第006話 魔王、変(異)態と遭遇する! そして再会……
女の子が魔物に襲われているという、日本ではそこそこショッキングな現場――異世界では日常茶飯事な光景に遭遇した俺。
いや、俺が治めるようになってからの魔族領はそれなりに平和だったんだけどね?
「それで話の続きなんだけどさ、半裸系少女はもちろん助かりたいよな?」
「何をあたり前のことをいってるんですか……あと、別に私は好きで半裸なわけでは無いですからね?」
とりあえずこの子が助けを求めているという前提条件はクリア。
あとはリンネたんの時と同じように契約を結ぶだけ。
……なんかここだけ聞かれたら俺が親切の押し売りをしてるみたいだな。
「おほん。娘よ、お前の自分が窮地に陥っているというのに他人を気づかえるその思いやり……も多少は含まれている行動と叡智な体に我はいたく感動した。
……まぁそっちにいるのはただの犯罪者みたいだしな。
今も気分の悪くなりそうな悪人のクセェ臭い(オーラ)をプンプンさせてやがるし。
てことで、お前のことを救ってやろうではないか。
だが、俺も魔王と呼ばれた男、願いを叶えるためにはそれなりの報酬を貰う必要があるわけだ」
「この人、もしかして恐怖で心が壊れてるとかそういうのじゃないわよね?
もちろん助かれるんだったらどれだけ細い藁でも、○○○○の陰毛でも掴むわよっ!」
「助けてくれるかもしれない人間を○○○○扱いするの止めろ!
あと陰毛なんてそれでなくとも知らないうちに抜けるのに引っ張ろうとすんな!」
「はぁ……どうせこれで最後だと思ってましたし? 仕方ありませんからあなたのその小芝居に乗ってさしあげますけどね?
つまり、助けてほしければ私の体を自由にさせろと? エロ同人みたいに……エロ同人みたいにっ!」
「残念ながらそこにいる雑魚二人をヤっちゃうだけの簡単なお仕事に、寂しくて悲しくて優しい少女の愛する母親の難病を治療するのと同じだけの値打ちはないんだよな。
てことで、そいつらを処理する見返りとして……そうだな、チンピラ五人よりはその二匹の方が強そうだし? 『現金五万円』または『お尻を三揉み』のどちらかでどうだ?」
「お尻でお願いします! むしろ三揉みで五万円貰えるのなら毎日揉んでほしいくらいです!」
あれ? この状況で命が助かるのに五万円は激安だよね? それなのにお尻の方選んじゃうの? もちろん俺は大歓迎なんだけど……どうしてだかわらかないけど、もしもリンネたんの耳に入ったらと考えると悪寒が……。
「えっと、もしかして高かったなかな? じ、じゃあ三万」
「お尻でお願いします! 三万円でも毎日三揉み大丈夫です!」
「お、おう……わかった、わかったから。三揉みで契約するから。あと『どちらかで』というのは『等価交換します』って意味じゃないから。
てことで、そっちで間抜け面をして口を半開きにしている盗撮男とチン○ン丸出しの下品な犬っころ!」
ゆっくりと、一歩そちらに歩みを進める俺。
ポカンとしていた一人と一匹が『ハッ!?』とした表情をしたかと思うとこちらを睨みつけてくる。
お前らは怪人の変身シーンをジッと待ってる特撮ヒーローか。
「あまりの空気と状況の読めなさに思わず放し……警戒して様子を見ていまいましたが……先程からなんなのですかあなたは?
その方は私が先に見つけて可愛がってあげていた、私たちの獲物なのですがね?
……何を人様のおもちゃ横取りして勝手にイチャコラしてんだよこのオッサン!」
「何だお前? さっきまでは丁寧な話し方してたけど素はそっちか?
てか三下は三下らしく、最初からそういう感じで喋ってるほうが好感度が上がるぞ?
襲いかかってくるわけでもなく、ボーっとしたアホ面晒しながは話を聞いてたから分かるよな?
俺は日付が変わるまで彼女のお尻を揉みしだくために」
「三揉みだけです。それ以上は別料金でサービス料とチップと消費税が発生します」
「いろいろと二重取りしてそうなボッタクリ料金システム止めろや!
てかお前らって指名手配されてるんだったよな?
俺は知らなかったけど、その子にしようとしたようなことを他の人間にもしてたってことで間違いないんだな?」
「はっ、ははは! この期に及んで何を言い出すかと思えば!
ああ、これまでに女だけで十二人、お前みたいなふざけた男も含めれば三十人以上なぶり殺しに殺してやったぞ?
まったく、無駄に偉そうにしやがるからどれだけ大物なのかと思ったら……よく見なくともお前、デモンを一匹も連れてねぇじゃねぇかよ!
もしかして外では少しくらい腕に自信があるのかも知らねぇけどな! 残念ながら……ここは異界なんだよ!
ただのオッサンが俺のバオウ、それもこの人工異界で魔力を蓄えに蓄え力を増した今のバオウに勝てるとでも思ってるのかよ!」
「異界だから何だって言うんだ? 物理で殴るだけの簡単なお仕事なのに他人の力なんて必要ねぇんだよ。
あと、どう見ても俺よりお前の方がオッサンだからな? 間違いなく俺より十歳以上は歳くってるよな?」
『えっ? 今ツッコミ入れるのそこなの!?
そいつ、とんでもないこと言ったんだけど?
人工異界って何なのさ? 魔力でデモンの強化?』
ん? もちろん俺は知らないけど……スマホ野郎がビックリしてるってことは一般的な技術ではないってことなのかな? まったく興味は無いけど。
「グダグダとわけのわかんねぇこと言ってんじゃねぇよオッサン!
