第49話 不死鳥の罪
俺が戦地に行くことを話すと、正子は酷く反対していたが、やがて「待っていますね」と、か弱い声で自分に言い聞かせていた。
結婚の儀式は、俺が戦地から帰り、正子が子どもを産んでから、俺は生き永らえて帰ってきたことの証に行うことになった。
正子には「生きて帰ってこなければ意味がないです」と言われたが、俺は「必ず帰るよ」と言った。
そして、その日は来た。
俺は軍服に身を包み、駅に向かった。正子は泣きながら自分のお腹を撫で、「光生さん、いってらっしゃい」と言った。俺は
「行ってくるよ」
とだけ言って、正子から貰ったお守りを握りしめ、汽車に乗った。
「行ってきます」
そう呟いた声は、汽笛の音にかき消されたのだった。
正子のお守りともう一つ大事に持ってきたものがある。ドイツでルーシーとセイとで撮った写真を入れたロケットペンダントである。
それから正子は、東京の無差別爆撃に巻き込まれて、お腹の子どもと共に埋葬されたという手紙が届いたのは戦地に赴いてから約三ヶ月が経った頃くらいであった。
突撃に向かう最中、「これは死ぬな」と思い、ロケットペンダントを強く握りしめて、自分の遺品を持って行ってくれる時に、彪吾さん宛にと包んで、バッグに入れた。
銃弾の嵐の中、前に進んでいると胸に銃弾が当たり刺さるような感覚を覚えたが、そのまま進んだ。血が出るのも気にせずに前に進む。周りの兵が驚いていたが、構わずに進んだ。
それからすぐ、俺は敵兵にもう一発撃たれたのだった。
手当てを受けはしたが、助からないことはわかっていた。
俺は自分に
「これは自分への罰なんだ」
そっと吐血しながら小さい声で言って、笑った。
最後に聞こえた音は、俺とルーシーとセイで撮った写真を撮る時のシャッター音だった。
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