第7話
ナジルは、先輩は横暴だのなんだの口走りはじめた。
そうしているうちに、どんどん興奮してきたらしく、「こうなったらケリをつけるしかない、そうしたいんだろうが、この嫌がらせ野郎めが!」と叫びだした。
「この野郎、サシで勝負しやがれ!」
俺はショックで立ち尽くしていたため、反応が遅れてぼうっとしてしまっていたが、ナジルが物差しを掴んでこちらに向き直ったのが目に入った。
「ケリをつける?
その物差しで何をするんだ?」
「いちいち説明しないとわからないんか!」ナジルは謎の言動を取りながら、自分の持っているものとは違う物差しを、こちらに投げてよこした。「さあ、これで公平な勝負となるだろ」
「なにをしているのか、よくわからないんだが…」
ナジルはさらにこう言い放った。
「俺の方が大きい物差しを持ってるんだが、俺がビッグなのがふさわしい男だからそれは仕方ないからな。
俺にはスケールが大きいものが似合うんだ!思い知れ!」
そしてナジルは物差しをブンブン振り回し始めた。
「さあかかってこい!サシで勝負だと言っただろ!」
はあ?サシで勝負って…
物差しで勝負することだと思って…いたり、しない…よな?
ナジルは物差しを握ってない方の手で、ポケットから勇者のプレートを出した。
ナジルがそれを俺の目の高さくらいまで掲げると、
窓越しの陽の光に反射してプレートがきらめき、俺の目を射た。「うっ!」
「くらえ、これが、
これこそが勇者パワーだ!
やられちまえ、目障りなレイオ!」
ナジルはそう言いながら物差しを激しく振り回したが、自分の行動に煽られ、さらに興奮してきたらしく、
真っ赤な顔になり、荒い息を吐きはじめた。「ハアッハアッ」
キメエぞ、こいつ…寄るなっ近寄るな!
俺は眩しさから回復した視力で部屋を見渡し、
扉の方へと行けるように、ジリジリ後ろに下がった。この部屋から逃げないと…!
「このヤロ、ちゃんとサシで勝負しやがれえ!」ナジルは物差しをぐるんぐるん振り回しながら、こちらに近寄ってくるのだった。
だがその物差しの先が窓ガラスに当たると、バリンガシャンとでかい音を立てながらガラスは割れてしまった。
「あっ…こうなったのはレイオのせいだからな!俺はちゃんとサシで勝負しようと、お前にも物差しを用意してやったんだ!俺は悪くないからお前のせいだ」ナジルはそう言うと物差しを床に落として逃げてしまった。
俺もすぐ誰かに見られないうちに、その部屋は出た。そうしないと俺の給与からガラス代が引かれると思うので、一般的なモラルはどうあれ、ここでは正しい判断なのだ。
まわりに誰もいなかったし、あまり人の立ち寄らない部屋だったせいか、窓ガラスが割れたことは俺の知る限りでは露見しなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます