1-7 白戀華~運命の恋~とは? ※ネタバレ注意


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 ※この回の内容は、ゲーム本編のネタバレを大いに含みます。ネタバレOKな方のみ、先にお進みください。


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 この『白戀華はくれんか~運命の恋~』は、低予算ながらもしっかりと作られた、選択肢によって物語が変化するノベルゲームである。


 主人公の育成システム等はないが、物語を進めていくとスキルが解放される。場面によって正解のスキルを選択することで目の前の問題を解決したり、分岐条件となったりするのが、このゲームにおけるスキル要素だ。


 とにかく最適な選択肢を選び、攻略対象の好感度を上げていくことでハッピーエンドを目指すか、主人公の目的を達することで真実トゥルーエンドを見るか、あえて間違った選択肢を選び続けて悲惨なBADエンドを回収するか。遊び方や回収するエンドの順番はひとそれぞれだろう。


 このゲームのシステムについての説明はこの辺りにしておいて、ここからは『正規ルート』についてざっくりと解説しよう。


 正規ルート、通称『青藍せいらんルート』は、この物語の軸となるルートである。このルートのエンドを全回収することで、次の攻略対象が追加されるのだ。申し訳ないが、ここでは追加の物語の説明は割愛させていただこう。


 この乙女ゲーム『白戀華はくれんか~運命の恋~』は、原案の渚、シナリオの千夏せんか、絵師のキラ、ゲーム制作者でありフリーのクリエイターであるSAI、他、有志によって作られたノベルゲームである。


 物語は"ある目的"のために花嫁候補として潜り込んだ主人公、 雲英うんえい視点で始まる。


 ひと月ほどかけて選ばれる第一皇子の花嫁。


 それは後の皇帝となるだろう第一皇子に相応しい人物を選ぶための、重要な儀式のひとつであった。都中から集まった、一定の条件を満たした花嫁候補たち。その中からさらに選ばれた女性たちが、後宮の広間に集められていた。


 その数、二十人。この国の妃となる者は、身分や家柄よりも人間性を求められるのだ。現に、今の皇帝の王妃も庶民の出である。何人かいる側室は名家のお嬢様や官吏の娘もいたが、彼女たちもまたこの儀式で選ばれた者たちであった。


 儀式によって選ばれる花嫁の人数はその時によって異なる。選ぶのは後宮の代表として儀式を行う妃嬪ひひんであるが、稀に皇子に気に入られ花嫁となる幸運な者もいる。その幸運な花嫁は優遇され正室となり、他は側室となる。


 元宮廷医官である父親が二年前に何者かによって殺された。母親はすでに 雲英うんえいが幼い頃に亡くなっており、父親が唯一の家族だった。雲英うんえいは最悪の事態を恐れた父親によって、賊がやって来る前に床下に隠され、なんとかひとり生き延びる。


 そもそも父親が宮廷医官を辞めることになった本当の理由も知らされておらず、それこそが殺された原因なのではないかと推察した雲英うんえいは、王宮を探るために花嫁候補として潜り込むことを決めたのだった。そんな中、あの事件が起こる。


 皇子が花嫁の中に潜んでいた暗殺者によって襲われ、掠り傷だったが即効性のある猛毒に侵され倒れてしまう。医官たちは離れた所におりすぐには来れない状況で、 雲英うんえいは自分の身分を明かしよう妃に皇子の処置をさせて欲しいと訴える。


 すべてはよう妃が企てたことだったが、その訴えを退ければ自分が疑われると思ったのだろう。皇子に何かあればお前も罰を受けることになる、とひと言忠告しつつ、処置を許可した。


 そしてなんやかんやあって皇子は助かり、主人公との関りができる。皇子は望みをなんでもひとつ叶えると約束し、雲英うんえいはそれに対して少し戸惑ったが、父親の死の真相を知るための手伝いをして欲しいと伝えた。


 こうしてふたりは協力して事件の真相を追うのだが、宮廷医官を辞めさせられた原因や、過去の誘拐未遂事件、皇子の暗殺事件も含めてどんどん繋がっていき、最終的にはすべての謎が解き明かされ、黒幕は制裁を受けるという真実トゥルーエンドが待っている。


