第3話
[ 魔王を始末して世の中を救ってください ]
勇士について逃げる途中でも、視野の片隅にあるこのメッセージは目立ちました。
この世界が私のゲームである<LOST WORLD>の中の世界だということを悟らせる文字でした。
他にも私のことを聖女と呼ぶとか、現代というには曖昧に状態の悪い町の環境を見て大体知ってはいました。
確信を持つようになったのは勇士たちだと主張して訪ねてきた彼らが差し出した石ころ。
設定上、運命さえあれば石を拾ってゲームの中の誰もが「勇士」になることができました。
そうすることで「勇士」という名にふさわしい力を得ることができるのか?
この部分に対する答えは毎回曖昧でした。 ゲームでも勇士の石はきちんと作動して効果が出ることはまれだったからです。 勇士と名付けても魔族や人々に良くない関心ばかり引かれて大変だったしです..
なので後になってからは、ほとんどそのまま捨てていたと思います。
そうしてこそ、魔王の前にでも行けるほど強くなることができたからです。
もちろん今は-
魔王でも魔神でもするよりは、私が普通に暮らせることがもっと重要でした。 もし分からない変数があるなら、何でも用意しておくんです。
それで死んだ勇士たちの石をポケットに集めておくことになりました。
ポケットに入っている勇士の石の数は6個。
計6人の勇士が死にました。 期待感と同時に、今回は大丈夫なのかという疑問が同時に湧き上がるのも仕方のないことでした。
目の前までやってきたのはそのうちの2回ぐらい。
3回は大将というやつが外で殺した後、死体を直接引っ張ってきて見せてくれました。
初めて勇士の死を目の前で向き合った時は、この世界の母親が死んだ時を見たように怖くて何も考えられませんでした。
しかし、一度、二度、経験してみると、四番目の勇士という人の死に直面した時は、「汚い」としか考えられませんでした。
「汚い。」
私も自分が自らこの考えをしたということに気づいた瞬間、戸惑いました。
人の死体を見て、怖いとか耐え難いとかではなく。
汚い、ラ。
今回はそんな気がしないでほしいですね。
「大丈夫?あまり表情が良くない。」
勇士が私に尋ねました。 私は想念から目覚め、私たちが今人通りの少ない路地の間にいることに気づきました。
こんなに外まで出たのはいつぶりでしょうか。
手首に感じられる鎖の感触もなく、こうじが生えるベッドも、雨が降りすぎて半地下で溺死する心配もありませんでした。
特に溺死は良い経験ではありません。 胸がいっぱいで、スライムが耳から鼻へ口に入ってくる感覚が不快です。
「大丈夫です。大丈夫です」
自分自身に催眠をかけるように、大丈夫だという言葉を呪文のように覚えました。
期待感は沈みゆく精神を無理やりに捕らえるための防御機材。 今回は大丈夫かもしれないという自己暗示ですね。
それでも毎回勇士たちが訪ねてくるたびに、前回よりはよくなりました。
入ることもできなかったのが3回。
部屋に入って死んだのが2回。
一番最近、昨年私を訪ねてきて助けようとした勇士が私を外に取り出したのが一度。
今回を含めると2回目です。
本当に。
今度こそ、この地獄のような村から抜け出すことができるかもしれません。
「しっかりしろ。 ポケットに石ころの音がよくする。」
勇士の言葉に気がつくと、ポケットの中に集めておいた勇士の石を無意識に触り続けていたことに気づきました。
「あ、はい。分かりました。 しっかりします。」
まずは勇士の言う通りにしっかりしなければなりませんでした。 不安と期待感が入り混じって妙に浮かれて、しきりに雑念に陥るといいことはありませんでした。
もちろん、この前また捕まって戻ってきたのが私のせいではなかったんですけどね。
私の記憶に外に私を連れて出てきた敵の勇士は検問で引っかかりました。 自分は強いから心配するなと言っていた男でした。
その時も同じように期待していました。 雨も降って、今みたいに手をつないで。 もうこれ以上苦しまなくてもいいと言いますね。
あ.
