5-7 帰る場所
『報告しま~す。隠しイベントが無事に終了したようですよ~。これにより、恋愛イベントの発生時期が確定しました。イベント発生は三日後です。また、発生場所の変更を確認しました。発生場所は王宮の庭園です』
良かった。
ん? 今さらっと重要なことを言わなかったか?
「え?
キラさんも首を傾げている。
「ハクちゃんのポニーテール可愛かったでしょう! 理由は教えてくれなかったけど、絶対に願懸けだと思うのよね。
と、ひとりではしゃいでいた。
あれ、キラさんが決闘だから邪魔にならないようにって、結ってくれたんじゃなかったのか。
「王宮の庭園か····
本来はもう一度
イベントの最後に
『いずれにしても、我々にできることはなにもありません。流れのままに、最後の恋愛イベントを迎えるしかないようです』
キラさんのナビゲーターであるイーさん? が淡々と答える。
『他のキャラたちがなにかしてくるっていうのも、もうないかと思いますよ?
「それはつまり、このゲーム云々じゃなくて、俺と
といっても、もうお互いに気持ちはわかりきっていて。告白もした。あの日からほとんど毎夜、一緒に過ごしている。恋愛イベントのラストに向けて、色々と準備····というか、なんというか。
とにかく、なにがあってもいいように本番に向けてふたりで練習····しているのだ。
うーん、日本語難しい。
もちろん、最後まではしていないし、
「なにが起きても不思議じゃないけど、危険なことはないのかも。始まってみないとわからないのがもどかしいわね」
机の上で頬杖を付き、キラさんは大きく嘆息した。誰にもわからない、最後の恋愛イベント。その先のエンディングでなにが待っているのか。俺たちには想像することすらできない。それこそ、初見プレイとなんら変わらないわけで。
不安はもちろんあるが、そう思うとなんだか楽しみでもあった。自分たちの知らない物語の行方。その先。俺たちはこのセカイで生き続けるのだろうか。それとも、なにか思いもよらないことが待っているのか。
(
そもそも、俺たちはもう····元のセカイには戻れない。戻るという手段も、戻れる保障もない。
もし戻れるのなら、あんなことが起こる前。
俺たちが各々頭を悩ませていた時、部屋の扉が開かれる。
「すみません。部屋から光が漏れていたので、消し忘れているのかと」
「
「····
深夜に女性とふたりきり。しかも
「····やはり、間違いではなかったようですね」
「えっと
なにに対しての"間違いない"なのか。
今の状況?
「
えっと、つまり····。
暗かったから確信はなく、戻って来て部屋に灯りが点いていたことで安心したが、確かめるために声もかけずに入ったら、
「もしかして、
なにをしたか、と問われれば、色々した。したが、別に愛想をつかされるようなことではないし、なんならお互いの気持ちを深めていたといってもいいだろう。
「
信じてくれるかはわからない、けど。
彼なら黙って聞いてくれる気がした。
俺は一からぜんぶ順を追って話し始める。俺たちが転生者で、このセカイは作られたもので、
「つまり、
真面目過ぎる答えが返って来たが、その通りだったので俺は頷く。
「色々あって、今の状況はゲームのシナリオ通りではなくなっている。本来、
ホンモノもニセモノもない。
ひとつの存在なのだと。
「騙していたわけじゃないけど、俺たちにも制限があったから。話していいことの方が少なかった。そこは許して欲しい」
俺は誠意をもって頭を下げる。途端、
「あなたがなんと言おうと、私にとって
もしかして、理解してくれた?
その上で、俺を
「私の主は生涯ただひとり、あなただけです」
その言葉に、俺はもうなにも言えなくなった。ただのキャラではない。そこに確かに存在するひとたち。この『
「ただいま····って、
いや、すごいタイミングで帰って来たな。
「
「····どうしてそうなる?」
「
絶対に勘違いしてるって!
ふっと
「
「あ、ああ····ええっと、これはですね、」
腰に佩いていた剣を指差して、
動揺している
「無事でよかった。帰って来てくれて、よかった」
「····
「なにか私が手伝えることがあれば、今まで通り遠慮なく言ってください。では、もう遅いので部屋に戻ります」
「おかえり、ハク」
「おかえりなさい、ハクちゃん!」
「····ただいま、」
帰って来てくれて、よかった、と。
その言葉の意味が、
二度と、失いたくない。手を離したくない。だからこそ、傍にいてくれると安心する。
当たり前だけど、そうじゃないんだって。
だから
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