1.2
教室に一歩入ったと同時に、全ての目線がこちらに向く。
恐らく賑わっていた教室は、一瞬の間、静まり返っていただろう光景を目の当たりにする。予定通りの状況だ。
とはいえ、爆音で音楽を聞いている俺にはわからないから、気にしなくていい。無駄なエネルギーを使わないに越したことはない。
そう、俺は無駄なエネルギーを使いたくなくて、音楽科から普通科に変更した。
去年は、気が向いた時にストリートピアノを弾いてて、通学路から外れた駅に、遠回りして寄りたくなるくらいお気に入りのピアノがあったんだよな。
いつもなら、どこかのアーティストやらクラシックやらを2~3曲、適当に弾いてたんだけど、なんだかその日は違ってさ。
少し気が緩んだ、というか後から思えば、俺が無警戒過ぎたんだ。
たったの1回、弾いただけなんだ。
でも、その1回が命取りでさ。
気が付いた時には、自分だけのメロディーはどこぞのアーティストに奪われ、大ヒットしてた。
は? こんなんで成り立つのかよ?
なーんかさ、どうでもよくなっちゃったよね。
一生懸命やってたのは、何だったんだろってなるよなぁ?
途中省略するけど、そんなんで普通科に変更した。
「ったく、世の中めんどくせえなぁ……」
席に着いた俺は、空中をぼーっと見ながらため息交じりにつぶやいた。
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