第四章 交際ゼロ日婚はさすがに無理なので、お付き合いから始めませんか?
4-1 ヒロインの親友枠は信頼度が大事!
恋愛イベントも隠しイベントも大成功!
しかも、
「あのシーンのスチルイラスト、めちゃくちゃお気に入りなのよね~」
私は自室に籠って、
『カナン。
イーさんのその言い回しに、なんだが違和感を覚えた。
「ねえ、私たち。エンディングを迎えたらどうなっちゃうの? 元のセカイに戻れる? うーん。でも、これが転生なんだとしたら、戻るもなにも····」
漫画や小説でいうところの"転生"といえば、完全に死亡後よね?
これが転移ならまだしも····希望は薄そう。
『それに関しては、エンディングを迎えた時に
まあ、そうよね。
そもそもこの転生って、なんだか変。普通なら、有名なファンタジー小説とかゲームに転生か、まったく別世界への転生が王道だもの。まだ公表もされていない、しかも素人が集まって作ったフリーゲームに転生って。
「もしかして、あの時····私、
三人の共通点。それはこの『
事故に遭う前、あのカフェで。
つまり私たちと
『明日は
本編のイベントも改変されないとは言い難い。現にあのお茶会も全く違う結果になった。
「本来ならその後はとんとん拍子でふたりの婚姻が進んで、恋愛イベントと
私と
でも彼が"好きなひと"ってそもそも
現実セカイで忘れられないくらい、好きなひと。
それが"彼"なのかとうかを、知ることができたら、本当の意味でハッピーエンドにできるのに····。
「よし。できることは、とりあえずぜんぶやってみるしかないわね!」
『強制排除。転生者の排除。つまり、あなたの物語の終わりを意味します。排除後のキャラは本来のゲームのキャラである
イーさんは抑揚のない声で質問に対する答えを提示する。それは機械音声にしか出せない淡々としたもので、逆に現実感がなかった。
「とにかくシナリオをクリアするしかないってことだけは、わかったわ」
もちろんペナルティにも気を付けて。多少のネタバレでは一発アウトはないってことも、
『どうか自分自身を大切に。主人公補正がある限り最悪の結果にはなり得ません。あの場面での
主人公補正。それはメタ的な要素で、所謂、主人公だから○○しない、主人公だから○○にならないという創作関連の俗語。最近はそうでない作品もあったりするけれど、途中でそんなことが起これば物語も終わってしまうわけで。
このゲームにおいては、ヒロインに関してその補正がない。
そうなると、
「
そんな自問自答をしていると、背中越しにある扉をとんとんと軽く叩く音がした。
その声の主は
「ハクちゃん、どうしたの?」
扉を引いて
もはやなんでも悩みを話せる、頼れるお姉さんといっても過言ではないわ!
「そっちの部屋でお話しましょ? ここはひとりなら快適だけどふたりだと狭いし」
近い内に完成する予定の同人漫画やイラストを見られたら、色々と都合が悪いし。
改めてヒロインが生活している広い部屋の方へと移り、椅子にそれぞれ腰掛ける。丸いテーブルを挟んで反対側にいる
「明日、というかもはや今日ですけど····
所謂、ゼロ日婚というやつだけど、このセカイの貴族や皇族の間ではたぶん当たり前なのかも。そもそも好き同士ですらなくても婚姻関係は結ばれてしまう。親同士の繋がりだったり、権力だったり、政略結婚じゃない方が珍しい気も。一般人ならともかく、相手は一国の皇子で次期皇帝候補なわけだし。
「ハクちゃんは、
「そ、そうじゃなくて····その、好きになろうと努力はしてます。でも、
これは····どう考えても勘違いしているのでは?
でも
あの時。カフェの前から逃げ出した彼を見た時、私と
でもあの乙女ゲームを通して告白しようと決心した矢先、あんな事故が起きた。結果、私たち三人はまとめてこのセカイに転生してしまったのだ。
(
あんな風に特別扱いされているにもかかわらず、その愛を素直に受け入れられない理由。それこそが、
「ねえ、ハクちゃん。ハクちゃんの本当の名前、
「え? ああ、そういえばいってないかも、です」
「だったら名前を教えて、あなたの本当の名前で呼んでもらえばいいと思う。
私の提案に、
もしかして真実を知るのが怖い?
そんなことはないから、絶対に大丈夫!
だって
「任せて! ふたりの恋は、私が絶対に成就させてみせる!」
「ええっ⁉ それってどういう、」
困惑している
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