第006話 魔王、変な場所で自称相棒に絡まれる! その2
圧倒的に怪しい、プカプカと空中に浮かぶスマホと対峙する俺。
『今はそんなことより! おめでとう、神の悪戯か悪魔の誘惑か!
今回キミは目出度く『デモンサマナー』に選ばれました! ついでに無職からの卒業もおめでとう!
まぁただ単に『異界』に入ることが出来る力、一定量以上の魔力があったってだけなんだけどね?』
「そんな他人様に名乗ることも出来ねぇような職種はお断りなんだよ!
てか、そこはもっとそいつが特別な人間だった感を出しておいてやれよ……」
そもそも『異界』ってなんだよ? 街並みは日本だからなんとなく『異世界』ではなさそうなニュアンスは伝わってくるけど……。
「とりあえずここの説明……呼び方はどうでもいいからどういう場所かを詳しく!」
『キミはなかなかのせっかちさんだなぁ。
異界……それはお昼からデモンが百鬼夜行する危険な世界!
キミ達の暮らす人間界(ミズガルズ)とは理の違う幻想的な場所!』
「『デモン』とか『ミズガルズ』とか疑問が増えただけじゃねぇか!」
どうしてこういう連中は知らない単語の質問をすると新たに聞き覚えの無い単語を交えて説明してくるのか?
デモン……百鬼夜行とか言ってるしストレートに鬼とか悪魔って意味だよな?
そしてミズガルズ……北欧系の神話だっけ? オーディンとかトールとかロキとかの神様で有名な。
有名とは言っても俺は『某スペース・オペラ』のイメージしかわいてこないけど。
「てか日本にも神話はあるし、物語で聞き慣れたギリシャとかインドとかもあるのにどうして馴染みの薄い北欧神話なんだ?」
『さて、今回キミが潜ったのはどのようなデモンに出会える異界に続く扉だったのか!
ドキドキ、ワクワクの冒険の始まりだねっ!』
「バディを名乗りながら相方的な人間の質問をサラッと流すなや。
あと俺がドキドキするのなんてチケッ○チャレンジぐらいだわ」
『あっ、でもね、どこから扉をくぐったのだとしても君たち人間界の住人には最初のお約束! ファースト・ミッションがあるんだよ! 言い換えるならチュートリアルだね!
おっ、予定通り……ではなく、こちらに気付いた何者かが向こうからやってきたゾッ!』
とりあえず不必要に高いテンションが非常にウザいなこいつ……。
「何者かに気づかれたのはお前がキンキンと響く大声で喋りまくってたからだと思うんだけどな?
何なの? お前はサイコホラー映画で最初に死んじゃう『ブロンディ(ドジっ子)』なの? 殺人鬼まっしぐらなの?」
もちろん『何者か』が近づいて来てることくらいは俺も気配でとうの昔から分かってたんだけどな。
感じる魔力の大きさから、これといって警戒しなきゃならない相手でもなかったからスルーしてただけで。
二人が(おかしなスマホを一人換算していいのかどうかは甚だ疑問だが)見つめる道路の先からフラフラフヨフヨと飛びながらやってきたのは『七分の一フィギュア』くらいの大きさの、背中に蝶の様な羽をはばたかせた小さな女の子。
『なるほど、どうやらキミの最初の『お仲間(パートナー)』候補は『妖精(ピクシー)』みたい……
えっ? 弾け飛んだ? ちょっと!? いやキミ、何してくれてんのさっ!?』
「えっ? あいつら形(なり)は小さいけどチクチクと魔法攻撃とかしてきてウザったいからな。
それでなくとも借りてきたスーツを汚されたりしたら洒落にならんし? 先手必勝で叩き落とした」
もしもピクシーではなくてフェアリーだったならワンチャンあった……妖精属って基本的に全員刹那の楽しみのためだけに生きてるから厄介事しか起こさないしなぁ……うん、やっぱり先制攻撃で叩き落として正解だな。
『いや、そうじゃなくてね!? おかしいおかしいおかしいおかしい!!
