第三章 あっちの大義とこっちの正義
第001話 魔王、昔なじみといい感じに……。
ブリちゃんがこのままだとあまりにも不憫な感じになりそうなので三章を大幅に書き直し……。
魔王との過去の関係性(設定)が大きく変化しましたので、『前話(二章・017話)の会話内容』がちょこっと変わっておりますm(_ _)m
―・―・―・―・―
ホストくずれとボクサーくずれの二人のチンピラ(と、俺が思ってるだけの)二人の男に連れてこられたホテルで俺を待っていたのは……『向こうの世界』の人間であるはずのブリジッドと言う名の女の子。
いや、当時はギリギリ女の子だったけど今では立派な女性だな。
人々から『女神(ディーヴァ)』などと呼ばれていたこともあり、魔王である俺とは敵対関係、むしろ俺がその生命を散らした――などと思われそうだが、実はそうでもなかったりする。
むしろ協力関係を築こうとしていた相手だったからな。
そんな俺と彼女の関係性など知る由もなく……ブリジッドの命令で渋々感満載で部屋から出て行かされる二人の男。
「この世界って私が思ってたよりも狭いのね?
まさかこんなところで、あちらで元気いっぱい世界を恐怖のどん底に陥れているはずのあなたと出会うことになるなんて」
「それはこっちの台詞なんだけどな?
そして俺の統治している領内では真面目に働く人間が馬鹿を見ることも恐怖することも無い……とは言い切れないが、昔よりは少なくなっているはずだぞ?」
「そうね、それは分かっている……いえ、そうなるようにと願っていたわ。
そうでなければあなたに付いて行こうなんて思わなかったもの」
などと聴く人間によっては『何なの? こいつらもしかして男女の関係?』などと思われそうな、意味深な話をしているように思われそうだが……彼女とは三度合ったことがあるだけ、それも三度目は彼女が広場で大きな石柱の上から吊るされている状況だったのだが……
「はぁ……あまりデリカシーの無い質問……思い出したくもない事を聞くと思うけど……
俺が最後にブリジッド……ビディを見た時は……」
「お腹を引き裂かれて内蔵が流れ出し、口から頭まで突き刺さるフックにぶら下げられて死んでいた姿でしょう?
まぁお腹の方は死ぬ前に自分で……死んだ後にも辱められたりしないように斬り裂いてやったんだけどね?」
「何だよその漢らしいダイナミックなハラキリは……
あの時の衝撃映像を鮮明に思い出して手とか体とか震えちゃうから詳しい説明止めろや」
「ふふっ、あの時のあなたったら……
自分が血や臓物で汚れるのを気にもとめず、大慌てで私の死体を……それ以上傷つけないように優しく抱き下ろして、効きもしないエリクサーを何本も何本も泣きながら身体に掛けていたわよね?」
「いや、どうして死んでたハズのお前がそんな細かいところまで知ってるんだよ!?
……もしかしてだけど、あれは他人の死体だったのか?」
「違うわよ? ちゃんと……って言うのもおかしいけどあれは私の死体だったわよ?
あの時ね、私、死んでたけど死んでなかったの。
正確には『死んだあとどうするのか』を、死神と相談していたところだったのよ」
もしかしてその死神ってイ◯コって名前じゃね?
「最初は……私も死神――死者を迎えに行く神様ではなく、生者に死を与える神様になって、世界中の生きとし生けるもの全てを殺し尽くそうと思ってたんだけどね?
ぐちゃぐちゃになった私の死体を抱きしめて大泣きするあなたを見たら……そんな気持ちも消えちゃったのよ。
おかしなものよね? 同じ人間には利用され裏切られただけなのに、魔王であるあなたに心の底から慟哭されたんだもの。
二度しか会ってない上に、それほど長い時間話したわけでもないのに……もしかして一目惚れでもされてたのかしら?」
「そりゃ、お前があんな目にあった原因の何割かは俺だったわけだからな?
もっとやりようは無かったのかと後悔も反省も……大泣きもするだろうさ」
当時、新米の魔王であった俺のことを人間として扱ってくれた初めての相手でもあったしな。
「それにしてもまさかこんな場所で……日本でお前に合うなんてな。
一体神様にどんな願いを……いや、それはそれとしてだな! あの態度は一体何なんだよ!
いきなり他人のふりをするわ、偽名を名乗るわ、人の黒歴史を披露するわ……とりあえず一発だけ殴っても良いか?」
「し、仕方ないでしょ!? こっちにだって色々と心の準備とか体の準備とかあるんだから!
あと魔王に殴られたら普通の人間は死んでしまうのよ?
