第2話
「... どこ…」
「忘れられた者が......です」
「...です?」
「世界を…一番……です」
「... 主人公···」
「... 残念......この世の聖女様。」
---
夢を見ました。
いや、夢だと感じるほど朦朧とした経験でした。
明らかに、私はトラックにはねられたのですが、完全に意識を失って死んだと思っていました。
そうだと思っていた私が再び目を覚ました所は天井が崩れ、雨漏りする部屋の中でした。
暗雲が立ち込めた空を背景に、ゲームのように「魔王を始末して世の中を救ってください」という文字が浮かんでいました。
泣いているのか笑っているのか分からない女が私を胸に抱いていました。
「ティア、ティア。」
彼女は同じ言葉だけを繰り返しました。
それが救いだと信じているのでしょうか。
それとも、すでに全身が化膿して死んでいく中で知らせたかったのが、私の名前が「ティア」というものだったのかは分かりません。
私にはただ残念だという感想ばかりでした。
どうしてこんなに他人の人生を渇望するのでしょうか。
どうしてこんなに自分を大切にしないのですか。
私は彼女が完全に膿んで泥になる直前、彼女に手を伸ばしました。
何かできるとは思いませんでした。
あまりにも残念だと思って伸ばした手で、本当に無意識に出た動きでした。
こうすればもっといいんじゃないかと思って、伸ばしてみた手。
「あ…あ…!」
その時、手から白い光が噴き出しました。
光は女性を包み込み、泥のようにぐちゃぐちゃになっていた肌が自分の色を、形を取り戻していきました。
嬉しいことでした。 名前も知らないし、顔も慣れていない女でしたが、消えかけていた命を再び起こしたのは、とても気持ちを浮き立たせたのです。
まるで―――
完全に消えた火種をよみがえらせたような達成感です。
「―――聖女···」
その達成感に無意識に浮かべた私の笑顔を見て、女はそう言いました。
---
人々は私を聖女と呼びました。
母親になる人はその事実を隠そうと努力したが、すべて死んでいった人が生き返ったのに知らないはずがないでしょう。
結局、私の存在は村全体に広がり、あらゆる病人が家に集まって治療を受けようと努めた。
治療してくれるのは仕事でもありませんでしたが、私の体が弱すぎました。
ちょっとした疲労感でも体調は崩れやすく、ひどい日は鼻血も流れました。 おかげで性力は莫大なリスクを背負わなければならないという誤解が付きましたが、人々は気にしませんでした。
本来、命が危険になると利己的に変わるものです。 私の体調が悪くて治療ができそうにないと言うと、母を殺すように苦しめました。
すると、私は見るに耐えられず、治療のために力を入れなければならず、体が疲労感を耐え切れず、一日中寝てばかりいました。
寝て治癒し、寝て治癒します。 人々をいくら治癒しても、病人の数は減っていません。
達成感よりは疲労感です。 疲労感よりは自己恥辱感です。 純粋に、毎日のようにあふれる病人に、私は痩せていく気分でした。
しかし、それでも止められなかったのは、人々が毎日のように脅迫してきたからです。 聖女という特異体質は、他人には黄金の卵を産むガチョウに過ぎず、他人を脅かす猛獣のようなものではなかったからです。
ただ、黄金の卵を産めと脅迫すれば、絶えずそうしてこそ生き残れる存在に過ぎませんでした。
自分たちの分の食糧がきちんと分配されなくても、昨夜、誰かがお母さまのお部屋に入ってきて、気をもんでも、自分にできることは何もありませんでした。
生き残るために癒すことです。 それでも生き続けるために努力していると、いつか良くなる日があるだろうと自らを慰めながら耐えました。
そうやって17回目の誕生日です。 希望は徹底的に壊れました。
村は別の村で略奪者によってひっくり返され、部屋にいた自分はそのまま拉致されました。 母は私が連れ去られるのを防ぐために努力しましたが、そのまま略奪者たちに切り倒されて死にました。
それが私の目の前で目撃した初めての死です。
吐き気は必死に耐えました。 しかし、この世界に来て、私に無条件の愛を与えた本当にママのような人だったのでその場面を目撃した瞬間、本当に何も考えられませんでした。