どうして人間界から来たばかりのキミがこの異界で、直接的な物理攻撃でデモンを倒せるのさ!?
ボク、キミに最初に説明したよね!? デモンサマナーの意味ちゃんと理解してる!?』
そりゃまぁサマナーっていうくらいだから契約とか召喚とかするやつなんだろうけど……魔王がいまさら最下級の妖精を仲間にする意味なんて無いだろ?
「いや、そんなことよりもだな? 倒した魔物が光の粒子になって消えたんだけど?
これじゃ死骸から素材とか肉とか剥ぎ取り出来ないじゃん。
体を動かして疲れるだけとか大損じゃん」
『えっ、死体を冒涜しようとか何なのこの野蛮人……
ここは異界なんだから、そこで遭遇するデモンは真素(マソ)できてるに決まってるでしょ?
倒せばそのまま消えちゃうのは当たり前じゃないか。
ああ、デモンから得られるドロップアイテムはちゃんと『デモン召喚デバイス』に回収されてるから心配御無用だよ!』
「お前の普通(あたりまえ)は俺の普通(じょうしき)では無いんだよなぁ……
消えちゃう上にドロップアイテムとかゲームかよ!
てか勝手に取り憑いた他人のスマホに妙な名前を付けるのやめろや!
ちなみに質問なんだけど、ドロップアイテムってやっぱり肉とか羽とかそういう感じのやつ?」
『だからどうしてキミはデモンを解体したがるのさ!?
今回のピクシーからは『10等級魔石』と『傷薬』、あと現金が『173円』だね』
「異世界じゃなくて異界だからしかたないかもしれないけど、薬草とゴールドじゃなくて傷薬と日本円なんだ……」
『何なのさ薬草って? 漢方って意味? 残念だけど普通の傷薬だよ?
それにゴールドなんてお金の単位はこの国で使ってないよね?
もしかしてキミ、お買い物とかしたことない人なの?
そのくせ、人間界に存在しない魔石が何なのかは聞いてこないしさ
はぁ……焦って変な人をバディにしちゃったかな……』
「ため息つきたいのはこっちなんだけどな!」
だって魔石は異世界でも魔物を倒せばその体内から見つかることがあるじゃん?
薬草は山に住んでるゴブリンとかならそこら辺で採集した草とか持ってることもあるだろうし?
山賊なら旅人とかを襲って銀貨とか金貨をためこんでることもあるだろうしさ。
「てか現金がドロップした事実に驚いてスルーしちゃうところだったけど、173円ってなんだよ。
年寄りの肩叩きした小学生の御駄賃かよ。
てか、勝手にスマホに入っちゃったアイテムとかお金ってどうやって出せばいいんだ?」
『最低ランクの異界のデモンからのドロップ品なんだからそんなもんじゃない?
アイテムはデバイスの画面操作をすれば取り出せるよ? 試してみる?
入金されたお金は各種Payに交換出来るからコンビニでもレストランでもお気軽にどうぞ!
手数料は必要だけど銀行振込も可能だよ!』
「何だよ『ぺぇ』って……ああ、おっぱいの隠語?」
『お金とおっぱいが交換できるってどういうことなのさ……
ぺぇじゃなぃてペイだからね?』
ものは試しと説明してもらいながら傷薬を取り出してみる俺。
スマホ画面で三タップくらいかかるから脳内操作だけで取り出せるインベントリよりだいぶ不便だなこれ。
「てかアイテムが出せるなら現金も直接出せたら便利なのに」
『小銭ならいいけどお札には通し番号があるから下手したら捕まっちゃうかもしれないけどいいの?』
「全然よくないです」
そんな出どころの怪しい金なんて電子マネーとして使うのも問題じゃないか? と思わなくもないが……。
『魔物を倒す』=『ビッ○コインの採掘』みたいなモノだと考えれば……それほどおかしなことでもないのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます