第8話

「おい!おい!」


そんなある日のことだ。


商業ギルドから昼飯を買いに出たところを呼び止められた。


俺を呼び止めたのは、辞めた先輩のうちの一人だった。


この人とは、確かそんなに仲良くはなかったはずだが…?


俺はお久しぶりです、なんですかと聞いてみると、たまたま近くまで来たんだが少し話できるか?と言われ、昼飯を共に食べることになった。


あまりギルドの人間が来ないという、上の階にある飯屋に誘導される。


どうやら、仕事の関係者に聞かれたら困る話のようだ。


「あのな、お前、まだあそこで仕事やってるようでさ。


自分の辞めたあとの仕事、お前に全部やらせてるようだから、気になってさ。」


彼は他に客が誰もいないのに、声をひそめた。「あそこでの仕事、続けていくのはやめた方がいいぞ。


その、辞めた側の意見なんて、みんなそんな感じだろ、とか思ってるだろ?


考えてみろ。ここの商業ギルドの歴史は、二十年くらいある。


それなのに、残っている先輩、少ないだろ?


なんかみんな二年か三年、長くつとめても五年くらいで辞めるらしい。」


それは以前からこの先輩が時々口に出していたことだったが、


あまりにも業務が忙しいので、考えることをせず、聞き流してしまっていたのだ。


「ここって利益第一主義だからな。上の連中は俺等よりはるかに給料高いんだ。


で、俺らが長くいたら、給料を上げないといけなくなるのが嫌で、そうさせないようにしているらしいぞ。


方法としては、些細なことで難癖つけて給料の据え置きするだとか、無理に減額するとか。


あるいはさばききれないくらいの仕事やらせて辞めると言わせるとか。


雇用の契約で、そうそう従業員を首にできなくなっているからこそ、自分から辞職を申し出るようにさせるらしいぞ。」


ちなみに業務以外の仕事も、さり気なく義務づけされており、


それらは無給の上時間もかなりかかる作業なのだ。


「これは俺がそう疑っているという話ではなくて事実なんだ。


俺は昔辞められた方に話を聞いたんだ。


その方は、ここの上層部に内部事情をあかされたうえで、楽に利益得る側にならないかと、上層部側に誘われていたらしい。」


「なんと…」


「俺は同期二人にこの話をしたら、二人とも辞めると言い出したんだ。

あとは知っている通り二人とも退職した。


お前にもこのことを話そうとしてたんだが、お前が忙しすぎることもあり、

色々すれ違ってしまい話せず終わった。」


まあ、この先輩と自分はさほど仲良くはないから、話すのは後回しになったんだろうな、俺はそう思いながら話を聞いていた。


他の辞めた二人も俺宛になんとか事情を話そうとしていたらしいが、タイミングが悪い場面が続いたと。


ギルド内では耳があるため、話ができなかったらしい。


うち一人、俺が世話になった先輩の方が、今日たまたまここに通りかかる用があった目の前の彼を捕まえて、どうにか俺に話をしといてくれと依頼したらしい。


「あの新人についても話はある」彼は話を続けた。

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