これ以上考えないでください。 ここに来て閉じ込められて過ごしてばかりいると、しきりに否定的な方向に考えが漏れますね。
「パーティーメンバーたちが待機することにしたが···」
勇士が路地の前でちらちらしながら言いました。 どちらもぼろのようなローブを被っている状況ですが、勇士の方は派手な髪の色のため、少し目立っていました。
「来た。」
勇士のその言葉と共に突然目の前にローブをかぶった二人が現れました。
「ミライ、エル。待っていたじゃないか。」
「はぁ、はぁ。透明な魔法がどれだけマナを消耗するのか分からない?」
「行きましょう、ピーク。 聖女様への紹介は終わってからでもいいと思います。」
二人とも顔が見えないようにローブをかぶっていました。 紹介してくれたとしても、誰がミイラでエルなのか区別するのは難しそうでした。
「手をつないで。」
私がぼんやりと立っていると、勇士は透明魔法はついていなければならないと私の手を握って引っ張りました。
「アヤッ…」
勇士が引っ張りながら力の調節に失敗したのか、左肩が抜けるように痛かったです。
このような力の差から生じる些細なことも、結局すべて私が弱いせいではありました。
今の私は聖女というタイトルがあるだけで、一般人よりも劣る状態。
ゲームで言えば、役に立たないキャラクターでした。 だから、このように振り回されることも甘受しなければなりません。
肩が痛いのは結局午前7時になればよくなるでしょう。 今は些細な病気より、この人たちのプランに従わなければなりませんでした。
「しっかり入ってきて。 できた。ミライ。 詠唱して。」
「分かった。ああ。 勇士の石を拾ったと言ってああしろこうしろ…」
「静かにしてください、ミライ。 都会で暮らしているので知らないようですが、こんな所で部外者であることがばれたら死にます。」
私がしっかりくっつくと、ミライと呼ばれた体型の小さい人が透明魔法を詠唱しました。 この世界の魔法は効率があまりよくない方なのに、魔法を習うなんて不思議です。
「もう少し来て。」
勇士が私を確実に群れの中に引き寄せました。 どうも透明な状態で通う 他の人とぶつかって見つかることを心配したようです。
雨の日にもかかわらず出ている人がいることはありました。 私たちはそれを避けるために気をつけて動きました。
それでも念のため、できるだけ人の少ない道に沿って検問所の前に到着しました。
この前はばれてあまり逃げることもできなかったです。
そうやって引っかかって、隊長に勇士の頭が爆発するのを見たりもしました。
しかし、その時とは違って透明魔法のおかげで検問所を守る人たちは私たちがいることも知りませんでした。
ミライという人が途中で床に固まったスライムのせいで足を踏み外して音がしましたが、それもハプニングでしたね。
慎重に足を動かして検問所の外に抜け出す瞬間でした。
-クルル。
と獣の声が聞こえました。
雨の降る日は、村の外の荒れ地の怪物たちがいつもより暴れるからです。 正確な理由はわかりませんが、ゲームでは侵食された□□□と表記されていましたね。
あれは侵食された巨大オオカミぐらいでしょうか。
検問所が目の前なので、ただ透明な状態を維持したまま走るのが正解でしたが-
「きゃあああああああ!」
その巨大オオカミが飛びかかるのを見て、ミライが悲鳴を上げました。
同時に透明魔法も解けたし。
「何?部外者? あれは聖女じゃないの?」
検問所にいた人たちも驚いてこちらを眺めました。
「エル!ミライを!」
「分かりました!」
勇士はミライをエルに任せて私を抱きしめました。 巨大なオオカミは悲鳴を上げて飛び出したミライについて行ったようで、勇士は私をそのように抱いたまま村の反対方向に走りました。
「聖女が逃げる! 隊長に知らせろ!」
勇士は素早く動きました。 前回の勇士より早いか、やればよくわかりません。 私がとても弱くて誰がどれだけ強くてどれだけ弱いのか区分するのが難しいほどです。
「私たち逃げられるんですよね?”
「うん。心配しないで。」
単純速度だけ速いのであれば、抜け出すことができますか?
この前のあの勇士も、橋は検問所を守る人たちより早かったんですけど、結局追いつかれたんですけどね。
「でも、その大将がかなり早くて······ 逃げられるかどうかは…」
一応この前より遠くに来たことはあります。
今、勇士が走っているこの地形は初めて見る場所ではあるから。 もしかして、知らないと思ってもいいですか?
