第007話 魔王、行き詰まったのでQ&A!
ゲームでいうところの『戦闘後のリザルト画面』で多少困惑してしまったがここは異界という別世界。
細かいことをツッコんでも『そういうモノだから』としか答えられないだろうから長々と不毛な質問をするのは止めておくことに。
「それにしても魔物一体で報酬が173円か……」
いや、逆にこれって……もしかしたらすごいことなんじゃね?
だって初期投資もなしに危険もなく倒せる相手からお金がもらえるんだよ?
「つまり一日に千体処理すればちょっとしたアルバイトの月給を超えるってことだよな?」
『そんなにデモンが湧き出てくる無限地獄みたいな異界は聞いたこともないけどね?』
てことで歩きながら&魔物を倒しながら『スマホ野郎(仮)』による異界の基礎知識講座を聞き出す俺。
Q;そもそも異界って何なの?
A:地球と別世界が重なり合った異空間、いや、お互いの夢の世界……かな?
Q:たまたま街なかで転移ゲートを見つけたけど危険じゃないの?
A:魔力のない人間にはゲートは見つけられないから大丈夫!
中に入らなければ差し迫って命の危険はない……んだよ?
Q:さっきから出てくる魔物弱くね?
A:魔物じゃなくてデモンね? ここはランクの低い異界だからね?
最高ランクの異界だと神様みたいなデモンも出てくるよ。
Q:さっきからエンカウント率低くね?
A:だから低ランクの異界だって言ってるでしょ!
いや、高ランクの異界でもそんなのべつ幕なしにデモンと遭遇したりしないけれども!
そもそもキミが倒すのが早すぎなんだよ!
殴る蹴るのワンパンでいとも容易くデモンを倒しちゃうとかなんなんだよもう!
一体くらい仲間にして召喚しようよ!
Q:道にバリアが張られて行き止まりになってるんだけど?
行ける場所は全部行きつくしたみたいなんだけど?
さっきからデモンも出てこなくなったんだけど?
このダンジョンのクリア条件は何なの?
A:愚痴っぽい質問だなぁ……。
あとダンジョンじゃなくて異界ね?
あくまでもここは『街を模した異界』だから好きな場所に行けるわけじゃないんだよ。
建物の中にも『ほとんど』入れないでしょ?
この場所に集まった魔素が希薄になるとデモンがこちらに来れなくなるからね。
ランク関わらず異界のクリア条件は『異界主』を倒すことだよ。
Q;その『主(ボス)』が見つからないからウロウロしてるんだけど?
A:マップに主の場所が表示されてるよ?
「そういう大事な情報は初めにちゃんと報告しろや!」
『普通の人は言わなくとも最初に隅から隅までデバイスの確認をするんだよっ!』
……確かにいきなり喋りだしたスマホとか普通なら気になってしかたがないだろうし、アイテムの出し入れとか原理のわからない入金とかされるし、機能の確認くらいはする……ものなのだろうか?
チッ、こんなところで異世界帰りの弊害が……。
ついつい『別にそれくらいは出来ても不思議じゃないか』と思っちゃうからなぁ。
そもそも『スマホを頻繁に確認する』なんて考えもなかったしさ。
「とりあえずそのマップって言うのはスマホの画面表示だけなのか?
それともSFっぽく立体表示とかも出来るのか?」
『今のところ機能の拡張とかしてないからデバイス上に小さく表示させることしか出来ないね』
なるほど、機能の拡張とかも出来るのか。
てかこいつ、実はわざとちゃんとした説明をしてないだろ?
「その機能っていうのは一体何なんだ?」
『機能とはデモン召喚デバイスがデモンサマナーの活動をサポートするためのアプリのことだよ。
最初は『ドロップアイテム所得』、『マップ表示(3×3)』、『異界感知(半径三十メートル)』、キミにはまったく関係のない『デモン待機(三体まで)』しか出来ないけどね!』
「十五年前の旧式スマホのくせに思ったより色んなことが出来るんだな……
てか、『拡張』とか『最初は』ってわざわざ言うってことは機能の追加とかレベルアップも出来るんだよな?」
『ふふっ、もちろんだよ!
まぁ機能開放のためにはそれなりの数の『魔石』が必要なんだけどね?』
なるほど、魔道具も無い日本で魔石なんて何に使うのかと思ったらそんなことに使えるのか!
