第60話 禁術の生贄
俺がマブクロに手を突っ込んだ直後。
「何を逃げ回っている?とんだ甘ちゃんだぜお前は!!!!」
どぐっっ!!!!!!!!!!!!!!
「ブッッッッッッッッ!!!!!」
どちゃあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!
瞬間移動のように一瞬で間合いを詰めるスピードで間合いに入り、デーモンの中段まわし蹴りを思い切り食らった。
そのまま吹き飛ばされて床に叩きつけられながら洞窟の壁に当たった。
口からまた血反吐が出る。
これだけ血を吐くのはこの世界に来てから初めてだ。
さっきガトリングさんと戦ってた時よりスピードがさらに速い!
魔力を発揮するだけでこれだけ力が上がるのかよ!?
「あっ、あんた魔力はどれくらいあるんだ!?」
「フン、冥途の土産に教えてやる。俺の魔力は魔界の上位10%以内には入る」
「それはたいそうな力だ、俺が勝てるはずもない」
「ずいぶん物分かりがいいな小童」
「そんな力を振りかざされたら俺は消滅してしまう、怖いよ」
「ひゃははひゃ!!今更泣き喚いたところでどうにもならんわ小童」
今だ!!
俺はマブクロからメリケン粉を入れた袋を取り出して、デーモンの顔に投げつけた。
油断して得意げになっていたデーモンの顔が真っ白になり、消火器をぶっかけられたようなざまになった。
「ぶはっ!!!」
メリケン粉の直撃で顔が真っ白になったデーモンは激しくせき込む。
「へん、お前みたいなバケモンの相手してられるかバーカ!!!」
「ぶしゅ、げほっ!!何を考えている小童!逃げるのか!!!!」
「そんな強大な魔力の持ち主と戦えるかって!!!!」
「勝負を放棄しおって!!!!貴様には我が魔力で極限の恐怖を叩き込んでくれるわ!!」
須藤は走りながらニヤリと笑った。
俺は洞窟の中を走り回り、そこら中に形成されている大型の鍾乳石に身を隠しながら奴の出方を見る。
奴が俺を探す間に俺は物陰に隠れて奴を監視しつつ、頭の中で奴のステータスを表示する。
「魔力レベル:数値測定不能。周波数:魔界種666999363636か!」
俺はマブクロに手を突っ込んで、中に忍ばせてある“物”すべてに念じて奴の魔力周波数を入力した。
まだ完成できているとは言えないが、一か八かやってみるしかない!
そして、移動するたびにマブクロから“ある物“を取り出し、その場に置いていった。
すると。
奴がいつの間にか俺の正面にいきなり立ちふさがった。
瞬間移動のごとき速さでだ。
「今生の抗いは済んだかね、小童」
「どうやって隠れていたところを見つけた?」
「お前何かを唱えたろ?魔力を探知したのさ」
「小童、年貢の納め時だ、死ね!」
デーモンの拳に魔力が宿り、奴の魔力出力が上がった!
「オレに勝負を挑んだお前に大慈悲としてマックスパワーの魔拳を打ち込んでくれるわ!!!!ありがたく受けとれい!!!!!!!!!!!」
デーモンの魔力値が最大に近づいた。
奴の拳に赤紫色の禍々しい魔力の炎が宿り、今にも俺に向かって突きを放とうとしてくる!!
魔法と拳法を応用した技。
さっきまでガトリングさんがやっていたのにも似ている。
頼む、反応してくれ!!
だが何も起きない。
“反応の感度を間違えたか!?万事休すか!?”
「死ねええええええええいいいいいいいい!!!!!!!!!!!」
俺の心の叫びに呼応するかのように、鍾乳石の影に大量に隠して回った“ある物”が一斉に不気味な飛行音をあげて飛びかかった!
しかし、それは音だけで目に見えない。
「何だ、この妙な音は!?」
拳を止めて疑問を口走った瞬間、デーモンの背中が爆発した!
ドゴォォォォッッッッッッッ!!!!
「ぐはああああああああああっ!?ぐううう、なんだこれは!!?」
ドゴッ!!!
「グハッッッッ!!」
さらにデーモンの頭の近くで突然“空中”が爆発した。
すぐにデーモンは背中や周囲を振り返るが、そこには何もない。
「ぶぺっっ!い、今のは何だ!?」
青い血を床に吐き捨て、悪態をつく。
デーモンは魔力で物理ダメージを軽減しているとはいえ、不意の爆発によるダメージは強烈だったのは明白だった。
デーモンが魔力を強めた瞬間、俺が設置した魔力機雷が次々と奴に空を飛んで襲い掛かった!
しかし、デーモンにはシャドウの衣で覆った俺の謹製魔導機雷は見えない。
「こっ、小童!!貴様何の真似だ!」
「さあな、自分で考えな、アクマさんよ」
「クッ、ヴィジュラ!!!!」
ブラッディデーモンは何かを唱えた。
デーモンの視界が暗視装置の映像のようになり、そこには無数の金属製の缶らしきものが自分に向かって襲い掛かってくる瞬間が見えた。
「こわっぱあああっ、姑息な真似をしくさりおってええええええ!!!!!!」
奴め、何か探知魔法の類を唱えたか!?
