第18話 分断
昼休み。
「へファイトスって案外すごいんだよ」
いきなりそう言われても…どういうことなのか分からない。
私達四人は全員困り顔で顔を見合わせた。
「だって、普通の大人って…色々な問題とかを言ってるだけで、実行しようとはしないじゃん。理屈言えばいいと思ってるんだよ。それに対して、へファイトスは差別だけど、行動してる。どういう人かは分からないけれど、そこら辺にいる大人じゃないよ」
「へファイトス…。言われてみれば、そうだね。優太」
「優太君さすが!」
私は優太君の前に立った。で、優太君の目を見て言った。
「優太君はへファイトスのこと…どう思ってるの?」
優太君はにこにこしている。右手でピースをした。
「分かんないや」
…。堂々と言われても…。どうしようって所です。
「本当にいい人か、悪い人かl
「善悪の判断って難しいと思う。俺は…。そもそもいいか悪いかって何で判断するのか分からない」
「僕も、へファイトス探すの手伝うよ」
優太君は強く決心していた。
五時間目。高原教室の話だ。賢悟君は緊張しているように見える。
きっと誉と一緒に行けるのか早く知りたいのだろう。
でも、
だって自分でS組にプリント渡しに行かないぐらいだし。
「という訳で、男女二人、三人のグループか、三、三に分かれてもらうぞ。グループのメンバーは自由に選んでいいからな」
うわあ。すっごくうるさくなって来た。私は…茉奈と香がいれば、どこでもいいや。
賢悟君は一人でいた。えっと…集団でいるのが苦手なのかもしれない。
賢悟君、部活でもトラブルあったしね。
「木代先生。えっと…その…S組って高原教室で一緒に行動しますか?グループS組の人と作れたりしますか?」
賢悟君は本当に誉と行きたいのか。私もできれば行きたい。
「それは無いよ。S組の人とは別にして。障がい者は障がい者同士でいる方がいい。何かあった時に学校側が責任取れないし。だから…グループはこのクラスの人だけで作ってね」
…。本当に木代先生はS組のことをあまり考えていなかった。
賢悟君は止まった。木代先生のそばからバッと駆け出して離れてしまった。
どうしよう。健吾君をどうやって励まそうか…。
賢悟君はすっかり絶望している。目は真っ黒になって、足どりがよろよろと力が無い。椅子に座るのもやっとだ。香と茉奈が私ぼ机の周りにやって来た。三人で顔を見合わせる。
香が賢悟君の正面に立った。堂々としすぎている。
「賢悟君。私、いいこと考えたよ。私は高原教室に行くのはやめる。それで、私達と、誉君と、優太君の六人で私達だけの高原教室をやろう」
え?私達四人は高原教室に行くのをやめるの?
「
「私も賛成。優太も楽しんでくれそうだし。やりたいな」
「いいと思うよ。私達だけの高原教室」
健吾君が後ろめたい気持ちばかりのまま、高原教室に行かなくてもいいと思うし、S組のことを考えていない木代先生のことぐらい少しは放っておいてもいいと思う。
結局グループ決めはもめごとが多くて決まらなかった。
私達にとってはその方が良かったけどね。賢悟君が恨めしそうにぼやいている。誰かを呪っているのかな?
「木代先生がへファイトスだ…。きっとそうだ…。だから、あんなにS組のことを無関心でいられるんだよ…」
表情が完全に呪いの儀式をやっている人だよ、賢悟君。
茉奈がフォローする。
「それは無いと思う。無関心ってことは…差別発言をするまでもないんじゃない?後、木代先生の車は黒い軽自動車だけだよ。一人暮らしで、残業ばっかりやってるらしいし…」
「それじゃあ実家の車を借りて来たってことは有り得るじゃん」
賢悟君がやたら粘っている。変な確信があるみたい。
「無いよ。だって…木代先生の実家は鹿児島県の離島だよ。そこから、本州まで車持って来られると思う?」
「不可能か…」
海外に輸出するために車を船に乗せるのはあるけど、実家の車を借りるために船に乗せるってことは無さそう。
賢悟君はようやく納得した。ふう。香がぼやく。
「へファイトスのことも気になるけど、今一番気になるのは…高原教室のことだね。S組とは別行動って」
「そうだよな。よし!」
賢悟君、元気になるのは早いなあ。
「ということで、寝よう」
「香ちゃん。意味分からないよ」
その後の六時間目の授業で香はぐっすり寝ていた。
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