第7話 居場所

「ハンバーグセットとお子様ランチでーす!はい、どうぞ。熱々できたてだよ。店長が厨房で手作りしたんだ」

注文した料理届けに来た三好みよしさんに見事に遮られてしまった。

ほまれは私に向かって親指を突き立てる。口元が少し上がっていた。

きっと私に賛成してくれたんだと思う。いいねって。

「今日はにぎやかで楽しいね。ふふふ」

「厨房と向かい合わせのカウンターの席に座っていた女の人が私達のてんやわんやしている様子を見ていた。やめて下さい。

「あの、騒がしくしちゃってごめんなさい。優太ゆうたもおじぎして」

「なんでおじぎするの?お姉ちゃん悪いことしてないよね」

茉奈まなはいつも謝るの慣れているのかな?気がついたら礼をしていた。私とかおりと誉は呆気に取られている。口が開きそうだ。

「いいのよ。にぎやかなの、私は好きだから」

すぐに許してくれた。良かった。

奈女田なめたさん。ご注文の食材です。どうぞ」

「あ、城田しろたさん。ありがとうね。いつも、この店に食材を届けてくれる人なの。彼は農協の職員よ」

「そうなんですね。ところで誉、農協って何のこと?」

望未のぞみ。知らないのかよ。農業協同組合の略だぞ」

「私が知りたいのは、正式名称じゃなくてどういうことかだよ」

「俺はそこまで知らん」

ズコッ。茉奈と香もズコッとなった。いや、展開的にこれから農協につい説明する感出てたでしょ。

「農業協同組合っていうのは、農業をしている個人や法人…団体を、正式組合員としてされた協同組合のこと。販売や加工などのn事業を行っているんだ。資金を貸し付けたりもするよ」

「きょーどーくみあいって何?」

せっかく説明してくれた城田さんには申し訳ないけれど、内容が難しくて意味が分からない。

それは、私や誉、そして優太君も同じようだ。優太君。質問してくれてありがとう。

「協同組合っていうのは、工業の職についている人や、一般の消費者の人、農業や漁業の職についている人同士がそれぞれの生活や事業の改善のを目指すために組織する団体のこと。簡単にいうと、小学生同士が集まって児童会を作るような感じね」

「なるほど。よく分かりました」

「そういうことだったんですね。初めて知りました」

「ちゃんときょーどーくみあいについて分かったよ」

誉のお母さんの説明は分かりやすかった。しっかり分かりました。

「それじゃあ俺は帰ります。さようなら」

「さようなら」

城田さんは去って行った。優太君がテーブルの上にスパゲッティやハンバーグのソースで模様をかきながらぼやいた。

「もっとここにいればいいのに。食べ物はおいしいし、雰囲気もいいし、ここにいると楽しいと思うけどね」

「そうだね。ここ、いいお店だもんね」

「のおさんは分かってるじゃん」

あ、話、初めて優太君と一対一で話をした。本当に初めてだ。

今まで、私は優太君を遠い存在のように少なからず思っていた。

だけど今は違う。優太君は遠い存在じゃなかった。。

「優太君。ありがとう」

優太君は私を不思議そう

見つめた。片手にフォーク握りながら。

「僕は何もしていないよ。でも、ありがとうって言われるのは嬉しい」

スイートピーで過ごす時間はとても楽しかった。

ろくに家族旅行もしなかった私にとっては、旅行に行ったようにも思えた。新天地へ行くって感じ。

今日は家に帰った後も、誰もいない家に寂しさを感じることは無かった。いつも寂しかったのに。

私はこの家では一人だけど外では一人じゃない。そう思うと嬉しくなった。スイートピーも待っている。


次の日も、またその次の日も、話私と茉奈と香と優太君は放課後スイートピーに通った。いつの間にか、私は誉と優太君を障がい者を見る目で見なくなった。


そんな高原教室まで一ヶ月となったある日。

「おい、望未。昨日の夜に…変な手紙が届いてたみたいなんだ」

私は誉のこんな物騒な電話で起こされた。



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