水着を選びます
「ふう、到着ですね」
「おおー、いい感じじゃんー!」
「わぁ~。お洒落な家だね~♪」
最寄りの駅から徒歩15分、ペンションに着きました。まるで絵本に出てくる家ような見た目がなんとも可愛らしく、アヤメさんと桃さんは写真を撮り始めました。
「それじゃあ、荷物だけ置いてショッピングモールに行くって事で良い?」
「ふぁぁ……。その前にちょっと休んでからにしない?」
「まだまだ時間はあるし、ちょっと休憩してもいいかもな。どうする?」
美香さんがペンションを出ようとしますが、文香さんが待ったをかけました。確かにちょっと休憩が必要かもしれませんね。
「そうですね、では荷物の整理がてら少し休みましょうか。その際、もし忘れものなどに気が付いたら、適宜買い物リストに書き加えてください」
「「「はーい」」」
スーツケースを開けてみて初めて「あ、○○忘れてるー?!」って気付く事、ありますからね。今も翠さんが「やっべ、替えのパンツ忘れた……」って叫んでますね。あ、アヤメさんが歯ブラシを忘れてきたようです。
スマホの充電器、シャンプー、日焼け止めみたいな共有できる物ならともかく、下着や歯ブラシは共有できないですからね。後で買いに行きましょうね。
◆
こうして買い物リストに様々な物が書き加えられましたが、そういった細々した物を買いに行く前にすべきことがあります。そうです、水着の購入です! 水着の!購入!です!!
「アヤメさん、私ってどんなのが似合いますかね?」
「おーけ、私が瀬奈っちに合う水着を見繕うね!」
「文香ちゃん、一緒に選ぼ?」
「うん」
「桃は合うサイズがあるか心配だな」
「そうだね~。翠さんは……」
「そこで黙られると空しいんだが?! ああ、そうだよ! 私はぺったんだから、サイズは心配無いよ」
魔法少女たちがお互いの水着を選んでいますぅ~! なんて尊い光景なんでしょう。ふへへへー、じゅるり。
「お、これなんて瀬奈っちに似合いそうじゃんー! どうかな、可愛くない?」
「ぬな?! ちょっと、それは破廉恥ですわ?!」
「破廉恥な水着なんて売ってるのか?! ってなんだ、普通のビキニじゃないか。残念」
「ちょっとみどりんー。ここはショッピングモールだよ、そういうのは売ってるわけないじゃんー」
アヤメさんが瀬奈さんに見せたのは黒色の三角ビキニでした。瀬奈さんは破廉恥と言っていますが、別に普通のビキニです。断じて翠さんが期待していたであろう『破廉恥な水着』ではありません。
「ふ、普通……。た、確かにそうかもしれませんが……恥ずかしいですよ」
「えー、恥ずかしくないって! ね、久美ちゃん?」
「お、久美さんじゃん! どう思う、これ?」
ひょへ?! まさか声をかけられるとは思ってなかったので、思わず変な声が漏れちゃいました。
そうですね、その水着を着た瀬奈さんを想像してみます。
「いいです、とってもいいと思います! どうしても嫌って言うんじゃないなら、ぜひ着てみて欲しいです!」
「嫌ではないですが、その、似合いますかね? 私に」
「絶対似合いますよ! 少なくとも私は、それを着た瀬奈さんを見てみたいって思います!」
「久美さんがそう言うなら……。分かりました、これを買います!」
こうして瀬奈さんはビキニを買う決断をしてくれました。やりました!
明日はビキニを着た瀬奈さんを見れるんですね、もう明日が待ちきれません!
「そういえば翠さん、桃さんの水着ってどうなりました?」
「大きさが合うのを厳選した、今は向こうで試着中のはずだ」
「あははー。確かに桃の大きさだとこの辺の水着は着れないよねー」
「見てきましょうか。桃さん、どうですか?」
瀬奈さんと私は試着室へと近づきます。すると桃さんが顔だけ外に出して手招きし「二人とも~、ちょっと来て~」と言いました。どうかしたのでしょうか、入ってみましょう――ひょ?!。
「ふふ、どうかな?」
「す、すごく似合ってます……」
「お、大人っぽくてステキですわ……」
桃さんの大きな物をしっかり支えられるよう、ホルタービキニを着ていました。腰にパレオを巻いているのもグッドです。
とっても似合ってはいます。ただ、こんなにも狭い場所でそれを見せられるのは刺激が強すぎて……。
「ふふ~。先生も瀬奈ちゃんも初心な反応で可愛い~。感想ありがと、それじゃあこれを買おうかな」
ふう、未だに心臓がバクバクしていますぅ。思わず近くのベンチで腰かけていると、アヤメさんがニコニコしながらこっちに向かってきました。
「じゃ、次は久美ちゃんの分を選ばないとね!」
「だな! 久美さんにもとびっきり可愛いものを選ぶぞー!」
「え? ああ、私はシンプルなこれにしておこうかと……」
輝くべきは魔法少女ですからね、私は地味な水着を着て、ちょっと離れたところで見てようと思ってます。
そこで私が選んだのはハイネックワンピース水着。売り文句は「子供連れの親でも品よく着れます」とのこと。完璧ですね。
――っていうのはただの言い訳で、実は「派手な水着を着たくない」って言うのが本音です。人前で肌を曝すの、苦手なんですぅ……。
「えー、全然可愛くなーい!」
「華の高校生がそれはダメだと思うぞ」
「いえ、私は地味なのが好きなので……」
そう私は抵抗しますが、そこへ瀬奈さんがやってきて言いました。
「私にはこういうのを勧めておいて、自分は逃げるっていうのはズルいと思います」
「瀬奈っち、めっちゃ良い事を言った!」
「そうだぞー! みんな久美さんの可愛い水着姿を見たいんだからな!」
うぐ、それを言われると反論できません……。
そんな風に私たちが騒いでいると、美香さん、文香さん、桃さんも集まってきて「え、久美さんの水着を選ぶの? いいじゃん!」「可愛いの、選ぼうね……」「いいね~。先生に合うのを選ぶよ~♪」と迫ってきました。
こうして退路を断たれてしまった私は、みんなの着せ替え人形になってしまうのでした。
なんやかんやあって、私もビキニタイプの水着を買う事になりました。うぅ、こんなはずではなかったのにぃ。
……なんて悲観的になってはいけませんね。良いように考えましょう、こういう水着を買った以上、私も皆さんの傍にいて良いって事ですよね? それ
皆さん凄く可愛らしい水着を買っていました、あれを着た皆さんが仲良く遊んでいる姿を想像するだけで……はああぁぁぁ~最っ高ー! 教室で繰り広げられる健やかで瑞々しい百合も美しいですが、夏の海で繰り広げられる煽情的で情熱的な百合もたまらないですよね。
それを近くで堪能してOKなんて、素晴らしいじゃないですか。
よし。そう考えると、肌を晒す事なんて怖くないです!!
こうなったら、一緒に混ざって楽しんでやります! 百合を内側から堪能してやりますよ!!
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