月間MVPと猿の転職
こぶとり次長が月間MVPを発表していた。
「今月の新規契約MVPは、金太郎飴です」
これを聞くと、金太郎主任とその部下の熊田がガッツポーズをした。今月のMVPも金太郎飴。3カ月連続だ。金太郎飴は、吉備団子と異なり、製造外注しているため市場の嗜好に合わせた新商品を次々と出し、好調だった。
金太郎主任と桃太郎係長は、表面上は穏やかだが、老齢の浦島課長の後のポジションを巡って出世争いをしている関係だ。
吉備団子はうまくいっていない。何とかテコ入れしなければと桃太郎は思った。よし、上期の設備予算を全て吉備団子工場の改善に費やすこととしよう。なけなしの予算だが致し方ない。
桃太郎は工場改善のために猿田を呼んだが、本題に入る前に猿田のほうが切り出した。
「桃太郎さん。エントリーシートの話ってしましたっけ??」
一瞬、桃太郎はドキッとしたが、慌てずに答えた。この俺が猿にエントリーシートの話などしたことはない。
「何の話?」
「すいません。7月からサルカニ商事にお世話になることになりました。残りは有給にしたいと思います」
「そうなんだ。待て。有給の残りが足りないじゃないか。全部は無理だって」
猿の有給はあまり記憶になかったが、帳簿を見ると猿の有給の残りはわずかとなっていた。
「そこを何とかしていただけないですか?」
「無理だって。足りない分は欠勤にしろよ」
「欠勤だと給料減るじゃないですか」
「退職金あるだろ」
「お願いしますよ」
「俺にはどうにもならないって」
猿は辞め。雉はリモートで連絡が取れない。犬は出張精算すらできない。業務負荷は桃太郎一人に集中していた。
桃太郎のスマホに二次面接の案内が入り、何とか苛立ちを抑えこんだ。
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