チッ、時間を掛けて嬲り殺しにしたあとゆっくりと楽しもうと思ってたのによ……その女は後だ! その男から殺れバオウ!」
「グオオオオオオッ!!」
盗撮男に命令され、下半身は丸出しのくせに上半身にはちゃんと防具を身にまとったコボルト……じゃなかった、ウォーワードッグが両手と口を大きき広げて俺に襲いかかってくるも、
「息が臭い! 歯周病の治療をしてから出直してこいクソ犬!」
「ギャインッ!?」
おもいっきり蹴り飛ばし、壁に叩きつける。
「えっ? はっ? はぁぁぁ!? バオウ? バオウッ!?
おいオッサン! てめぇ、ふざけんてんなよっ!
人間のくせにどうして自分で戦ってんだよ! お前はサマナーじゃないのかよ!?」
『そうだそうだっ!!』
「だからお前ら程度の雑魚相手に配下なんて呼び出す必要は無いって最初から言ってんだろうが!」
『ふんっ! 違うね!
君はただ仲間がいないから自分で戦ってるだけだもんねっ!
そう、寂しい寂しいチェリーボーイだもんねっ!』
何故か盗撮犯の罵倒に加勢して俺に言いがかりを付けてくるスマホ野郎。
こいつって俺のバディじゃないの?
どうして先頭に立って(浮かんで)俺のこと罵ってるの?
「……一人とかじゃねぇし? ちゃんと友達とかいるし?」
『へぇぇぇー、ならその証拠を見せてごらんよ!
ほらほらほら、オジサンの! ちょっといいとこ見てみたい!』
「ぶち転がすぞこのスマホ野郎!
……いいだろう、お前ごと、いや、この異界ごと吹き飛ばしてやんよ!
魔将軍筆頭ティーゲル・パンター! ……はさすがにやり過ぎか。
そうだな、そっちの犬っころに合わせて俺の愛犬を見せてやるよ!
タロウマル! 一緒にお散歩に行くからこっちにおいで!」
うっ、想像してたよりも呼び出すためのコストが重いな……魔力の三分の一ほどごっそりと持っていかれたのはここが『グリン=モアール』から遠く離れた地球だからだろうか? いや、そもそも異世界との距離に近いとか遠いとかあるのかは不明だけど。
召喚魔法――正確には眷属の緊急呼び出し用の転移魔法の魔法陣を展開する俺。
てか、ボッチ扱いされたイライラに任せて呼んではみたけど……この魔法って異世界から地球まで出張とか可能なの?
もしもこれでタロウマルが出て来なかったりしたら……本当に友達が居ないうえにペットにも無視される奴ってレッテル貼られそうなんだけど? 大恥かいちゃうんだけど?
「まぁどうせここにいる人間はスマホも含めて皆殺しにするだけだし?
うん、何の問題もないよな!」
「えっ!? まさかの私まで道連れにされる感じなんですか!? あれだけ人のお尻を堪能したくせに!?」
いや、まだ一撫でもしてないけどね?
『どうしてバディであるボクを殺す算段をしてるのさ!?
大きな問題だよっ! ていうか何なのさ今の魔法?
何か来る! とてつもなく大きいのが来ちゃうよっ!』
眼の前の魔法陣がさらに大きく輝き、光が弾けたかと思うとその場に呼び出されたのは体高二メートル超えの真っ黒なワンコ。
「バウッ? アオッ? クーン…… ハッ!? バウッ! バウッ! アオーーーーーーーーーーーーン!!」
『ここどこ?』って感じで、そのつぶらで可愛い大きな瞳をキョロキョロさせ、辺を見回したかと思うと大好きな俺を発見したタロウマル。
一声咆哮したかと思うと嬉しそうに、大きな口からその舌を出してこちらに大きくジャンプする。
「よーしよしよし! 最近あまりかまってやれなくてゴメンな? ちゃんとゴハン食べてまちたか? 大丈夫? ああ、ちょっとお腹に肉が付いてきたからおやつの量を減らされたんでちゅか……うん? あれはダメ! ゴハンじゃないから!」
「キューン……」
「片足だけ? うーん……聞いてみてあげまちょうか?」
「な、な、なんですかそのシベリアンマスティフのクソコラみたいなサイズ感のおかしな化け物犬は!? フェンリルですか!? それともケルベロスですか!? あと気のせいでなければ間違いなく私のことゴハンとして認識してますよね!? 人の足のこと手羽先くらいに思ってますよね!? あげませんからね!? 絶対にあげませんからね!? そもそも名前っ!! どう考えても『タロウマル』はオカシイと思うんですけどっ!? 名が体を表してなさすぎなんですけど!? 『あっ、いかついのが出てくるな……』って身構えられるようにもっとこう濁点満載の名前にしておいてくださいよっ!! あとそのガタイの犬に赤ちゃん言葉は違和感が凄いです!!」
「キャンキャンと煩いお姉ちゃんでちゅね? まったく、そんなに強く否定しなくても軽いワンコジョークに決まってるじゃん。うちの子はグルメなんだからさ。
あとタロウマルとブサイクな魔犬を一緒にしないで欲しいんだけど? この子、血統書付きの聖犬なんだからな?」
「その邪悪すぎるシルエットに神聖要素皆無なんですけどっ!?」
久しぶりの愛犬との再会に思う存分モフり倒し中の俺。
盗撮犯と変態犬? タロウマルが最初に大きな声で吠えた『聖なる咆哮』で泡吹いて倒れてるけど何か?
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