第15話 調査開始①

「えっと…。誰かを殴ったり、暴言を言って傷つけたりすることっていいことだと思う?」

「さあな。でも、そんなことしたって意味がないのは確かだ」

「私もそう思う」

「そうか」

ガランとベルが鳴って三好みよしさんが入って来た。

「まだ二人とも残ってたんだね」

はい。三好さんは今日何してたんですか?」

「勉強してた。看護の」

「看護?」

「僕、看護学校に通っているんだ。看護師になりたいから」

「すごい!もう来年には病院で働くんですか?」

「まだだよ。学校に入ったばかりだし」

「所でさ、へファイトスのことなんだけどさ」

「え?へファイトスのこと知ってたんですか?」

「まあね。調べたんだ。あいつは…被害者だ」

「被害者ってどういうことっスか?」

「たぶんあそこまでの差別発言は暇つぶしじゃできない。これまでに…障がい者と関わっていたり、差別されたことがあったんだと思う」

「…」

そんな…。へファイトスが加害者じゃなきて被害者?

「とにかく君達には言うよ。おそらく君達は、周りの大人や中高生を疑ってみるしかない。僕も手伝うから」

「…ありがとうございます」

こういうのを疑心暗鬼って言うんだっけ。あれ?ドアが開いた。

奈女田なめたさーん。トマトの箱、カウンターに置いておきますね」

どす黒い空気は城田しろたさんが追っ払ってくれた。

「僕はあまりその事件のこと、分からないけれど…へファ何とかは中高生ではないと思うよ」

三好さんのスマホのへファイトスの投稿をちらっと見た城田さんはのほほんとしている。トマトの箱をカウンターにドンと音を立てて置いた。

「ここまで長い文章、中高生じゃ書かないでしょ」

ですね。十六行とか長い気がする。そこまで長いの、SNSに投稿する暇も無いもんね。最近の中高生は。

「じゃあねー」

「城田さんばいばーい」

「バイナラ〜」

私が家に帰る時にも、誉はバイナラ〜と言っていた。


次の日。ではなく二日後。(次の日は別に調査が進まなかったんだよ。香がカヌーの大会に出てたから、皆で応援しに行ってた)

休日で私達は部活に入っていないため、心置きなく調査ができる。

香と三好さん(バイト休み)が、スイートピーで指令と情報まとめ、誉と私が西の方の調査、賢悟君と茉奈は東の方を調査することになった。皆休日にやることが無かったのだ。いや、違かった。

香はカヌーの練習があったけど、前日の大会で疲れたから、やめていた。両腕が痛いんだって。

「よし。行くぞー!」

「ちょっと待ってよ。誉」

最初は自転車で回ろうと思っていたけど、それだと車椅子の誉を確実に置いて行くこととなりそうだから、徒歩にした。

のに。誉は車椅子でビュービュー行っちゃう。

「速いよ。先に行きすぎだってば」

「それは望未のぞみがすたこら歩かないのが悪い」

え〜。って待ってよ。私、走るの遅いんだからあ。

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