第18話 留学準備
準備が整うまでに春になってしまうだろうと言われた。「それでも構わない」と返事をして準備をした。
今年の冬は長く感じる寒さである。雪が降る度に積もり、溶けていく。
晴れた日の夕方。元基さんと一緒にスーツを新調することにしていた。
今まであまり気にしていなかったけど、本科に入る時に買ってもらったものを、二、三着そのままずっと使っていただけだった。
だから、これを機に新しいものにしようと決めたのだ。
留学先では和装ではなくて洋装を着用することになるためだからだ。
元基さんが着るものを見繕ってくれるということで、服屋に向かった。
俺はスーツを着て店に入る。店内を見て回るった。
数分経って
「あ、あれいいんじゃないか。あ、ここのやつもいいやつだぞ! あと、これなんかもいいんじゃねぇか?」
まるで自分の子供のように扱ってくる元基さんは、俺より先に気に入ったものをポンポン見つけていっていた。
「元基さんの好みのものを選んでください」
「どうして?」
こちらを振り向いて聞いてくる。
「こちらで歳の近い方で仲良くしていただけた方は元基さんだったので。学校の同期はそこまで仲が良かったわけではないですし」
元基さんは
「俺以外にも仲良い友人を作りなよ」
苦笑いはしていたが、納得してくれたようで笑顔を見せてくれると
「じゃあここにあるのにしよう!」
と言って店員を呼ぶ。その後は、会計へと向かっていった。俺は元基さんを追いかけるような形で追いかけていった。
それから西洋の食べ物を食べるということでパンを食べに行くことになった。俺が行ったことがある場所へ行こうとしたが、どこに行ったらいいのか分からなかったので、元基さんのおすすめの場所へ行くことにして歩き出した。
大通りに出て歩いていく中、「そういえばこっちの道通らなかったよな」「そうですね、用事がないので」などと言い合って、帰りには星空を見ながら道を歩いた。
この道を通るのも、後ちょっとなんだなと少し寂しくなった。
「結局、光介のこといじめてた奴らはどうなったんだ?」
元基さんは俺の側を歩きながら、そういえばと思い出したように聞いてきた。
「あぁ、相変わらずですよ。先生も何も言わないですし」
「そうか……ま、相手が動かない方が俺はいいけどな」
ただ単にいじめていた人たちがどうなったのか気になっていたらしい。
確かに、何もしてこないのはいいことだと俺も思った。先生にもそういった報告をしているし問題はないだろうと感じていたからだ。しかし、油断しないに越したことはないので気を付けることにしようと心に誓った。
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