4-8 語られた真実
自分が情けない。
守るなんて大口叩いておいて、結局は守られて。
ヒロインが物理的にも精神的にも自分より強いなんて、主人公失格だろう!
(俺だって、
無言で立ち上がった俺は、表情を変えずにゆっくりと歩き出す。
(そっちがその気なら、こっちだって黙ってないんだからな。
だったら俺も、その船にすすんで乗ってやるさ!
「父上、私もお話したいことがあります」
その言葉に対して、「話してみなさい」と皇帝は許可をくれた。このひとが超が付くくらいお人好しであることを俺は知っている。そして、ある事件の真相を誰よりも知りたいと思っていることも。
「誘拐未遂事件と、その裏で起こっていた誘拐事件。そこにいる
隠しルートにおいての最大の恩情。それは、
そんな彼女の本編での罰は廃妃。
皇子を生んでいるから、一応の情けをかけてはもらえるが、一生日陰の身となる。それは彼女にとって一番の屈辱だろう。
だが、この隠しルートでは少し結末が違うのだ。
「
「そうですよ、
皇后が心配そうに眉根を顰めた。このひとは本当にわかっていないため、正直心苦しいところもある。なぜなら皇后は
「まず私の誘拐未遂事件。これは本当に
「それはいったい、どういうことなのだ?」
「はい、父上。実はあの日、」
座学が始まる少し前。いつものように
座学は身分関係なく受けられる。それなのに、身分を問うなんておかしな話だった。
それ以来、
「
「つまり、兄上が
すかさず
「何度説明しても誰もわかってくれない。そう考えた当時の私は、父上にも母上にも話すことを諦めてしまった。それに加えて、
疑いをかけられた
「あの時ちゃんと言葉を交わしていたら、結果は違っていたかもしれないのに」
傍で見ていた自分が、唯一その疑いを晴らせたはずなのに。
「今ならはっきりと断言できます。
「そんなことができるなんて、よほどの地位にいるひとかも?」
肩を竦めて
「父上、
「
「はい。私もその理由は訊いておりませんが、その真意を知りたくはないですか?」
「
皇帝の命により、
「皇帝陛下のお言葉に感謝します。私、
「····殺され、かけた?」
横で
まあ、そうだよな。本編では殺されたことになってるんだから。
「一命は取り止め、今は動けるようにもなりましたが····後遺症のせいで、医者として以前のように多くの患者さんを診ることは叶わなくなりました。私はそんな父を助けるため、本格的に医術を学ぶようになったのです」
キラさん、ちょっと声が震えてる。さすがにこの場でいつもの調子はでないよな。でもここが
「疑いが晴れないまま王宮を去った父ですが、ひとから感謝されることはあれど、恨まれるような行いはしておりません。あの夜、私は父の機転で床下に隠され難を逃れましたが、数人の足音を聞きました。何者かが父を殺すために雇った賊でしょう。手練れの暗殺者であれば、必ず生死を確認するはず。しかし彼らはそれをしなかった」
それはつまり、
彼らは実力者なので、判断が早い。失敗とわかればすぐに退くが、素人相手に手を抜くことはない。武芸の武の字もかじっていない
「おかげで、父は命をなんとか繋ぐことができました。こればかりは、犯人の詰めの甘さに感謝しております」
本編では暗殺者によって確実に殺されており、
そこからの
「私はこの暗殺未遂が誘拐事件の真相に関係があるのではないかと考え、王宮に潜り込むための機会を窺っていました。そこに皇子様の花嫁探しという絶好の口実を得、不誠実と思いながらも自分の目的のために参加したのです。もちろん、この件に関して父にはなにも伝えておらず、私が王宮にいることも知りません」
医術の修行で少しの間旅に出る、という適当な理由を付けて、こんな危険なことをしている娘のことなど知る由もない。
「すべては私の誘拐未遂事件から始まった連鎖です。それに巻き込まれた者たちの失われた時間は、いったい誰が責任を取るべきでしょうか?」
「もちろん、それを指示した者、それに従った者たちだろう」
はっきりとそう言った皇帝陛下の言葉に、
まだ白を切れると思っている?
それとも諦めて認める?
「父上、この件に関して私からもお伝えしたいことがあります」
まさか、ここで自分の母親の悪行を暴露するつもりなのか?
「私が独自に調べた内容をお話しても?」
「お待ちください!」
誰もが注目する中、
その場にいた皆が彼女の方に視線を向けた。
それでも。
「大丈夫。なにがあっても、今度こそ俺が傍にいるから」
「······うん、」
安心させるようにいつもの笑みを浮かべ、それに応えるように
しかしこの後。
事態は
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