第30話 高原教室
「名前、教えて」
「俺の…名前、教えるの?」
「俺の名前は
いといとか…。変すぎるでしょ!おかしいってば。
「君の名前は?」
「……」
喜多さんはスケッチブックにマーカーで文字を書き込んだ。書き終わった後で萊斗さん(ここからは城田さん改め萊斗さん)や私達にスケッチブックを見せた。
『
とってもすてきな名前だ。
「喜多さん。これからはさゆちゃんって呼んでいい?」
うなずく喜多さん。どうやら認められたみたいだ。
「城田さーん!皆も一緒に外で遊ぼうよ」
「ほら城田さん。立ってよ。またここから変わっていけばいいんだよ。未来は変えられる。優太君や香…七年C組の皆が外で待ってる。あ、ごめん。城田さんじゃなくて萊斗さんだったね」
誉が萊斗さんの目の前に手を差し出した。萊斗さんは一瞬ためらった。が、誉の手をがしっと握る。誉に片手で大人一人を支える力は無かったのか、萊斗さんは自力で立ち上がった。
「ありがとう。皆」
萊斗さんはとても嬉しそうだった。私も嬉しくなった。
「ここから、新しい道を歩いて行くよ」
そう言って萊斗さんはスイートピー②から出て、優太君や香が待つ外へ走りながら去った。
茉奈が私にこそっとつぶやいた。誉も勝手に加わった。
「これでへファイトス事件は解決かな」
「だね。情報量が多くて上手く整理できないよ」
「それは勉強もじゃないのか?
「そんなこと無いし!」
「お…落ち着こう。私達も外に行こうよ。ほら
「え?俺も遊ぶの?」
「もちろん。七年C組皆で遊ぼうよ。あ、喜多さんも」
わちゃわちゃしながら三階から出て行く私達を
私はブランコに乗りながら砂場で遊んでいる誉に聞いた。
「どうして城田さんはスイートピー②に来たのかな?」
って。誉はあっさり知らんとぼやいた。
「城田さん本人に聞けば?」
…そうだね。城田さんは誉と優太君と砂場にいた。
「どうしてですか?城田さん」
「あの五人組の居場所をどうにかしてつきとめて、こっそりついて行ったから。駅前で物燃やすぐらいだから、大火事起こしてもおかしくは…ないじゃん。で、あのコテージに着いたら、君達を見つけた追いかけるの大変だったよ」
「追いかけっこ…みたいですね」
私がそう言うと、誉や城田さんはけらけらと笑った。
スイートピー②での変てこ騒動から数日が過ぎた。いつも通り家には私一人。やっぱり一人でいるのはさみしいからスイートピーに毎日通っている。
今日は誉と香と賢悟君が来ている。茉奈と優太君はお出掛け中。私は三人に今日言いたいことが…あって…。
「私、決めた。将来は困ってる人を助ける仕事をやりたいの。具体的にはよく分からないけれど、苦しんだり悲しい思いをしてる人達を助けたい。障害の有無も、国籍も関係無く」
私が言い終わると、三人は一瞬驚いた。一瞬だけだった。
誉が楽しそうに笑った。
「いいじゃん。その夢。…目標かな。いや、夢か。俺にも手伝わせてくれよ。俺は車椅子に乗ってて…助けられるだけじゃ嫌なんだ。助けることもしたい」
「私もやる!とっても楽しそう」
「俺も…望未さんの夢…叶えるの手伝いたい。悪い大人ばかりじゃないって教えてもらったから。その恩返しというか…」
「ありがとう」
皆といることが何よりも楽しい。私は誉や香達といたいんだってようやく気がついた。
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