……いや、俺が知らないだけで魔道具もあるかもしれないし、どこかで高価買取とかもしてるかもなんだけどさ。
街なかでのながらスマホはよろしくないのでスマホ野郎を空中に放ってナビゲーションしてもらいながらボス部屋に向かい歩く。カーナビより便利だなこれ。
『到着~』
「いや、ここってコンビニの前にある寺じゃん。
扉が閉まってるから入れないモノだと思いこんでたわ。
てか三回は前を通ったよね?
どうしてお前はその時に『ここにボスがいるよ!』って報告しなかったのかな?」
『だってそんなこと頼まれてないし』
言わなくとも理解しろや! お前は指示待ち人間か! ……と言うのは流石に無理がありすぎるか。
どう考えても最初にいろいろな確認をしていない俺が悪いもんな。
まぁ気を取り直して……ボスである!
ちなみにここまで出てきた魔物、デモンは、
・羽虫のように飛び回る妖精(ピクシー)』
・五十センチくらいの深緑色の爬虫人みたいな生き物(グレムリン)』
・一メートルほどの腹が出た顔色の悪い人間モドキ(ガキ)』
の三種族。もちろん全員ワンパンである。
別にイキってるとかじゃなく、異世界ではちゃんと力で成り上がって魔王をしてた俺だからな!
てか出てくるデモンが『ピクシー(北欧?)』に『グレムリン(アメリカ?)』に『ガキ(インド? 日本?)』って。
共通性が無いと言うか節操がないと言うか……。寺もあるし、なんとなくそこらへんに居そうって言えば居そうな感じだけどさ。
「てかボスがいる場所ってもっとこう『特別な気配を感じる』とか『強敵がいる! 本当に進みますか?』とかそういう感じの警告が出るんじゃないの?」
『だからキミは最低ランクの異界に何を求めてるのさ……
一応『相手との戦力差がわかる』機能もあるよ?』
何にしても『拡張したいならお金(魔石)を払ってね!』ってことかよ。
世知辛い、異界世知辛い……。
まぁスマホ野郎が何度も繰り返してるようにここは最低ランクの異界。
今までに出てきたデモンから2ランクや3ランク上の相手が出てこようともきっとワンパン、苦戦などしようはずもない。
気軽な感じでお寺さんの門、大きな扉を押して開く……押して……
「開かねぇな!?」
『どんな馬鹿力で押してるのさ!?
揺れてるから! 門っていうか壁ごとグラグラ揺れてるから!
いや、こういう門って閉まってる時は横の小さな扉から入るんじゃないの?』
「……せやな」
不思議生物のくせにどうしてそんな知識があるんだよこいつは……。
~・~・~・~・~
てことで帰り道。
ん? ボス戦の詳細? ……だって、出てきたボス、『ガキ×5』だったんだよ? 戦闘なんて数秒で終わりだよ?
『この人……結局最後まで全部殴り殺しちゃったんだけど……』
「物理耐性の無い相手を物理攻撃で倒すのは普通じゃね?
あれくらいの相手ならそこらへんにいる金属バットを持った高校球児でも倒せるだろ?」
『残念だけど魔力のない一般人が死ぬ気で頑張ろうともガキ一匹倒すことなんて出来ないんだよ?
あと、丸出しの金属バットを持った人がいたらそれは高校球児ではなく半グレのチンピラだから通報したほうがいいよ』
てかこいつってこっちの生き物じゃないんだよな? なのに日本の情報に詳しすぎじゃないか?
最初から胡散臭い奴だとしか思ってないからどうでもいいんだけどさ。
まぁそんなことよりもだな! 先に今回の収支確認である!
現金……8356円
魔石……45個
マ○ロン(HP回復薬)……13個
ポ○リ(MP回復薬)……8個
正○丸(体調回復薬)……3個
異石……1個
異界に滞在した時間はおおよそ三時間。時給換算で計算すると三千円弱……そこらへんでバイトするよりも高収入だけど普通の人間なら命がけ何だろうな。
俺は一回の戦闘時間は数秒で終わりだけど通常ならもっとかかるだろうし。
そしてドロップアイテムである『各種回復薬』は仲間にしたデモンに使用するモノらしいので俺にとってはほぼゴミである。
てかマキ○ンとポカ○と正露○ってどういうことなんだよ。
最後の『異石』は異世界で言う所の『迷宮核』みたいなものなのかな? ボスを倒したら浮かんでたから持ってきた。
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