第12話 常連客

「おはよう。望未のぞみちゃん…濡れなかった?」

「今日はほまれのお母さんの車に乗せてもらったから、そんなに」

暖房は無かったけど、車の中はぽかぽかして暖かかった。きっと…心理的な影響があったと思うけど。

最近はS組の人達とも、少しだけ話せるようになった。

私は嬉しかった。茉奈まながつぶやく。

「S組はいい所だよね」

「先生もいい人だよね優しくてさ」

「先生…あ!」

「望未ちゃん…急にどうしたの?大声出して」

興津おきつ先生なら力になってくれるかもしれない!」


「で、あなた達はその『へファイトス』を今探してるってこと?事故とかに遭ってない?」

「いいえ。今の所、へファイトスに会ったことはありません。わかってることは…かなり特殊ってことぐらいです」

昼休み。私と茉奈とかおりはS組にいた。誉もいる。興津先生が机の上の弁当を食べながら私達の話を聞いていた。

ちなみに優太ゆうた君は賢悟けんご君といます。

「そういう不審な事件って警察に任せた方が良いんじゃないの?」

…。う。え、誉?何か言ってくれるの?

「ですが、へファ……イトスは、障害のある子供さえも見下しているんですよ。そんなこと、俺は許せません」

「そ、それに、直接手を出さないということは…話したりできるかもしれませんよ。私はきっちり話してみたいんです。もしかしたら…本当は悪い人じゃないかもしれませんし」

ふう。一気に言っちゃったけど…。興津先生…。

「いいよ。土日なら手伝ってあげる。私が顧問の部活は平日だけだしね。それに…私は、スイートピーが好きだから。あのお店は絶対に閉めて欲しくない」

「先生も来たことあるんですか?」

「そうよ」

興津先生がいたずらがバレた子供みたいに笑っている。

「気がつかなかった?私、望未さん達が初めてスイートピーに来た時、カウンターにいたのよ」

「えー!」

「言われてみれば同じ人かも」

「髪型とか服装が違うと、同じ人に見えないもんだね」

「声は、そんなに変えられないだろう」

まあ…誉の言う通りかもしれない。

一部の声優さんとかは、声を聞いただけで、誰がやってるか分かるもんね。

「あなた達はチャットとかで、繋いでいつどこでも話せるでしょう。なのにどうして、毎日スイートピーで話すの?」

興津先生は理解できない、という感じだ。私は話した。

「確かに、ネットでを使っていつでも話をすることはできます。でも、顔も見えず、声も聞こえないってなると…お互いに感情とか…本当に言いたいことが分かりにくいんですよ。だから、私達は直接会って、話をしているんです」

「何も知らないでへファイトスを悪い人だって決めつけたくないんです。私は…理解したい」

「お姉ちゃん?」

「優太…話、聞いてたの?」

「少しだけ」

強そうに言うのって大変だ。ふう。興津先生は笑っている。

「そういうことね。言ってくれてありがとう」

これで味方が一人増えた。



「それじゃあ…興津先生はへファイトスじゃなさそうなのか」

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