番外編1 蘇 夏琳の誤算 前編
一人娘である
今となっては甘やかしが過ぎる両親へと変貌してしまいましたが、あの頃の
それもこれも
しかし儀式が始まってすぐ、ある事件が起こってしまいます。
皇子の命を狙った賊が紛れ込んでいたという事実にも驚きましたが、なによりも、暗殺されそうになった皇子を庇って、倒れた花嫁がいたのです。その者は美しい白銀髪の小柄な少女で、
そんな中、花嫁候補の中に自分は父親が元医官だと名乗る者が現れ、
花嫁候補たちは一旦解散させられ、儀式自体が延期となってしまいました。あんな騒ぎがあったのだから、仕方のないこと。
――――数日後。
「お茶会、ですか?」
父が言うには、
「
顔合わせも兼ねて、紹介してくれるという。こんな僥倖、この先あるかどうかわからない。両親も思わぬ提案に驚いた様子でした。
しかし、またもや問題が起こります。
「
「母上、兄上の花嫁が駄目なら、俺の花嫁にするのはどう?」
などと、ふざけたことを言う始末。
「
「なんにせよ、その子を花嫁にするなら、素性を確認する必要があります。いくら身分の格差が花嫁には関係ないといっても、誰とも知れない者を次期皇帝陛下の正式な花嫁にすることはできません」
「そこで、提案があります。この
「いえ。私の花嫁は、今生でただひとり。心から愛している、彼女だけです」
そう言って、呆然と立ち尽くしているその子の手を取ると、見たことがないような甘くて穏やかな笑みを浮かべて、はっきりと自分の気持ちを口にしたのでした。その言葉を真正面からかけられた彼女は、みるみる顔が真っ赤になって、超絶可愛らしかったのを憶えています。
「な、な、な、なに言って····るん、ですか? あい······は? ええっ⁉」
その時、
(なんて可愛らしい方なのでしょう!)
今まで、誰かに勝つことしか考えていなかった自分が恥ずかしくなるくらい、その純真無垢な姿に感動した
「こほん! そこまでです。
その後のお茶会は本当に楽しい時間でしたわ。
「ハク様。もしよろしければ、今度一緒に刺繍でもしませんか? その後は
白銀髪の少女の名は、ハク様。宝石のように赤くて綺麗な瞳が特徴的な彼女は、本当に可愛らしくて。このまま眺めていたい気持ちになりました。
「え····そんな、わざわざ申し訳ないです。私なんかのために
「
「でも····私も居候の身で、」
ハク様は遠慮がちに隣に座る
「えっと····じゃあ今度、一緒に遊びましょう」
遊ぶ?
「
友だち?
「あ、すみません迷惑、ですよね。私みたいな素性の知れない者と、
「つまり、親友ということですね! 素敵ですわっ」
「え? あ、えっと······親友、ですか?」
その時の
こうして楽しいお茶会は終わり、帰路に着く。両親には申し訳ない気持ちになりましたが、皇子様の気持ちを変えることなど誰にもできないでしょう。事情を話してなんとか納得してくれました。
さらに数日後、
けれども、この時の
ハク様の隣には、
番外編1 蘇 夏琳の誤算 前編 ~完~
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