スイートピー
渡部碧
第1話 偶然の出会い①
今日は五月の割にやけに暑い日だ。こんな日の昼休みは何もしないに限ると思う。
「望未さん。申し訳ないけれど、このプリントを渡しに行ってくれないかな」
え…。せっかくテストが終わって、昼休みにのんびりできると思ったのに。
担任の
「今行くんですか?」
「今じゃなくてもいいよ。明日までならいつでも。明後日以降はやめてほしい」
私に頼んだ木代先生が言えるような台詞ではなさそうだけど。
まぁいっか。今はやることがないけれど、放課後は忙しいし。(私が部活に入っているかどうかは今は伏せておきます。色々あって)
今行こう。気を取り直して。
「どこのクラスに渡しに行けばいいですか?」
「S組に届けてほしい。」
S組か‥。私の学校にある特別支援学級の名称だ。
私はS組がどういう場所か知らない。位置ぐらいしか知らない。移動中にちらっと見るぐらい。もちろんどんな人がいるのか分からない。
少しだけ怖かったけど、私はS組に向かって歩き出した。
二階の私の教室からS組まではあっという間にだった。
S組は私の教室の真下にあるから近いのは当然だと思うけど。
「失礼します」
ドアは開いていた。いきなり声が聞こえて驚いたのか、シワが多いワイシャツを着た女の先生が私の方をじいっと見つめてきた。
まずい。私は別に怪しい人じゃありませんよ。
「えっと…。木代先生が渡してほしいって言ってました。……どうぞ」
「ありがとうね。高原教室の日程が書かれているプリント、木代先生に頼んだのよ。助かる〜」
良かった。不審者って認識されたままにならなくて。
まだ一ヶ月しか着ていないジャージがヨレヨレになっているけれど。
「私は
「
「木代先生の授業楽しい?」
「はい。色の塗り方とか絵の構成を丁寧に教えてくれます」
「彼は私の大学時代も先輩なのよ。学部は違うけど。」
へえ〜。どうりでよく一緒に話している所を見かける訳だ。
本当は興津先生もっと話をしたいけれぢ、昼休みが残り少なかったので、諦める。
「それでは…。失礼します」
「S組にはいつでも来ていいからね」
そう言われても来るかどうか…。親しい人もいないし。
私はとりあえず一礼をして去ることにした。が、去ろうとした私の前に黒髪で、ロングヘアの女の子が現れて、すぐに去れなかった。
「…。」
何も話してくれしうになかったから、私は大急ぎで立ち去った。
足が遅い私にしてはかなり速かったと思う。
「望未ちゃんは、宿題のワーク、いつ終わらせたの?」
「昨日かな。歴史結構簡単だよ」
私の友達の
「ねえ茉奈。今日は一緒に帰れそう?」
「うん。今日は優太、元気だから」
「良かった」
茉奈はクラスの皆にほとんど話していないことがある。
知ってるのは木代先生と…私と、
私はS組に親しい人がいない訳じゃなかった。知ってる人がいるんだ。
あまり仲良しじゃないけど。友達っていうより知り合いかな。
そうこうしている内に授業が始まった。
どうしてよりによって社会なのかな〜。五時間目。眠くなるに決まってるよ。
「阿久根さん。阿久根さん、起きて」
いつも通り茉奈は寝ていて、隣の
「いつも‥ごめんね。起こしてくれて」
申し訳なさそうな顔をする茉奈。
悪いのが茉奈じゃないって私は知っている。宿題を出し忘れたり、授業中に寝ていることがことが多い理由も知っている。家で宿題をする時間や、寝る時間が少ないからだ。
「…。」
社会の授業は滝のように流れて行く。どうも今日はスッキリしないのだ。何かがモヤモヤしている。
茉奈いつも通り寝ていた。一回起こされたのに。
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