第5話 差別
「私達も戻ろう」
教室までの道のりが、いつもの何倍も軽かった。
五時間目の後の休み時間、私と
「
「優しい人だと思うよ。私、いつも弟の世話をして偉いね、とか変な弟を持って家族は苦労するよね、とかそういうことばっかり言われてきた。でも、誉は違う。家族や自分だけで抱えこまないで、もっと色々な人頼りなって言ってくれた。それが嬉しくて嬉しくて」
誉と茉奈は気が合うかどうか、心配だったんだよね。
もしも二人の気が合わなかったら、二人を会わせた私にはかなりの責任がのしかかったと思う。(絶対に想像したくない!)
六時間目の授業ではSDGSについてやった。少しだけ。
2030年までに達成しよういう十七の目標の中に、『人や国の不平等を無くそう』というのがあった。確か…十番目の目標だっけ?
世界には、性別、障害、人種、民族、社会的立場、宗教など様々な理由で差別される人々がいるんだって。そうなのかあ。
誉や優太君も障がい者として差別されたりしていたのかな。私には話していないだけで、誉も嫌な思いをしたことはあるはず。
「本当に…差別を無くすことなんてできるのかな?」
私の隣の席の
「相沢さん。それって全部の差別に対して?」
「うん」
相沢さん…。私は相沢さんのことを、いつも何考えているのか分からない人だと思っていたけど、違ったみたい。私は間違いをしていた。
「俺、ピンク色とかリボンとか…かわいいものが好きなんだ。だけど周りからは、男の子はかっこよくないと駄目、とかかわいいのは女子だけ、とか言われる。聞くたびに嫌になるんだ」
「私はかっこいい女子も、かわいい男子もありだと思う」
そう言いながら、私は相沢さんに筆箱の中にあった桜模様のふせんを一枚剥がして、彼に渡した。相沢さんは目を丸くしている。
「このふせん、かわいいね。俺好きかも」
「でしょ?」
「えっと
相沢さん…は名前で呼ばれたいのかな?
「だったら、私も名前で呼んで。……
「分かった、の…
この会話の間に授業がどう進んでいたのか私は覚えていない。
で、この後すぐ後ろの大庭さん《おおば》さんに今は各自で調べ学習をする時間だよ、と言われたのだった。しまった。気がつかなかった。
「きろきろに話してるの見つからなくて良かった。見つけたら、すぐに怒鳴るもんね。怒鳴り声聞くの嫌だもん」
賢悟君。全くその通り。きろきろこと
「たぶん高原教室の日程組むとか言ってたから、気にしていられなかったんだと思う。あれ、行くのもやるのも大変だよね」
「誉と同じ部屋で泊まったりしたいなあ」
「?」
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