私は。
ずっと生きていけばいつかこの地獄から抜け出せると思っていた心が崩れました。
それで彼らに連れられて陵辱され、無理やり人を治癒する中でも何も考えられませんでした。
毎日毎日が自ら崩れていくことを観照する毎日でした。 生きていることに感謝するのではなく、自ら死ぬことができないことに対する絶望です。
鎖につながれたまま私という存在が削られていくのを眺めるしかない自分が―――
とても恨めしかったです。
何回か人が訪ねてくることはありました。 自分が勇士だと言って、聖女を救うためにやってきたという人たちです。
しかし、一度もまともに生きていった人はいませんでした。 私をここに閉じ込めた彼らは私の心が完全に折れてほしいのか、目の前で彼らの首を切りました。
そうやって一日、二日。 これが夢であることを願い、まだ視野の片隅に残っている「魔王を始末して世の中を救ってください」という字を見てやっと気を引き締めた。
毎回のように口の中の舌を私の歯の間に入れて、切ってみましょうか。 と悩みます。 ただ殺してしまえ、という気持ちで私を欲しがって来たやつらの凶物を断ち切ろうとしたこともありました。
しかし、状況が悪くなればさらに悪くなり、私の現実が変わることはありませんでした。 毎日向き合うようになるのは、いつもきれいな姿を維持する自分。 聖女の「恒常性」によって、体の状態だけは常に最上の状態を維持します-
呪われた身です。
たとえその容量が小さすぎて、午前7時という条件がついているのですが。 そういう恒常性と手に咲く光の花です。 人を害することのできない無害そのものである自分の力。
それこそ聖女の証でしたが-
私はそれがとても恨めしかったです。
何よりも毎日のように処女性が蘇ると言って、好きなその殺すものたちの反応が一番嫌でした。
その次は、死のうとしても強制的に蘇る呪いに近い「恒常性」です。 私が自ら崩れることを観照するしかなかったのです。
この恒常性が私に付きまとったせいが一番大きかったです。
「死にたいです。」
汚れた鏡に映った少女が小さな口を開けて言ました。
腰まで下がってくる黒髪です。
吸い込まれそうな真っ暗な目。
しみ一つない真っ白な肌です。
どんな美の正確な基準があるとすれば、まさにこの鏡の中の少女を前面に出してもいいほど美しい造形。
その鏡の中の少女が私でなかったら、どんなに良かったでしょうか。
あるいは、私が鎖につながれていなければ、どれほど幸せでしょうか。
体で自分で傷つけてみても、舌を噛んでも、なんとかまた形を整えるこの恒常性は-
なんで。
「…どうしたんですか…」
いつも自分を苦しめるのでしょうか。
「 恒常」は私にとってとても怖い言葉でした。恒常恒常恒常。「 恒常」は考えるのも頭が痛いほどでした。
撃ってます。
「雨…」
今日はそれでも雨の日でした。 この地の荒れ地には飲める水がなく、雨の日でないと水を手に入れることができませんでした。
それに加え―――
怪物たちがもっと活発に暴れる日でもあったので、各自自分の場所を守るのに忙しく、あえて私を訪ねてくる人はあまりなかでした。
本当にたまに治療してくれと来る人間たちだけがいるだけです。 あえて危険を冒して聖女の体を貪ると、雨が漏れてくる半地下の監獄には訪ねてこないのです。
この世界の雨は生きています。 正確な名称はスライムです。 この世界が私がやってきたゲームの中の世界だということを知ったのも、空から降るスライムのおかげでした。
窓の代わりに鉄格子がはめ込まれているところに雨が降り注ぎました。
床に積もった雨がうごめいて動きました。 あれらを集めてコアになる部分を壊せば飲料水として使えます。
しかし、放っておくと、そのままうごめくだけです。 あれをそのまま口の中に入れたら死ぬことはない、たまに亜種スライムが混ざる場合が危険なだけです。
そしてこの雨に影響されて暴れる荒れ地の怪物たちも問題ですし。 やはり一番の問題は暴れる怪物たちの方でしょうか。
とにかく、私にとっては最も平和な時期だということです。 誰の邪魔も受けずに、完全に私一人で休める時期です。 もちろん、寝て起きたら雨の間に怪我をした奴らがやってくるでしょうが。
