温泉旅館
お祭りを堪能したあと私たちが向かったのは、露天風呂付き客室が人気のとある温泉旅館。団体割引&学生割引でかなり安くなりましたが、それでも一泊39800円/人する高級宿です。
「どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。――ちなみに当旅館の壁は厚いので、ゆっくり過ごさず激しい運動をされても大丈夫です。それでは、失礼いたします」
部屋に案内してくれた女将さんが何やら意味深な事を言って去っていきました。
運動しても大丈夫って……。子供じゃあるまいし枕投げなんてしませんよ。(すっとぼけ)
「うわぁー! ちょー高級そうじゃん!」
「高級そうではなく高級なんですよ、アヤメさん。とはいえ、これは想像以上ですわね……」
「わぁ~! 広くて綺麗だね♪ あ、ここが露天風呂だね、広~い!」
「改めて高級宿に泊まるんだなって実感したよ」
アヤメさん、瀬奈さん、桃さん、翠さんが部屋の壮麗さに戦慄しています。どれどれ、私にも露天風呂を見せてください。わぁ、結構広いですね。7人全員が一緒に入っても問題ないくらいの大きさがあります。
「早くお布団敷かなきゃだねぇ……」
「文香ちゃん、おねむ?」
「うん。それに、夜はみんなでパジャマパーティーだよね。だから今の間に寝ておきた……い……。ふあぁぁ」
文香さんはお疲れのようで、早く寝転がりたいそうです。お夕飯の時間まであと一時間しかないのですが、文香さんの分の布団だけ先に敷いておきます?
「ありがと、じゃあお休み。Zzzzzz」
「ふふっ、文香ちゃんの寝顔、可愛いなあー。翠もそう思うよね?」
「おう、それには同意だけど、昼もハンモック公園で寝てたのになんでまだ寝られるのか疑問でしかないな」
◆
海が近くにあるという事もあって、お夕飯は海鮮がメインでした。沢山のお刺身が乗った海鮮丼、鰻のかば焼き、牡蠣の蒸し焼き、あさりの味噌汁。どれも絶品でした。
「ふぅ、お腹いっぱいですね」
食事処から部屋に戻る最中、わたしはおなかを
「だね。でも、どれも美味しかったからペロッと食べれたよ。ね、文香ちゃん?」
「ん、お腹いっぱい。元気が出てきた気がする」
文香さんはそう言って、ふんすっ胸の前で握りこぶしを作ってみせました。美味しいものを食べたらなんだか元気になりますよね、分かります。
「鰻に牡蠣に、精が付く食べ物が多かったからな!」
「翠さん?! なんて事を言うのですか、こんな往来で?!」
「瀬奈っちー? みどりんは別に変なこと言ってないよ。なーにを想像してるのかなー?」
「な?! ふ、二人とも、嵌めましたわね!」
牡蠣は「海のミルク」と呼ばれるくらい色々な栄養素が含まれていて、食べると元気になると言われているんです。という健全な会話を、瀬奈さんが見事に変な意味に解釈しました。
「いやいや、瀬奈さんが勝手に嵌ったのでは?」
思わず私はツッコミます。流石はむっつり系委員長キャラの瀬奈さんですね!
「久美さん?! 聞いていたんですか?! ち、違うんです、そんなつもりじゃないんです!」
「しぃ~! もう、大声を出したら迷惑だよ~」
「! でも、ほんとに違うんですぅ……」
なんて話しているうちに部屋に戻ってきました。この後は待ちに待ったお風呂の時間ですね!
◆
「文香ちゃん、洗ってあげるね」
「ありがと、美香」
はぁ、もう最高です。「お風呂で洗いっこシーン」を直に見れるなんて。尊すぎます、尊いの奔流ですぅ~! そう思いながら二人を見ていると、近くにいた翠さんが私の肩をちょんちょんと叩きました。
「久美さんも洗いっこに興味がある感じか? もし嫌じゃないなら私と洗いっこしてくれないか?」
「翠さん?! えーっと、いいんですか?」
「もちろん。というかさ、二人の邪魔は出来ないだろ? だからちょっと寂しかったんだ!」
そんな風に言われたら、頷かざるを得ませんね。「そういう事なら、是非お願いします」と私が言うと、翠さんは「やった!」と言って私の後ろにやってきて背中をこすり始めました。
「にしても意外だな。久美さん、人前で肌を晒すの苦手って感じだったし、てっきり別で入るのかと思ってたぞ」
「あはは、それとこれとは別ですよ。お風呂だと裸でも恥ずかしくないです」
「そういうもんか?」
翠さんに背中と頭を洗ってもらってから交代。今度は私が翠さんの体を洗います。
「ああー、人に洗ってもらうのって特別感があって気持ちいいな」
「分かります。マッサージみたいで心地いいですよね」
「欲を言えば、手で洗うんじゃなくて体で……」
「そう言うのはパートナーが出来てから頼んでください」
「ちぇー」
もう、翠さんってばなんてこと言うんですか。Banされたらどうするんですか。あれ、でも女の子同士だから、何も問題ないんですかね?(混乱中)
それにしても、パートナーですかぁ……。パートナーが出来たら毎日こうやって一緒に洗いっこするんですかね。いいなあ。いや、変な意味じゃないんですよ。ほんと、ほんとです。
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