3-9 白き龍の民
隠しルートの暗殺者集団"梟の爪"は、その殆どの者たちが特殊な力や見た目を持つが故に、迫害されたり親に捨てられた者たちの集まりだった。
それは生まれながらにして能力を持ってしまった者たちへの間違った救済。自分たちをひととしてみない者たちへの復讐でもあった。
もちろん、強制しているわけではない。望んだ者たちがその手を血で染めている。
「
それは
幼い頃の
万が一のためにもうひとり女の暗殺者を忍ばせ、
「ハク、落ち着いて。君ならきっと、大丈夫。あいつの言葉に惑わされないで、」
すべてが嘘というわけではない。
『どうしてあんなことを言ったんです? ペナルティを無視して助言するなんて。あと二回で強制排除確定です。場合によってはもう後がないですよ?』
ナビは呆れ半分、心配半分で俺に問いかける。
俺はあの時、絶対に言ってはいけないことを口にしたが、なんとかペナルティひとつ分で済んだようだ。ペナルティが付くことは予想できたが、それでも"
「ハク、聞くな。そいつの言葉は、ぜんぶ嘘だ」
「駄目だ、見るな!
あのふたつの台詞は本来存在しないもの。
ゲームはフィクションだから見ていられるが、それが現実に起きている今の状況では、あんなの、トラウマでしかない。
微かに震える
「数日間だけど、
「ちょっと待って····どうしてそうなるんだ?」
とん、と胸の辺りを押されたかと思えば、今まであったぬくもりが離れていく。同時に、
「それでなにをするつもりだ?」
ナビゲーターはどう伝えている?
あの言葉は、まるでもう二度と戻れなくなるような、そんな言い方だった。
『駄目ですよ、
キラさんには俺のペナルティが画面上で見えているのか、それともナビゲーターが伝えたのか。
これ以上は止めた方が良いと言われているように感じる。それでも、俺は····。
「ハク、誰も殺すな。君は人殺しなんかじゃない。昔も今も、その手は真っ白なままだ。なにも変わらない。奴らを
「倒す? ····
「そうだ。そしてぜんぶ終わらせて戻ったら、
「こ、こんやく····って!? ど、ど、ど、どうしてそうなるの⁉」
真っ赤な顔でこちらを振り向き、
「うん、大丈夫だ。君は大丈夫。だから安心して。私は君を信じている」
ペナルティがあとひとつ付こうが問題ない。
この笑顔を曇らせるくらいなら。
『はあ。本当に、どうしようもないくらい馬鹿なんですね』
ナビがわかりやすく大きなため息をついた。
「
「
ああ、と俺は頷き、キラさんの前に移動する。キラさんは俺の衣の袖を掴み、なにか言いたげだった。
「あなたの気持ち、きっとわかってくれたと思う」
「そうでないと、困る」
あそこまではっきり言ったんだから、その意味はわかっているだろう。
視界を塞がれた衣を冷静に投げ捨てたのはいいが、消えたふたりを目で追おうとしたその瞬間、後ろに回り込んだ
「すごい! 息ぴったり!」
キラさんは目の前で行われている怒涛のアクションシーンにテンションが上がっているようだ。あれは
「白き龍の民。やはりお前は、トクベツだ」
白き龍の民は、少数民族。希少な民で、もうほとんど存在しないと言われている。力が覚醒すると白銀髪になり、天仙に近い力を秘めているという。天仙、つまり天界の神に等しい力を持つ者。それがなぜこの青龍の国にいるのか。
その秘密は、
次々と倒されて行く暗殺者たち。しかし数は多く、ふたりだけでなんとかするには骨が折れる作業だろう。俺とキラさんは少しずつ入口の方へと後退る。それに合わせるように
「すみません。先約があるので、あなたとは一緒にはいけません」
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