第11話 目標や夢

今日の夜は中々寝つけなかった。色々頭の中で考えちゃう。

[へファイトス]からの差別発言。

S組で会った喜多きたさんのこと。

賢悟けんご君とほまれの関係。(友情??)

今日に限って(ではないかも)情報量が多いのはどうしてだろう。

学校の勉強よりももっと複雑で、分からないことが多い。

どうして学校では勉強しか教えてくれないのかな。

私が知りたいことはそれじゃない。もっと難しいことだ。

詳しくは分からないけれど。難しいこと。

バリアフリーって本当にできてるの?私は学校で誉といる時、誉がエレベーターが無いから2階以上に登れないって言ってたのを…覚えている。

悔しいような悲しいような目をしてた。

私どうしたらいいんだろう。分からなくなってきた。

ザーザーと音が聞こえた。…ああ。雨か。

窓ガラスに線を書き続ける雨を見て、私は思い直した。

今一番やることは、へファイトス探し出すことって。その後は分からない。けれど、後になったら分かるかもしれない。


望未のぞみ。おはよう」

「おはよう。…ってえ⁉︎おおお母さんどうしてここに?」

「どうしてって、久しぶりに夜勤がお休みなったからよ」

こうしてお母さんと話すのはだいたい二ヶ月ぶりだ。

久しぶりすぎて話す話題もないや。…。やっぱりない。

「中学校はどう?」

「…普通」

「望未はいつも周りのことばっかり考えて、自分のことを考えないんだから。自分のことも考えなさいよ」

そうだよ。私はずっと小さい頃からそうだった。

いつも周りの人が幸せなら、自分も幸せって思ってきた。

「私のやりたいこと…か」

何だろう。新しい洋服が欲しい?旅行に行きたい?おいしいものを食べる?SNSで人気になる?

「今急に探さなくてもいいのよ。ま、夢は持っておいた方がいいけどね。じゃあ、仕事に行ってくる」

「行ってらっしゃい…」

私にはやりたいことも夢も無い。

夢は何ですかって聞かれても、今じゃ考え中です、と答えるしか無いのだ。とっても悔しい。

目標や夢が無いと子供は頑張れないって話を聞いたから。

お母さんは私のことを本当に大事に思ってるのかな?家族一同でリビングにいた時なんか…あったっけ?


「うわぁ」

学校に行こうとしたら、外は雨が降っていた。そういえば昨日の夜も雨が降ってうたっけ。

刺すような勢いの雨だ。私を車で送ってくれる人はいないから、私はどんな天気でも学校には歩いて行く。行き帰り。

「今日の雨はひどいなあ」

あんまり傘に当たってると傘が潰れそうな気がする強さと量だ。

風が吹いていないのだけが救い。

「あ、望未。お前は歩いて行くのか?」

誉だ。車に乗っている。私を不思議そうに見つめた。

「私は送り迎えしてくれる人がいないから、いつも歩いて行くの」

「この雨じゃ…。望未はまだ二、三メートルしか歩いて無さそうだから濡れていないが、学校までだとびしょ濡れだぞ」

「いつものことだよ」

父さんも母さんも絶対に送り迎えなんてしない。

「望未ちゃん。誉と一緒に送ってあげようか?濡れて風邪を引いたら大変よ」

「…」

どうしよう。私は立ち止まった。雨からの集中攻撃を受ける。

「お願いします」

誉のお母さんはそう簡単に裏切る人じゃない。なぜかそう思えてきた。

「いいよ」

という訳で学校まで乗せてもらった。雨の攻撃は少なくなっていた。




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