だが、大声からはうかがい知れないが、奴の体から発する魔力がかなり減ったのを探知魔法により脳内に奴のステータスを表示することで確認できた。
デーモンはフレイムボールやサンダーファイヤーと言った俺も取得している攻撃魔法のおそらく上位強化版と思しき攻撃魔法を放って次々と俺の魔導機雷を撃ち落としていく。
黒い光が入り混じったそれらは俺のそれより数十倍強烈な攻撃魔法だろう。
ドローンの波状攻撃のように襲い掛かる俺の魔導機雷は易々と奴の攻撃魔法に撃ち落とされていくが、しかし、数が多いのでさすがの奴も手こずっている。
しかも、おそらく探知魔法のたぐいを起動させた状態で攻撃魔法を放つと、明らかに奴の体から発する魔力が弱まっていくのが分かる。
元が強大だけに急降下するわけではないが、それでもあのヴィジュラとかいう魔法を唱えて、かつそれを起動した状態のままだと奴の魔力消費量が倍以上になっているのが脳内ステータスの探知で分かった。
「グッ!なんだこの爆弾は!?なんで俺に引っ付いてきやがる!!」
執拗に奴に磁石のように引き寄せられていく魔導機雷はすべて奴の魔力周波数を入力してあるから、奴が逃げようと奴の体にどこまでも引き寄せられていく。
そして、奴の体に引っ付くか、至近距離まで来たら爆発する。
正確には敵に接触した瞬間か、至近距離まで接近した瞬間に爆発する着発信管仕様と、敵に引っ付いてから数秒後に爆発する遅延信管仕様の両方があるが、今それを選んでいる余裕はないので無差別に仕掛けておいた。
そのため、奴の近くで爆発するのと、奴に引っ付いて爆発するのが観察できた。
ただ、いずれも設置してから標的が近づくとそれに吸い寄せられるようにホーミングする仕様変更を一瞬で魔力によりセッティングできたのは幸いだった。
中には不発でデーモンに撃ち落とされる物。
奴に接触、または体に引っ付いても爆発しない物もちょくちょくある。
やはりまだ未完成なのが多いな。
信頼性をもっと向上しないと。
「くっ、!?くそ!どこへ行った!?どこだ小童!!!」
デカい鍾乳石に隠れながら奴の戦闘力を計測する。
奴の体力と魔法力は半分以下になった。
今なら!!
鍾乳石の影から飛び出し、俺は剣を抜いた!
そのまま奴に突進する!
「唸れアークティスクリンゲ!!!」
青白い刃の切っ先から無数の氷の槍が形成され、まっすぐデーモンへと向かって行く。
「こざかしいわ、ヘルファイアボール!!」
放たれた無数の氷の槍が黒い炎の直撃で無残に消滅していく中、俺はすかさずマブクロからある物を取り出す。
同時に魔導兵器がすべてなくなった瞬間を見計らって突撃する!
「クッ、オレに白兵戦を挑むとは姑息!!」
「ご自慢の魔力もだいぶつき欠けじゃないのかよ赤アクマ!」
「こざかし真似をしよって、ほざくな!!!!!!!!!!!」
デーモンが右手に魔力を集中し、黒い炎を帯びた魔法剣を手刀の延長線上に作り出した。
「死ねええええ!!!!」
俺は刃がコンタクトする直前、本来光属性の攻撃魔法を利用して作った照明弾を奴の顔面目掛けて放り投げた。
マブクロの中で安全ピンを抜いてレバーを解除してあるからあと2秒!
カッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!
「!!!!!!????うぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
俺は瞬間的に自作のゴーグルをつけていたおかげで光を見てもひるまなかった。
そのまま俺はデーモンを袈裟斬りに切り裂いた。
ぶしゅしゅううううううううう!!!!!
「がっっっ!!!!!!!!!!!」
派手に洞窟内へ奴の青い血が噴き出した。
奴は目を抑えちゃままうつ伏せに派手に倒れこんだ。
地面に青い血が広がり、目の前の人型が人間ではないことを改めて俺に直視させた。
しかも、デーモンは予想以上に苦しんでいる。
光属性の攻撃魔法を洞窟での明かりとか敵の目をくらませるスタングレネードとして使うために試作したが、地獄のデーモン族にはかなり効いたようだ。
パチンッ!!!!!!!!!!!
洞窟内へ派手な指パッチンの音が響いた。
「お見事、それまで!」
洞窟の端っこで戦いを見物していた魔女がいつの間にか俺のすぐ後ろに来ていた。
「こいつはもう戦闘不能、丁度いい塩梅じゃ」
「さて、それではこいつを媒体にしておぬしに“回天冥獄陣”を授けよう」
「簡単にできるのか?」
「ウム、強い魔力を持った奴の死にかけの魔力と霊魂が一番いい」
「ぐ・・・・・・クソ・・・魔女おおおおおお!!!!!!!!」
「おとなしくせい敗北者。魔法の発展に犠牲はつきものなのじゃ」
「おどれえええええええ!!!!!!!」
デーモンの体が魔女の魔法によって宙に浮きあがり、魔女は何かを唱える。
「冥界の主である至高の冥龍よ。負の魔縁に満ちし者の魂を喰らいわれが望し希望を叶えたまえ!」
「うごぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
全身が青白い光に包まれたデーモンは断末魔の叫びとともに消滅した。
そして、光は収縮して光の弾となり、俺の体に入っていった。
「ふう、これで完了じゃ」
「おめでとう!これでおぬしもわれの“回天冥獄陣”を習得したぞ!」
「使い方はまた帰ってから詳しく話す。今日は帰るぞ」
「俺、強くなったのか?まるで実感がない・・・」
「そのうち分かる。今日は速く夕飯にするぞ♬」
俺は地面に落ちていたホルスターに気が付いた。
そこからデーモンが持っていた2丁のブラウニングM1935ハイパワーピストルと、その予備弾倉計10本、9mmパラベラム弾約300発を回収して先に出口へ向かって歩いていったガトリングさんの後を追った。
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