5-8 白煉の日記
隠しイベントをクリアし、
お互いに寝間着の単衣だけ纏い、寝台の真ん中で。
胸の辺りに違う体温があるの、すごく落ち着く。
「本当にどこも怪我してないんだな? 腫れてるとこはない? 掠り傷だって傷だからな? それはしてないってことにはならないんだぞ?」
「ちょっ····
最初は
俺たちはあのBL本事件? 以来、色々とあってほぼ毎夜一緒にいる。これくらいの触れ合いは可愛いものだと自分でも思う。むしろ楽しい。
お付き合いからはじめた俺たちは、手も繋いだし、抱き合ったりキスもした。まだ最後まではしていないけど、その直前までの関係にはなった。今は最後の恋愛イベントに向けて、心と身体の準備中という感じ。
「
「······うん、」
横顔だけしか見えないけど、小さく頷いた
「
うわぁ····俺、もしかして疑われてる?
言っても信じてくれないだろうけど、俺は今まで誰とも付き合ったこともないし、こんな風にくっついたり触ったりもしたことなんてないんだからな?
「そう? ぜんぶBL本の知識だよ。実践したのは
「そう、なんだ····BL本ってすごいね」
感心するの、そこなんだ?
俺のはじめてが
まあ、まさかBL本の知識がこんなところで役に立つとは思ってもみなかった。俺が好きなBL本のシチュエーションのひとつ。
こうやってふざけ合いながらも、内心はどきどきしてて、でも好きが溢れてる。今の俺たちってそういう感じだと思うんだけど、
「
隙間がなくなるくらいぎゅっと後ろから抱きしめる。これくらいはっきり言わないと、
それはきっと、俺が不安にさせるようなことばかりしていたからかもしれない。勝手に離れて行ったり、気まぐれで連絡したり、
でも今は、違う。
ちゃんと伝えたいことを伝えて、好きだって気持ちを表現したいと思ってる。
「いい香り····キラさんがお香でも焚いてくれた?」
首筋に鼻を近づけた時、ふわりと甘い香りがした。湯浴みはお互いにすでに済ませていて、その後は少しそれぞれの時間を過ごしていた。その間に部屋に焚いたお香の移り香が、
「うん、俺もこの香り好きなんだ。そんなことより、早く読んでみようよ」
なのに、そんなことって····。
確かに、本題は手に入れた
「そ、そうだな。そっちが今日はメインだしな!」
心の声とは反対に、俺はうんうんと頷いた。
「読むのにちょっとだけ邪魔だから、腕、ほどいてくれる?」
「やだ」
むっと俺は頬を膨らませる。我ながら子どもか! とも思ったが、意地でもこれは譲れないぞ。ずっと思ってたけど、
「····はあ。じゃあ、このまま読むね」
はあ、って····。
こうなったら、なにがなんでも絶対にくっついたまま離れないからな!
って、これじゃあ、しっかり者のヒロインと、仕事はできるのに私生活だめだめ主人公の図じゃないか? カッコわるい····でもこれだけは譲れない。わんこ系攻めだって需要はある。俺の場合はちょっと違うか。
「
恋人の前で、他の男のことを褒めるとか····。
でもまさにその通りなんだよな。
幼い頃の
「······なんでもない。続けて?」
「うん?
知ってる。
でも
やっぱり、自分で知ってこそ楽しいわけだし。それがゲームの醍醐味だ。
「名前もわからないその子とのやり取りが、
「庭園? そんな場面なかったはずだけど」
不思議に思って、俺は
仮にこの「知らない子」を
俺の中の
「
これは確かに
「····ホント、ずるいな。こんなことまで知ってんのかよ」
俺たちをこのセカイに転生させたらしい、とんでもない存在。
これは、俺と
「
日記を閉じて、大事そうに胸に抱えて。
でも子ども同士の約束なんて、時が経てばいつかは忘れてしまう。
「····あの頃の俺は、色んな過程をすっとばしてたからな。我ながら頭おかしい奴だったかも。
俺は
いつか。
もしかしたら。
間違いでも勘違いでもいいから。
俺を好きになってくれたなら、いい。
「
「大袈裟だよ。俺なんかいなくても、
いや、無理。
絶対に生きていけない自信がある。
「最後の恋愛イベントが終わったら、俺たち····どうなっちゃうんだろうね、」
仮に物語がハッピーエンドで終わったとして。
その後は?
俺たちは、
「終わらせない。俺たち、まだ恋人になったばっかりだろ? 恋愛イベントの後、シナリオ通りならふたりがみんなに祝福されて結婚式を挙げ、数年後に
エンディングの後にすべてがわかるとナビゲーターたちはいうけど。
それって、良いこととは限らないよな?
「俺は、今のまま····
「うん······俺も。でも、もし叶うなら、元のセカイで
肩に顔を埋めたままの俺の頭をそっと撫でて、
「もっと幸せにしてあげたいし、もっともっと幸せになりたいよ。そこにはもちろん
これから先の未来のこと。
留まるんじゃなくて、進むために。
この恋はここで終わりじゃなくて、寧ろはじまりなんだって。
「キスしていい?」
いいよ、と恥ずかしそうに
確かめるように、求め合う。深く、甘い口付け。
融けて一緒になれたらいい。
そうしたら。
いつまでもずっと、離れずに済むから。
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