4-2 両片思いのおわり ※
バン! と夜中に突然、勢いよく自室の扉が開かれ、俺は書物を開いたまま転寝をしていたせいで、危うく椅子から転げ落ちそうになった。
「たのも~!」
言って、キラさんが
「····か、
「
「それがどうした? 前々から決めていたことだ」
そんなのキラさんだって知ってるでしょ!
そういう本編の流れなわけだし!
「ハクちゃんがその件について、ひとりで悩んでいることは知ってました?」
え? 悩むってなんで?
そもそもこれが正規のシナリオだし、なにもおかしくないはず。
「ということで、ハクちゃんとちゃんと話し合ってください。あ、このまま
「は? え? お泊りって····どうしてですか?」
キラさん、たぶんそれまったく伝わってない。
いいから、いいから、あとは当人同士で! と
(いや、困るんだけど⁉ 変な空気のまま残されて、俺にどうしろと?)
話し合うってなにを?
「····ここ、座ってもいいですか?」
俺の答えを聞く前に
俺も遅れてその右横に腰を下ろす。肩が触れるか触れないかギリギリの距離。
「俺は、
「ああ、聞いた。でもそれがどうしたんだ?」
それって大事なこと?
「俺、本当の名前、教えていなかったかもって····
名前?
確かに俺は
キラさんが改変のペナルティで、カウンターひとつ減らしてまでそうした方がいいって思ったなら、なにか理由があるってこと?
「
そうだよな。現実セカイの俺たちは、もう····死んでるんだもんな。本当の自分を知っているのは、自分たちだけ。
俺とキラさんは早い段階でお互いの存在に気付けたけど、
『駄目ですよ、
わかってる。
あとひとつで俺は強制排除。そうなったら、もう本当に
「教えてくれる? 君の名前。望むなら、今後はその名で君を呼ぶ」
「だ、だめです。他のひとたちにこれ以上は話しちゃだめって、
「じゃあ、ふたりきりの時に呼ぶ」
俺は
その表情に、絆される。疼く。あの淀んだ感情をなんとか抑え、俺は同じように笑顔を浮かべて覆い隠した。
「教えて、君の名前」
顔を近づけて覗き込むように訊ねると、
「······は、
「
「お、大袈裟ですってっば! でも····嬉しいです」
愛しいひとの名前。
壊したいくらい、閉じ込めたいくらい、狂いそうなくらい愛しいひとの。
でも、もう絶対に傷付けないと決めたんだ。だから、優しくして、甘やかして、
けど、ひとつだけ。
どうしても終わらせたいことがあった。
「何度も、しつこいって思われるかもしれないけど、訊いてもいい?」
「え····? なんですか?」
ぽつりと呟いた言葉に、
「前に言っていた好きなひとって、誰のこと? 大丈夫。この前みたいにはならないから。だから、正直に教えて欲しい」
やっぱりいつも
彼女は
けれども彼女が同性にしか恋愛感情をもてないことを、一番親しい
「それは····その、言わなきゃダメですか?」
涙目で訴えるように訊ねてくる
「君が
精一杯の言葉を尽くして。それが伝わったのか、
いや、未練がないっていったら嘘になるし、数日闇落ちするかもしれない。その答えを聞いた瞬間、俺の初恋は完全に終わるのだから。
「俺、
うん?
え? あれ?
「あの時····
忘れられないひとって?
「俺が好きなひとは――――、」
それを聞いた瞬間、俺は思わず
だってそんなこと、考えてもみなかった。
叶わない恋だって、両思いなんて絶対にあり得ないって。
始まる前から終わっていた恋のはず、だった。
もっと早く伝えておけばよかった。
俺が俺として生きていた時に。
この感情から逃げずに、踏み出す勇気が少しでもあったなら。
「ごめん、
抱きしめていた身体をゆっくりと離し、大きな瞳を見開いて驚いた顔をしている
俺は、
〜お詫び〜
次回『4-2.5 両片思いのおわり』は、カクヨムさん規定により非公開とさせていただきます(¯―¯٥)
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