の中は農機具や鉄パイプなどが収納されていた。
ベルリオーネは素早く地下通路へつながる入り口を探す。
「ここか」
南京錠を金属杖で叩き壊して開け、素早く閉じた。
光属性の攻撃魔法を応用した明かりを手のひらに念じてともす。
人一人がようやく通過できるような細い通路は四方の壁が白いコンクリートでできた防空壕を思わせる強固なものだった。
やや水漏れしている箇所はあるがその中をベルリオーネは素早く進み、階段が見えてきた。
慎重に階段の上にあるマンホール上の上開きのドアを開け、周囲を見る。
明かりが差し込み緊張が増す。
しかし、今は人気がない。
素早くドアを開けて閉め、近くの金属製の棚の影に隠れる。
どうやら食料倉庫らしく、缶詰等がその棚に所狭しと並んでいる。
ベルリオーネは缶詰や米袋の表示を見た。
「・・・日本製!?・・・・何かある・・・?」
素早く探知魔法を使って敵を確認しながら素早くビル内を移動する。
!!?
素早く立ち止まり息を殺す。
タッタッ!
「ぐへえ~」
「ため息つくなよみっともない」
RPKカラシニコフ軽機関銃を持ついかにも臭そうな息を吐くオークと、同じくRPKを持つスケルトンが2名一組で廊下を通過した。
RPKは旧ソ連のアサルトライフル・AKM(AK47の改良型)の軽機関銃仕様である。
口径使用弾薬はAK47やAKMと同じ7.62mm×39。
構造や部品がAKMとほぼ同じでパーツの融通が利く上、肉厚の長銃身はフルオートの連続射撃に耐える構造で、伏射用の二脚(バイポッド)がついているのが特徴である。
基本は40連の箱型弾倉(ボックスマガジン)を使用する。
だが、認識阻害魔法を極低出力で発動させているベルリオーネに気づく警備はいない。
“モンスターの警備兵も現世の武器を持っているとは・・・ますますおかしい”
ビルの中は無機質な白い壁がどこまでも続く。
オフィスビルやマンションというよりは何かの研究所のそれだ。
“まるで”現世“の研究施設!?ここに一体何が?”
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