休めるというのが重要なんです。 そして、このように休めるときはできるだけ何も考えないことが大切です。 訳もなく何かを考えた瞬間、否定的な考えは後を絶ちました。
ベッドに横になりました。 手首に冷たい金属の感触が感じられました。 適度に力があれば、私の手首を切るか、鎖を切るかですが。 力があまりにも足りませんでした。 私の手首を切ることも、鎖を切ることもできないくらいです。
あちこち手首を動かしてみると、骨が先に怪我をして、午前7時になるまで何もできず、じっと横になっていなければならなかった。
だから今はただ窓の外に流れてくるスライムだけを眺めるのが最高でした。
ピクピク。
無害に見える、完全透明なスライム。 その内部に落ちて、そのまま窒息していくアリがぷかぷか浮いていました。
手を伸ばして死んでいくアリを取り出そうとしますが。
ベッドに埋め込まれている鎖が私を遮りました。
「はあ…」
これが、国は人間の持つ生活圏の最大の範囲でした。 聖女と呼ばれ、そのような力を持っていますが、鎖が許さないと生かすこともできない体。 これでは聖女というのは何の意味があるのかと思いました。
精神はすでに擦れてしまって、 元々の「私」が誰なのかも分からないんですが-
私はベッドの下の腕を伸ばしました。 また考えていました。 結局考えというのは、後を絶たず、自分を食いつぶしてばかりでした。 頭を空にしなければならないのに空になりませんでした。
だから窓に髪の毛を長く伸ばした変な女が見えるのが-
うん?女性?
「おはよう?」
赤色に近いピンク色の髪を長く伸ばした女性です。 自分の肌の上にくっつく透明なスライムは何ともないのか、斜め下に顔を傾けて私を眺めていました。
私は今、幽霊を見ているのでしょうか。 妙な慣れ方で、無表情な顔。 私は何を言うべきか、言うべきことを忘れてどもりました。
「ム、ウ....ム...」
人をあまりにも久しぶりに見たせいですか。 最後に勇士を自任していた人間が訪ねてきたのが1年前でした-
当然の反応でしたが、当然のことよりも、人と会話するときに何を言い出すのが正しいのか、思い浮かばず、しばらくどもっていますから。
「もしかして、言えない?」
彼女はこう聞いてきました。 私はその言葉に首を激しく振りました。
「そうなんだ。よかった。 私は聖女が唖者になったと思って。、私は手話なんか知らないから。」
そしてやっとのことで。
私が何を言わなければならないのか思い出しました。
「誰ですか?」
彼女はそれを聞いて、無表情な顔で問い返しました。
「私?」
本当に私に聞くのが正しいのかということなのか、それともこういうことをなぜ聞くのかという感じなのか、見分けがつかないほどの無表情。 私はその問い返しにうなずきました。
「私、勇士。」
すると、返事が返ってきました。
勇士。
その言葉を聞くや否や、全身の力がぐっと抜ける感じでした。
「あれ、がっかりした?」
勇士を自任した人々が今まで多かったので、私がこの人も同じように信じられないのは当然でした。 むしろ勇士ではなく、他のことを自任するなら知らなかったでしょうか。 いつも変な石を突き出して自分を勇士だと主張する人があまりにも多かったです-
「がっかり…そういうこともあるよ。 もしかして、聖女はそこがいいの?」
私は首を横に振りました。 この位置がいいはずがありませんでした。 ただ、この目の前の女の人も、自分が今まで見てきた人たちのように死にそうだと思って、また憂鬱になる気分でした。
いっそ、ただ一人でいた方が良かったと思いますが。
どうし。
希望を与えてはです。
「分かり。」
彼女はそう言って、軽く鉄格子をはがしました。 確かに略奪者たちが魔法処理なんとかって言った記憶があるんですけど。 あれ、あんなに簡単にはがれるものだったんですか?
「出ないの?」
「いや、そうじゃなくて…」
「狭いからなん? ちょっと。」
豆腐を割るように窓枠を潰す自称勇士です。
私は今度こそ脱出できる機会ではないかと思い-
久しぶりに胸がどきどきし始めました。
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