第6話 カフェへようこそ

今…ほまれって言った?あまり人気がある名前じゃないよね。誉って。賢悟けんご君の言った「誉」は私達が知ってるS組の誉?それとも…私達が知らない赤の他人のほまれさん?うーん。

考えても分からないから、気にするのやめよう。


「家に帰って、荷物置いたら俺の家に来れるか?」

帰り道、私と茉奈まなかおりは誉にこんなことっを言われた。(あ。誉と手をつないで歩いている優太ゆうた君のことを忘れていた。しまったー)

「五時半から、カヌーの練習をしに行くから、それまでの時間だったらいけると思う。うん。大丈夫」

一体どこで香はカヌーの練習をしてるんだろう?気になる。

「私優太は時間あるよ。家にいない方が、お母さん集中して家での仕事ができるって言うと思うから、きっとすぐに許してくれるはず」

「私はいつも親の帰りが遅くて一人で家にいるから…行けるよ」

「良かった。んじゃ、すぐに来てね。よろしく」

四人と別れた後、私は通学用のリュックをパッと片づけ(普段は玄関に転がしておくけど)学校指定のジャージから私服に素早く着替えた。。(普段は寝るまでジャージ着ているけど)

必要最低限の荷物を詰めた小さいリュックを背負って、私は家を飛び出した。春の日差しは優しくて、気持ちがいい。

えっと…。誉の家はこっちだ。合ってるかな〜。合ってるか。

いつもは放課後一人で家にいるから、誰かと放課後いるのは新鮮な気がする。こんな放課後、何年ぶりだろう。

あ、ここだ。危ない危ない。通り過ぎる所だった。

へぇー。ここカフェか。おしゃれな看板には「スイートピー」と書いてある。スイートピーって花の名前だっけ?

「俺が思っていたよりは早く来たな。ま、家近所だし」

入り口で誉が出迎えてくれた。こらっ。ぼやくなあ。

「つべこべ考えてないで店内に入れよ」

「わあ。すっごく素敵なお店!こんなお店入ったの初めて」

ドアも西洋の古風のな感じで良かったのに、店内はもっといい。

学校の教室が一つぐらい入りそうな広め店内に、茶色いテーブルと椅子あちこちに置かれている。西洋料理のレストランみたい。

「いらっしゃい。誉から話は聞いています。誉の母です」

「初めまして。誉と同い年で同じ学校に通っている柏木望未かしわぎ のぞみといいます。ここのお店、とっても素敵ですね」

「ありがとう。この店は、私と友達でやっているの」

そうなんですか、と言おうとしたら入り口から茉奈と香と優太君の姿が見えた。優太君は誉を見つけると、すぐ誉の方に向かって行った。

「ほまさん!やったー。元気にしてる?どう?」

「元気にしてる?って一時間前別れたばかりでしょ」

にこにこしてえう優太君は本当にかわいい。

「カフェとか行ったの本当に久しぶりだよ」

「じゃあ茉奈行けて良かったね」

最近少し余裕を持てたのか、茉奈がちょっとだけ変わった。いや、元気になった。

あれ?誰かがやって来た。

「この人ね、ここの従業員の人。エプロンがいいでしょ」

三好みよしといいます。専門学校に通っています。よろしくね」

三好さんは、爽やかな感じで、背は思ったより高かった。チョコレート色の髪の毛がさらさらと波打っている。

「それでは注文はどうされますか?」

「すみません。話に夢中になって注文するのを忘れていました。」

「か香は何飲む?茉奈はコーラでいい?」

「違うよ。私は炭酸飲めないから頼むのやめてよ」

あ、間違えた。炭酸飲めるのは香の方だった。茉奈じゃない。

「バタバタしてないで注文しろってば。あ、三好さん。俺はレモネード一つ。後、優太君の分は…どうする?何がいい?」

「お子様ランチとプリン一つずつ欲しい」

ちゃっかりしてるなあ。誉。お母さんがくすくす笑ってるよ。

「私も優太みたいに夕飯頼もっと。ハンバーグセット一つ下さい」

茉奈は料理がほとんどできないし、お母さんも忙しくてほとんど手料理を作ってくれないって前に言ってたから、手料理を食べるのは久しぶりなはず。優太君きっとそうなんだろうな。

「まさかこの五人でテーブルを囲めるとは思ってなかった」

誉は嬉しそう。たぶん初めてだからかな。誉に聞いてみよう。

「皆で食事するの、初めてなの?」

「ああ。初めてだ。今まで同年代の子供と食事をしたことが無い」

「私は時々やてっる。皆で一緒に 何かするって楽しいよ。私も誉と色々なことをやりたい。もっともっと楽しいことが増えると思う」

あれ?誉がなぜか真剣になって考えている。どうしてだろう。

「望未。えっと…」






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