「心配しないで、スピードは自分-」
勇士はかすかに微笑みながら話そうとしました。
ドーンと大きな声を出して、誰かが私たちの前に降下しなかったら、かなりかっこよく見えたはずなんですが。
「-あったのにね。」
勇士の口元にあった微笑が消えました。
目の前の男性は、これまで私をその監獄に閉じ込めていた主犯。
ここの隊長であり、6人の勇士スレイヤー。
多分ゲームだったらあの人の頭の上にそんな称号がついていたはずです。
「殺生をするのは嫌だったが。 こうやってあえて追いかけてこないといけないの?」
勇士スレイヤーは首を横に振りました。
「そこに同じ人間じゃないか。 敢えて魔王を討伐するのに必要な存在である聖女を閉じ込めておかなければならないのか。」
その言葉に無言で微笑む勇士スレイヤー。
「聖女。あいつ、話せないの?」
もどかしかったのか勇士が私に聞いてきました。
「話すのを見たことがないですね。」
自分の部下たちとどんな風に意思疎通をしているのかは知りませんが、本当に別に何か言ったのを見たことはありませんでした。 あいつはいつも口をつぐんだまま行動しました。
私の考えでは、そこまで話さなければ普通の魔族なんですが。
「じゃあ、大声を出して自分の部下たちを連れてくる心配はしなくてもいいね。」
勇士はむしろ良いというように勇士の石を取り出しました。
「アグニ!あばれよう!」
そう言うや否や、勇士の石から花火が打ち上げられました。
感情表現をあまりしない大将のやつも、目を少し大きく開けるほど驚きました。
私も今まで見てきた勇士たちが石をあんな形に変えるのを見たことがなかったので驚くしかありませんでした。
「行くぞ!」
完成した形は炎の剣。
勇士が床を蹴ると、土ぼこりが立ち上って-
チャン!
あっという間に勇士スレイヤーとぶつかりました。
「いや、腕に何をつけておいたんだ!」
勇士スレイヤーは腕で剣を止めたが、勇士はその流れに乗り、そのままスレイヤーを追い込みました。 勇士が剣を振り回すたびに後ろに押し出され、燃え上がる炎で肌が赤く日焼けしました。
その前の勇士が対応もできずに頭が爆発したことを考えると、大変なことでした。
いや、すごいレベルじゃなくて-
信じられないほどすごいことです。
「終わりだ!アグニ!」
アグニ、と叫んだことに呼応するように剣の炎が高く跳ね上がりました。
スレイヤーはその剣を見てかすかに微笑みました。
笑顔?
自分が死ぬ寸前なのに笑顔?
そんな気がしたが。
「死ね!」
私の疑問を終わらせる間もなく、スレイヤーは剣の炎にそのまま飲み込まれました。
その状態であっという間に焼けてしまい、真っ白な灰になってしまうまで数秒。
なぜそんな微笑を浮かべたのか理解できないほど虚しい結末でした。
「何だよ、大したことないね。」
その通り、本当に大したことではありませんでした。
これでいいのかと思うほど何の抵抗もなく倒れたスレイヤーの跡を眺めながら-
変な気分になりました。 私の状況が解決されて嬉しいとか、あまりにも簡単に解決されて虚しいとかではなく-
不安でした。
「その表情はどうしたの。 行こう。ミライはまだ追いかけてるよ。」
「いいえ、違います。 しっかり整理しないと···」
不安でした。 とても不安でした。 このまま終わるはずがないということです。
あいつは明らかに-
「…搾取ばかりされて気が抜けてしまったな。 そういうこともあるよ。 僕がおんぶしてあげる。」
「いいえ、仕上げを。 しっかりとした仕上げを」
仕上げをしなければなりません。 きっと、こいつは魔族だろうに。 こんなに簡単には死なないのに。
勇士は私の反応に表情をしかめました。
「まったく。ハズレもこんなハズレ。 聖女がこんなに気が抜けていたら、どうやってクリアしろというんだ。」
もぞもぞ。
灰がゼリーのように固まり始めました。 まるで何か沸き上がるように丸くなって、新しい形に変わっていく姿でした。
「あれを、あれをなくさないと!」
勇士は私が叫んでも聞かず、面倒くさいというふうに私の左腕を引き寄せました。 腕が抜けるように痛かったです。
もぞもぞ。
「あれを…!」
「黙れ!」
勇士が私の方を振り向いて叫びました。
そしてようやくその後ろにある黒い「何か」を発見したように視線が止まりました。
「あれは-何?」
「魔、魔族…」
コアを完全に壊さなければ死なない魔族。
「あんなのがこのゲームにあったの? 少なくとも最初はなかったのに…」
勇士は後ずさりせず、自分の愛剣アグニを握ったままコアに向かって走りました。
あれが良い選択なのか悪い選択なのかはわかりません。
強いて言えば止められなかった私の選択が一番悪かったです。
そして、あれを私が止めることができたかな? すればそれも確信することはできないです..
ただその瞬間に。
すでに勇士が剣を持って走ることにした時点から-
『バカだな。』
勇士の死は防げなかったのです。
「え、え…?」
勇士は愚かな音を立て、コアから飛び出した巨大な口にそのまま食べられました。
ころころ、勇士の石ころだけが私の前に転がってきました。
…これはゲームエンドですね。
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