第3話 龍の導
2022年1月13日の朝、康平は窓の外に目を向けた。そこには、普段とは異なる驚くべき光景が広がっていた。空は晴れ渡り、遠くの山々がはっきりと見える中、一条の巨大な龍の形をした雲が、淡路島の方向から吹田の方向へとゆっくりと動いていた。その龍の雲は、まるで生きているかのようにうねり、太陽の光を浴びて金色に輝いていた。
康平はその光景に息を呑む。彼にはこれがただの自然現象ではなく、何か特別なメッセージのように感じられた。アヌビスとの夢の出来事から数週間が経ち、彼の心には変化が訪れていた。不安や恐怖を感じることが少なくなり、代わりにこのような奇跡的な光景に心を開くようになっていた。
「これは…導かれているのか?」
彼はグディーを連れて、その龍の雲を追いかけるように外に出た。冷たい空気が肌を刺激する中、二人はいつもの散歩コースを逸脱し、龍の雲が進む方向へと歩き続けた。道中、康平は自分がただの散歩をしているのではなく、何か大きな流れの一部に身を任せているような感覚を強く感じた。
その日の夕方、龍の形をした雲は徐々に形を変え、最終的には消え去った。しかし、その光景は康平の心に深く刻まれ、彼の旅の意義を新たに確認する経験となった。夜になり、康平はその日見たものについて日記をつけながら、自分自身への問いを深めた。
「何故、龍なのか? 何故、今なのか?」
翌日もまた、康平は同じ時間に同じ場所へと向かった。すると、まるで前日の出来事が嘘であったかのように、再び同じ龍の形をした雲が現れた。今度は名古屋方面から吹田の方向へと流れていた。これが偶然の一致とは思えず、康平はこれが何かのサインであると確信する。
「龍が、戻って来てくれた…。これは、俺に何かを伝えているんだ。」
その夜、康平は眠れなかった。彼は一人、家を出て再び夜の街を歩いた。空を見上げると、星々が輝いている中、心の中で何かが強く響いた。
「俺の旅は、ただの旅ではない。これは、自分自身と向き合う旅…。そして、何か大きなものへと導かれている旅だ。」
康平は、龍の雲が示す方向へと歩き続ける決意を固めた。彼にとって、龍は単なる雲ではなく、自己発見へと導く神秘的な存在となっていた。その夜の散歩は、彼の旅に新たな章を加えることになる。
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