 真実トゥルーエンドではなく、皇子との恋愛をメインに物語を進めていくと、色々な恋愛イベントが発生して花嫁のひとりに選ばれ、正室として後に皇帝となる皇子の妃になる。これはハッピーエンド。


 そしてなにも解決せず、皇子との信頼関係も中途半端な状態だと、最終章の前によう妃が仕向けた暗殺者によって殺され、BADエンドとなるのだ。


 マルチエンディングと呼ばれる、いくつかのエンディングが用意されたゲームだが、そこまで複雑な選択肢はない。


 さまざまな場所を探索することで手に入るキーアイテムがイベント発生の条件だが、どのタイミングでなにを使うかによって物語が進んで行く。そこで手に入るのがスチルイラスト。美しいイラストは特別な場面を切り取ったもので、イラストを回収するのもプレイヤーの目的のひとつといえよう。


 そしてここからは『隠しルート』の概要説明をさせてもらおう。


 このルートはもはや乙女ゲームではなく、BLゲーム。本編は乙女ゲームが好きな友人のために、彼が好きな要素を盛り込み、好きそうなキャラクター、イラスト、物語の展開を詰めに詰めたのが『白戀華はくれんか~運命の恋~』である。この別枠のルートは、原案である渚が自分の『好き』を告白するために作ったものだ。


 このルートの主人公は皇子である青藍せいらん。本編でちらっと出てくるが深くは掘り下げない、幼い頃の誘拐未遂事件の真相がここで明かされる。


 その誘拐未遂によって、当時傍にいた 雲英うんえいの父が責任を取らされることに。


 皇子は未遂に終わったのだが、実は同じ日に皇子に間違われて誘拐された幼子がいたのだ。


 幼子の両親は身分が低く、その件に関しては既になかったことにされており、現在は両親共に行方知れずとなっている。


 その幼子こそ、皇子の学友であり幼馴染であった白煉はくれんで、後に暗殺者として出逢うことになる白髪の美しい少年なのだ。


 あの暗殺未遂事件の後、皇子を庇って毒に侵された白髪の花嫁は、本編の主人公であった 雲英うんえいの適切な処置と青藍せいらんの看病によってなんとか回復した。


 しかし目を覚ましたのはいいが、どうやら毒のせいで記憶喪失になってしまったようで、自分の名前すらわからない状態に。とりあえず名前がないと不便ということで、青藍せいらんはその者をハクと呼ぶことにした。


 あの暗殺者と何か関係があるのではないかと思いつつも、青藍せいらんはハクを客人として自身の宮に住まわせ、記憶を取り戻す手伝いをすることになる。


 花嫁選びの儀式はあの騒動によって延期となったが、 雲英うんえいとは関りができ、時折ハクは彼女との信頼関係を深めているようだった。


 その珍しい赤い瞳を目にした時から、青藍せいらんはかつて自分が想いを寄せていた、行方知れずの幼馴染ではないかと疑い始める。

 

 そんな中、ハクが女ではなく男であることがわかるのだが、青藍せいらんは戸惑いつつもそれに関して罰することはなかった。


 そこから物語は加速していき、ハクを取り戻そうとする暗殺集団の頭領が出てきたり、他の皇子たちに興味を持たれそうになるのを回避したり、想い合っているのにすれ違ったりしながら、最後には友愛関係ブロマンスに落ち着くという真実トゥルーエンド。


 ひたすら恋愛イベントを回収し、好感度をMAX。記憶を取り戻した白煉はくれんを、皇帝になった青藍せいらんが正室として迎えてハッピーエンド。


 BADエンドは、好感度が足りず、真実もわからず、記憶喪失を装っていた暗殺者、白煉はくれんによって殺されてしまうのだ。


 青藍せいらんの死を目の当たりにした白煉はくれんは、かつて自分が皇子の身代わりとして攫われ、酷い目に遭った記憶と同時に、幼い頃の懐かしい記憶が次々にフラッシュバックする。


 すべてを思い出した白煉はくれんは、冷たくなっていく青藍せいらんを抱きしめ、自害するという最悪の鬱エンドが待っているのだ。



 ふたりの物語はどのエンドに辿り着くのか。

 彼らの歩む不確定な物語の続きを、どうぞお楽しみください。



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