第14話 友達の定義

賢悟けんご君がすっとんきょうな声を出した。そんなに高い声が出るの?

「スマホでびっくりすること、見つけたの?」

「そうじゃなくて…何と言うか…その…」

そう言って賢悟君が見せて来たのは、SNS上にアップされていた動画だった。ガンガン流れる音楽がうるさい。と言うより…本当に調べてたの?

『役に立たない人間は変わった方がいい』

こう書いてあった。いいねが少し押されていた。

「へファイトス…」

「これが奴にとっての障がい者ってことさ。役に立たない人間」

香が驚く。淡々と話すほまれがどこか悲しく見えた。

私はこれまで、障がい者が他の人と同じように仲良くしたり、一緒にいたりすることなんてありえないと思っていた。

でも違かった。それを証明してくれたのは誉と優太ゆうた君だよ。

「違う。障がい者は役に立たない人じゃない」

悲しげに見えていた誉は私の方ををぎょっと見た。茉奈まなも、かおりも、賢悟君もびっくりしながら私の方を見る。私は話を続ける。

「障害のある人だって、頑張っているんだよ。見える所でも、見えない所でも。そんなのも知らないで、先入観や偏見だけで人を判断するのはおかしい」

誉は力強くうなずいた。悲しさはどこかに行っちゃったみたい。

「だよな。ってことは俺らの敵はへファイトスだけじゃない。へファイトスに賛同してる奴らもだな。勝手に決めつけあがって」

「今は調査をやらなきゃね。よし、バイバイ」

賢悟君はへファイトスがアップした動画を閉じて、再びマップのアプリを見始めた。

「誉君って本当に変わってる。車椅子に乗ってるってことじゃなくて、性格がだよ」

「香ちゃん。それ、褒めてるの?私…誉君と会ってから、優太と一緒にいるのが楽しくなった。ありがとう」

「別に…。あいつとは仲良いし」

誉が照れて、そっぽを向いた。茉奈がにこにこ笑う。

「こんにちは」

「いらっしゃいませ。あ、莉湖りこちゃん。久しぶりね」

「ですね。あら、皆で共同作業中?」

興津おきつ先生が私を見て首をかしげた。誉が説明する。

「はい。へファイトスを探してるんですよ」

「頑張ってね」

私は嬉しかった。皆と一緒にいられること。友達になるのに障害は関係ないって分かったこと。

だから障がい者を差別するへファイトスとも、分かり合えるんじゃないかって信じてる。

望未のぞみは、どうしてへファイトスをこらしめることを考えないんだ?香とかそんなことを言ってた気がするけど」

香や茉奈、賢悟君が帰った後のスイートピーの店内で、私は誉にこう言われた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る