第16話 調査開始②

「ああ。へファイトスからの手紙ね。ここにも来たよ」

「いつぐらいに来た…とか分かりますか?」

ここは障害がある人達が暮らす施設。ほまれと私は事情を説明したら、施設の人が話を聞いてくれることになったのだ。

「さあ。あ…入居してる人が言ってたんだけど、へファイトスの脅迫状が来た夜、かすかに車の音が近くでしたって。たぶんここの前を通りすぎたかもって言ってたよ」

「その音を聞いたのは一人だけですか?」

「いや。他にも職員とか、近所の人も聞いたって…」

「じゃあへファイトスは未成年じゃなさそーだな」

「自動車の運転免許を持っている大人ってこと?」

「そうっぽい」

数分話を聞いた後、私達は入居施設を出て、次の目的地に向かうことにした。今日は六ヶ所。思ったより多い。

「誉は犯人…いやへファイトス、どういう人だと思っているの?」

私は移動中、誉思い切って聞いてみた。誉は真剣に言う。

「俺ん家のカフェ…スイートピーはあまり知ってる人がいないんだ。だから、スイートピーに脅迫状を送ったってことは、俺の知ってる人である確率が高いと思う」

う…うん。スイートピーにはよく行くけど、いつも一、二組しかいないもんね。穴場カフェってことでいいのかな?

「しっかり探せば必ず見つかると思う」

「でも…。スイートピーに行くようなお客さんって、障がい者とかを理解してくれている人じゃないの?そういう人が差別発言をするなんてさ、裏切るようなことだよね」

「ああ。人間ってそういうモンじゃねえか?」

「…」

誉は悔しそうだった。私は言い返すことができない。

「だからいいんだよ。俺は裏切られようが裏切られまいが別にいい。一つの物事に対して、幾つも考えを持っていいんだよ」

「誉…。ありがとう」

「礼言ってんじゃねえよ。望未のぞみが俺を変えてくれたんだ」

え?変える?むしろ誉の方が私を変えてくれたんだよ。

という訳で、本日最後の調査だ。さすがに何時間も動くときつい。

誉も私もゼエハアしている。(誉は風に当たりすぎたようだ)

ここは子ども食堂。私が入るのは初めてだ。

「はい。へファイトスの手紙がうちにも来てました。怖いですよね、あれ。しかも内容が脅しで」

子ども食堂でボランティアをしている学生さんが、テーブルを拭きながら、話をしている。どちらかを後にしてもいいですよ。

「ここって…どういう人が来るんですか?」

「子供以外だと食べ物を寄付してくれる人とか。特に、野菜や果物はそういう物ばかりだよ」

「手紙が届いた後、この辺で車の音がしませんでしたか?」

私も少し勇気を出して聞いてみた。

「えっと…。夜は…いつも仕事が終わって帰るから、ここにはいなくてね。そういえば近所の人に次の日、前日の夜にどこからか叫び声がしたって聞いたよ。車の音はその後に聞いたとか」

「え?叫び声ですか?誰の?」

「分からない。でも…若い人の声っぽかったって言ってた」

??また謎が増えちゃったよ。少し分かったこともあるけど。


「なるほど。へファイトスは、自動車の運転免許を持った大人ってことか。中高生は除外だね」

閉店後のスイートピーで、私と、誉と、茉奈まなと、かおりと…。賢悟けんご君、三好みよしさんの六人で今日の調査の共有中です。

「私が行った施設の人達は皆へファイトスの手紙が届いた昨日の夜、車の音がしたって言ってたよ」

茉奈や賢悟君もそう聞いたなら、へファイトス=自動車の運転免許を持ってる人説は有力だね。

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