第42話 Give me up!(1987年) BaBe (日本語カバー原曲1986年Michael Fortunati)

 これはDeja-vu(デジャヴ)?


 俺(橘恭平)は前に、夢で見たような景色?


 この光景を、なぜか覚えている。


 高校の中庭で、取り囲むように、校舎の窓から大勢の生徒や先生、観衆が見ている中で、夏美に「愛してる」と告白したことを


 デジャヴは、心理学だろうか、さっきみた景色が脳に送られ、それを遠い記憶と勘違いするとのだと


 でも、これは、なぜか、ホントに遠い記憶だと感じる。数十年前?そんなに生きてないだろ?俺は高校生だ。


 ◇◇◇


 わたし(星夏美)は、ここで恭平から告白されたことを、刻銘に覚えている。


 かれが言う言葉も、ハッキリと記憶にある。



「どうしました、星さん?」司会が尋ねた。


「いえ……」


「ははぁ、まあ、いいでしょう」


 スタスタスタ……司会が恭平のところへ歩いていく。


「橘さん、告白をどうぞ!」


「星さん、キミのことが好きでした!」

司会がズッコけた。


 えええええええええ!!!!!!!

 がはははははは……・・

 観客の嘲笑を誘う。


「バカじゃねー?」という声も。

「おい、緊張してるな、橘のヤツ……」


司会、

「橘さん、これから告白するんですよ!しっかりしてください」


「はいっ!」


「こら、恭平……いや、橘クン、アンタ、なんで過去形なのよ!

 寝ぼけたこと言ってないで、ハッキリ言いなさい!」


「ゴメン……星さん、キミのことが好きです!」


 おおおおおおおお…………

 笑いも起こった、わははははは……


 恭平は照れたような顔をして、顔を赤らめた。


「星……いや、夏美! キミのことを、これからも、ずっと、ずっと愛してる!

 だから、俺と付き合ってくれ!」


 おおおおおお!!!!!!

 観客が響めいた。

 「なんだ、あのセリフは!」「プロポーズかよ!ははは」


 司会のアナウンス、

「橘クン、思いっきり言いましたね。それはプロポーズですか? ホントに緊張しているのか、大胆ですねぇ 相手を名前で呼ぶとは、前からお知り合いですか?」


「まぁ……その、えっと……」


「続けてください!」


「ハイッツ! 夏美! 俺の手を取ってくれ、お願いします!」


 彼は頭を下げて、右手を差し出した。


 ああ、良かった。彼は私にハッキリ告白してくれた。


「どうしましたか、星さん? かなり大胆に来ましたが」


「では……」


 スッ、とわたしは前に出て、恭平の手を取る。


「ありがとう。私も同じ。あなたのことが好き」



 おおおおおおおお!!!!!!

 会場が盛り上がると同時に、激しいブーイングが鳴り響く。

「あんちくしょーめ!」

「橘のヤロウ!」そういう声やら罵声が、会場に響き渡った。


 恭平はふと顔を上げた。

 そして隣の柔道部の山崎クンの顔を見た。

 山崎クンは笑っている。


「橘、お前、覚えていろ。冬のラグビーの授業になったら、強烈なタックルをお見舞いしてやるからな!……このヘナチョコ・フォワードが!  はははは」

 

 山崎クンもスッキリした感じのように感じた。


 恭平のクラスの担任だろうか。数学か理科の教員らが、中庭に降りてきて、笑いながらこの様子をみていた。


 司会が時計を見て言う。

「こいつらがノロケやがって、グダグダの進行になったじゃないか! 予定時間を5分もオーバーしています!次のチアリーディング部のみなさんが、パフォーマンスの時間が押していて、イライラして待機してますので、これにて終了します」



 もう1人の司会が叫んだ


「それでは、また来年の和同祭わどうさいで会いましょう、みなさん、さようなら! それではチアリーディング部のみなさん!お願いします!」



 待機していたロックバンド部のギタリストが、エレキギターをかきならした。

 

 これはケニー・ロギンスの「Footloose」だ。


 なぜか、これもデジャブに感じた。


 この「ねるとん紅鮭団リターンズ」を見ていた観客もエレキギータに併せて手拍子を始めた。懐かしい景色?

 

 今は1989年……この映画は……わずか数年前のはずだ?

 

 周りのみんなもダンスを始めた。すごく懐かしいステップで


 あの智子に撃沈されたはずの、罍クンと智子も、

 そしてカップルが成立した、椛澤さんと諸橋君、

 五十嵐クンと真水さん、

 みんなが手を取って、踊っている。

 

 私と恭平のところに山際京子さんが、来た。

 そして私に言った。


 「わたし、橘クンのラグビー愛好会のマネージャーの2年。山際京子。よろしく」

 「はぁよろしく……」

 

 強気な子だ。大物になるぞ。


 「わたしも橘クンのことが好きなんだから!この先輩の鈍感!」

 

 へ?


 「橘先輩、私と一緒に踊りましょ!」

 山際さんがそう言って、強引に恭平の手を握った。


 恭平は優しいからねぇ……

 彼女の手をとって、京子ちゃんと一緒にダンスを始めた。


 そして、罍クンと智子がやってきた。


 「ねえ、3年5組の教室がディスコになっているから、そっちに行って、みんなで踊りましょうよ!」


 わたしと恭平、そして京子ちゃん、カップルが成立したみんなも、このチアリーディング部のダンスパフォーマンスのステージから抜け出して、文化祭の出物のディスコルームへ向かって行った。

 








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