それに、まさかわたしがこっちに来てから三年やそこらであなたと再会出来るなんて思ってもみない……もしかしてあなたも志半ばで……」
「いや、俺は普通にあいつらと一緒に大陸を制覇したぞ? その後、魔神のヤロウに何の余韻もなくこっちに送り返されたけどな。
……たぶん、ビディはそんなこと望んで無かったと……いや、最初は生者全員皆殺しにしようとしてたんだったか。
何にしてもあれだ、お前のことをその……傷つけた連中は全員始末したから安心して成仏……そもそもビディって今生きてんの? それとも死んでんの?」
「もちろん普通に生きてるわよ?
そう、あなたはちゃんと目的を達成できたのね。
敵討ちもしてくれて……いえ、そうじゃないわね。
あの時、あの場所で泣いてくれてありがとう。
おかげでこうして、またあなたに会うことが出来たのだから」
とても穏やかな表情で、優しい声でボソッとそう告げるブリジッド。
昔なじみ二人、じっと見つめ合い、ゆっくりと指を絡め……
「いや、そうじゃなくてだな。
お前……一体何やってんの? てか俺には何の用だったんだ?
久しぶりに会った知り合い、それも女神なんて呼ばれてた『元正義の味方』が今では立派なテロリストになってるとかちょっと反応に困るんだけど?
キンジョウ……だっけ? あいつの護送車爆破の犯人ってビディなのか?」
「な、何よ! もう……いい雰囲気だったのに!
そうね、あなた……というよりキンジョウを捕らえることが出来るほどの人間がどんな男なのか、少し興味があったのよ。
言っちゃ悪いけどこっちの世界の人間ってあちらと比べるまでもなく弱いでしょう? ほとんどの人間は魔力も持ってはいないし。
それに私、もともと正義の味方ではなかったわよ? 魔王と手を組もうとしていたくらいだしね?
……それが民を助けるには一番の方法だと思っていたし、それは今も間違っていなかったと確信しているけど。
それに、この国でテロリストと呼ばれるようなことは何もしていないわよ? もちろん敵対する組織やこちらに牙を剥くような躾けの悪い犬の始末はしているけれど……それをあなたは叱ったりしないでしょう?
あと、キンジョウと私は別組織……というよりも私はフリーランスの『魔術師(マギ)』だからね? あの男を殺したのは教団……『夢幻教団(ムゲンキョウダン)』の人間でしょうから無関係だわ」
「久しぶりに会った知人が裏組織というか秘密結社に詳しそうでちょっとドン引きな件。
フリーランスの魔術師って何だよ! 夢幻教団って何だよ! いやそれを言うなら、そもそもサマナーって何だよ! って話からしなきゃならないんだけどさ。
まさかこの地球上でも、俺が知らなかっただけで世界ではいろんな組織が暗躍してたんだな……」
「それを言うのなら魔王であるあなたがこの国の組織に協力してることのほうがビックリ……でもないのかしら。
あなたはいつだって王道を征く人だものね?」
「そんな大層な物を進んでるつもりはねぇよ。
大層に魔王軍なんて呼ばれてたけど、元々は半端者の寄せ集めでしかなかったんだからな。
いや、そんな戻れない向こうの事は今はどうでもいいんだよ」
俺なんてただのお飾り魔王だったし?
実質的に権力を持っていたのも軍事内政問わず行動していたのも『四天王(最終的には十人いた)』だからな。
あいつらなら上手く国を回すことなんてわけのないことだろう。
そう、そんな心配してもどうにもならないことではなく、今大切なのは……俺の現状というか、下半身の状態のことである。
恥ずかしい話なのだが……先程から抑えきらないほど屹立しているのである。いや、本当に恥ずかしい話だな!
「ええと……もしかしてビディって魅了の魔法とか使えたっけ?」
「あなたのところの吸血姫じゃあるまいし、そんな能力持ってるわけないでしょ?
まぁこれでも? 一応は女神って呼ばれてた女なんだから……惚れた男を雄にするくらいの魅力はあると思うけどね?」
俺にとってもこいつは、向こうで初めて会った時からそれなりに好ましい相手ではあったけれども、それはあくまでも友人としての……みたいな?
そんな相手に対してこの欲情具合。そんな素直な自分、全然嫌いじゃない。
もちろんこの後二人でむちゃくちゃセッ◯ス……しようとしたら、某高貴な貴子さんがホテルの部屋に乗り込んで来て一悶着あったと言う。
ちなみに俺の下半身はビディが懐に忍ばせていた『魔王殺し(性的な意味で)』と言う香水の匂いのせいだったらしい。
いや、友人に如何わしい薬仕込んでんじゃねぇよ!?
異世界帰りの『魔王』は現代日本でも無双出来るみたいだ! ~「でもお兄ちゃん無職じゃん?」~ あかむらさき @aka_murasaki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界帰りの『魔王』は現代日本でも無双出来るみたいだ! ~「でもお兄ちゃん無職じゃん?」~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます