第3話 君にとっての星
監督は、脚本を読む俺を待っている間、どこか落ち着かない様子であった。
「どうかしましたか?」
俺が聞く。すると監督はこう言ったのだ。
「君は……僕の映画を見に来てくれるのかい?」
俺は少し笑いながら答える。
「はい、もちろん」
そんな俺の答えに安心したのか、彼はほっと胸をなで下ろしたように見えた。
「祖母は、祖父のことどう思ってうるのか聞いてみます。やっぱり、そういう話はタブーになっているっぽくて」
俺はそう言いながら、脚本を読み進めた。
「ありがとう」
監督は俺に頭を下げた。
脚本を読んでいる時、元々の祖父がモデルの作品があるのを教えていただけた。監督が書いた物で、『星のものに』という作品だそうだ。
「その作品は、僕の祖父をモデルにした作品なんだ。だから、今度は君のお祖父さんである光生さんをモデルにさせてほしいんだ」
と彼は言う。
「光生と監督のお祖父さん、何か関係持っていたってことですか?」
「ああ、
彼は、『星のものに』という作品のあらすじを話し始めた。
「主人公である彪斗が生き抜いた明治、大正、昭和で起こった出来事を日記にしてまとめ、孫に話している対話型の進め方をしている」
というドラマらしい。
「僕は、そのドラマの最終回で光生をモデルにした教師をキャラクター設定した。まあ、でも重大な秘密に触れようとして少し話を変えたがね。今回は、フィクションということで世に出させてもらうが、がっつり真実に沿って描いていく」
俺は、そのドラマを楽しみにすると約束し、祖母の説得材料を手に入れた。
脚本を読み終えると、監督は目を輝かせながらこう言ってきた。
「スバルくんという日本名の響きがとても気に入っているんだよ」
と。父も同じセイという名で、『星』という感じに由来しているらしい。
「天文学でも学んどけば良かったですかね。名前の通りに生きられてたでしょうかね」
と俺が言うと、監督は顎に手をやり考えるしぐさをしながら言った。
「君にとっての星は、何なのかい?」
その答えはすぐに思いついた。
「よくわからないです。まだ模索している段階ですね」
と言って少し笑う。
そんな俺に監督は優しい顔をして見つめてきた。しかし、俺も質問したくなったので聞いてみる。
「監督にとっての星ってなんですか?」
そう聞くと彼は、また顎に手を当てながら答えた。
「僕にとっての星は……そうだな。『光生』だよ」
と、俺の祖父の名前を口にした。監督は少し照れた顔で話を続ける。
「僕にとっての光は、君の祖父だ。今風で言うと光生オタクなのかもしれない。ずっと、僕の祖父から話を聞いていたからなのか、考察に飽きない人だ」
俺は、その言葉が胸に響いた気がした。そしてすぐに監督は
「長居したね」
と言って席を立ったので、俺もそれに合わせて立ち上がる。
彼は俺に手を振りながらこう言ったのだ。
「じゃあ、また連絡させていただくよ。またね」
俺は、はい! と返事をし、監督がカフェから出ていった。
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