第2話 偶然の出会い②

 帰り道。私は茉奈まなかおりと一緒に帰っている。途中までは三人とも道が同じなんだよね。

優太ゆうた君…最近大丈夫なの?」

 香が少しぼんやりしている茉奈を心配していた。

 茉奈は作り笑いを私と香に見せた。いや、無理矢理笑ったのかな?

「うん。最近は落ち着いてる。物を壊したりしないし」

 それ以上は茉奈に追求せず、三人で好きなアニメや歌の話をした。


 別れ道で、茉奈と別れると、香がぽつりとつぶやいた。

「私のお母さん、茉奈ちゃんのお母さんから色々話聞いているみたいで…。優太君、学校で暴れてるらしいよ。壁をずっと叩いてるってさ」

「そうなんだ…」

 私が通う学校は小中一貫の学校で、人数は割と多い。

 地区に小学校と中学校どちらも建てるスペースが無くて小中一貫校にしたとか。

「家だとどうなの?優太君」

「宿題が全然できないみたい。五年生になって、内容が難しくなったからなおさら」

 優太君には軽めの発達障害があって、S組に通っている。初めての場所がすごく苦手で、じっとしていられない。

「最近は暴れまくるせいで、家での仕事ができないって茉奈ちゃんのお母さん言ってたんでって」

「そっか…」

 私ぬは優太君がどういうことを考えているのかよく分からないけど、このままじゃ茉奈が限界ってことだけは分かった気がした。

「じゃあまたね」

 別れ道を目前にして香が手を振った。

「ばいばーい」

 私は香とも別れて、一人よく分かんない色の雲と空の下を歩き出した。

 スッキリしないのは空も同じなのかな。


「ただいま」

 開けてもおかえりの声は無い。

 お父さんもお母さんも帰って来るのが遅いから。私は一人っ子だし。

 私一人だけの家はがらんとしていて活気が無い。家って人が住まないと駄目になるっていう理由が分かる気がする。

私がいることでどうにか成り立ってるって感じがする。この家。


その夜。私はベッドで音楽を聴きながらあることに気がついた。

私ってS組にいる優太君のことを少しは知っていると思っていたけど、本当は少しも知っていない。

茉奈の弟で、十一歳で、軽度の発達障害があることは知っている。

でも、それぐらいしか知らない。

優太君のことがちゃんと分かれば、もっと茉奈を助けてあげられるかもしれない。

なんて名案なんだ!という喜びは一瞬にして消えた。どうやって知ればいいのかな。

本人に聞く、とすると…いや、優太君本人とは直接話をしたことが無い。

しかも暴れまくるらしいから話うぃ聞いてくれるのかも分からない。これは駄目だ。

茉奈や茉奈のお母さんに聞く。とすると、悪い所ばかり分かっちゃいそう。普段から優太君の世話で疲れているからね。これも…やめておいた方がいいな。

二人とも嫌がるかもしれないし。

ネットで調べるっていうのも有りだとは思ったけど、優太君の軽い発達障害の名前が分からないからこれも駄目だ。どうしよう。知ることって難しいことなのかな。


「おはよう」

気がついたら、朝になっていた。

どうやら色々考えている内に寝てたみたい。私は少しだけスッキリしている気がする。





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