「青果の市」 芝木好子 1941年下半期 第14回
「青果の市」はこれまでの受賞作ほどドラマ性には富んでいないかもしれない。どちらかといえば、ありふれた日常の一齣を切り抜いて、それを集積し、1編の小説を完成させているみたいだ。
この小説は八重というひとりの女性の、商売人としての生き様を描いた小説である。八重は元々、家業を継ぐつもりはなかったが、長女として家族の生活のために青果店を営んでいる。市場の改正に伴い、八重はもとの神田市場から築地市場に店を移転させた。糶りでは豪腕ぶりを示し、お得意さんもできて青果店はますます繁盛した。八重は結婚もせず、ひとりの商売人として成り上がっていた。
しかし、ある日、市場の規則が再度改正し、これまでのような経営が難しくなった。そこへ、弟の恭らが機転を利かせて店はなんとか続けられる。しかし、そのために八重の要はなくなり、彼女は家を出ることにした。
当時は、女性にとって自立して商売をすることが難しい環境であった。芝木好子は戦時中の文壇の風潮に迎合することがなかった小説家といえよう。彼女は、こうした身近な女性の不公平な現状を綴った小説を以後も次々に発表し続け、文壇に足跡を残していった。
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