第2話

第1話再編集しました。

第2話にする話が少し短かったので1話に集約した次第です。

では、第2話始まります。


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少女…風花舞姫かざはなのまいひめは、膝を抱えて座り込んでいた。

膝小僧には、擦り傷ができている。

先程、外で転んだ時に出来た怪我である。

此処は、悠希と会った場所とは違う場所にある。

と言うよりも、近いようで遠い場所である。

異相空間。

同じ場所だけど違う場所。

鏡のように隣り合わせの世界。

ただ、この世界はとても小さい。

1畳…1畳半ほどの広さしかない。

此処は、舞姫の神域である。

信者があまりにも少ない為、とても狭い空間である。

しゃがみ込んだ舞姫は、伸びきった代萩によって姿を見ることができない。

と言っても、この空間には誰もいないのだが。

それでも、外の音は聞こえる。

風の音。草木を揺らす囁き。

鳥の囀り、虫の声。

自然のクラシックである。

舞姫は、長い事この空間に独りぼっちだった。

生を受けてから50年ほどが経つ。

最初は、多くの学生たちが訪れて賑わっていたが数年が経つ頃には忘れられてしまったかのように訪れる者が減ってしまった。

昔はあったお供え物も、今では1週間に1つあればいいほうだろう。

舞姫は、先程のおにぎりでお腹が満たされたのか膝を抱えたまま寝息を漏らしていた。



悠希は、1日目の作業を終わらせて帰ることにした。

荷物をまとめていく。

デイバッグに、草刈り鎌に空になったペットボトルを入れる。

そして、寮へと帰る。


2日目。

GWも2日目になる。

今年は、10連休である。

その為、大学もお休みで残っているのは地元の生徒と寮住まいの一部だけだ。

寮住まいで、居残りをしているのは悠希だけである。

彼は、朝からコンビニでおにぎりと唐揚げ、ペットボトルのお茶を買っては雑木林へと来た。

今日は、デイバッグではなくクーラーボックスを持っている。


「昨日の子…また来るかな?」


悠希は、そう呟いた。

彼は、彼女がまた来るかもしれないと思って大量に買い込んできたのだった。

悠希は、木陰にクーラーボックスを置くと作業を始めた。

昨日の続きから始めていく。

200mトラックが入るほどの広さである。

現在は、ほんのちょっとしか終わってない。

全体の1割を超えるかどうかといったところだろう。


「はぁぁ、めんどくさ」


悪態を吐きながらも、彼は作業をするのだった。

悠希は、去年も実家に帰らなかった。

いや、彼にはもう実家はない。

両親は健在だが、既に離婚していてそれぞれが別の家庭を作っている。

親だけどもう自分の親ではない。

学費は、返却不要の奨学金制度を利用している。

だから、悠希はGWも夏季・冬季休暇に帰省をすることはない。

教授は、彼の状況を知っている。

その為、単位を人(?)質に取ったのである。



微睡の中にいた舞姫は、じょりじょりざくざくと聞こえる音に目を覚ました。


「おなかすいた…」


舞姫は、焦点の定まらない瞳で神域を這い出る。

彼女は、神域を出ると外は一変していた。

舞姫の神域の入り口である社の前の代荻が取り除かれていたのだ。


「お、こんな所に社があったのか。地の神様かな?」


地の神様。

悠希の地元である遠州地方で信仰されている土地や屋敷を守ってくれる神様のことである。

この社は、50年前に大学のキャンパスを作ったときに理事長が建造したものである。

社の中には、お札が祭られている。

悠希は、腰を下ろして社に手を合わせた。

彼は、瞼を閉じ拝む。

そうしていると、ちょうど舞姫が神域から這い出てきたのだった。


「おなかすいた…」

「ん?」


悠希は、瞼を開ける。

目の前には、同じようにしゃがみ込みながら彼の顔を覗く舞姫がいた。


「お、昨日の子じゃん」

「ごはん…」

「ああ、今日もあるよ」


悠希は、社の前のスペースにキャンプ用品のグラウンドシートを広げる。

そこへ、日陰に置いておいたクーラーボックスを持ってくる。


「あ、こんな所で広げて神様怒らないかな」

「だいじょうぶ」


舞姫は、グラウンドシートに腰を下ろす。

悠希は、まあいいかと小さく呟くとクーラーボックスの中身を広げた。

そして、2人で食べていくのだった。

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