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文化祭一日目。

今日は姉妹校として征華学園の一年あとにできた浅山学園。

国内では二番目に広大な敷地面積を誇る学園だ。


そこの理事長先生が従姉さんの幼馴染で腐れ縁だそうで真っ先に合同開催を了承してくれたのも浅山学園だ。


「すごー!! めっちゃ広くない!?」


「敷地面積は征華学園の三分の二なんだって。国内で二番目に広い学園だとか」


「他の学校涙目だね」


「まぁね。でもここは中高一貫だから近くの中学校とか高校が合併してできたところだし」


「なるほど、つまりは高校の数は減ったけど、生徒の入れる数は減ってないってことだね?」


「理解が早くて助かる」


浅山学園が出来るにあたって周囲の中学校や高校は全て合併され、国内最大規模の中高一貫校として名を挙げた。

その時に在籍していた生徒は全てその浅山学園に編入。

もちろん偏差値にも差が生まれないようにクラスを調整して編成したことで編入した後も、問題なく勉強に望めてさらには友達もさらに増えてしまうというオプション付きで瞬く間に大人気となった。


「翔はこれから実行員の仕事?」


「うん。あと五分くらいしたら行くよ」


「忙しくなりそうね」


「あ、神咲さんおはよ」


「おはよう。ごめんなさい遅れてしまって」


「大丈夫だよ。もしかして男子から声かけられてた?」


「言わないで。思い出しただけで寒気がする」


「あはは……まぁお疲れさま……」


相変わらずの人気だな。

見た感じかなり不機嫌そうだ。

せっかくの文化祭なのだから楽しんでもらいたいところだけど……これは先にご機嫌取りが優先だな。


とはいえ不機嫌ですって感じが可愛いからまぁこれはこれでよし!


「白雲くん……今変なこと考えたでしょ……」


「はて? なんのことやら?」


「兄者のむっつり……」


「おい俺は陰キャだからむっつりじゃねえぞ?」


「陰キャだからむっつりなんだよ」


うむ。

女子の思考は理解に惜しむ……


そして神咲さんがさっきよりも拗ねているように感じるのはおそらく間違っていないだろう。


「てか翔もういかなくていいの?」


「あ、ほんとだ。じゃあまた後で」


「がんばー」


二人に軽く手を振りつつ集合場所へと走ることにした。


「私たちはどうしよっか?」


「甘いもの食べたい……」


「よしきた! じゃあ甘いもの探しに行こう!」


残された二人は神咲さんの希望もあり甘いものが並ぶ屋台レーンに向かった。

神咲さんのご機嫌取りは真に任せておいてよさそうだ。俺が何かしようとしたらさらに拗ねられかねないし、真なら神咲さんがもし男子に囲まれたら毎度のごとく空手で何とかしてくれると信じておこう。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「あの……すみません、パンフレット家に忘れて来てしまって……」


「はいどうぞ。楽しんでくださいね」


「ありがとうございます!」


「手馴れているね」


「あはは、そんなことないですよ。ただせっかく来てくれたなら楽しんでほしいじゃないですか」


文化祭が始まってから1時間、既に会場には多くのお客さんが来てくれている。

中にはではバンドのライブや、屋台が開かれていて大いに賑わっている。


俺はというと正門で保護者の方の受付やパンフレットの配布をしているのだが……あまりの人の多さに人員が足りず、見回りに回っている役員までもが受付に回るというなんとも多忙状態である。


「確かに。君の提案のおかげで今回の文化祭が開催できたんだし」


「まぁ佐倉理事長先生の尽力が何気に一番大きいと言いますか……」


「あの人は本当にすごいよ。二日だっけ? うちとその他の高校を取りまとめて許可を得たっていう」


「実際には一日目で許可は貰っていたんです。あとは詳しい開催に向けての資料を各学校専用に作ってくれていたって感じですかね」


「やばっ!? 本当にできる女じゃん……」


「あはは、まぁそのおかげで無事に話もまとまったわけですし」


「それもそうだね」


「こら、そこの二人。話している暇はないわよ」


「「すいませーん」」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――中庭


「んー! これおいしい!!」


「ほんとだっめちゃうま!?」


「みさとっち分かってるぅ~」


「まこちゃんもね」


神咲さんの希望もあって甘いものを厳選しに出かけたところで私たちは4組の赤羽みさとちゃんに遭遇した。

どうやらクラスの女子たちとは別行動で文化祭を周りたかったらしく、腹ごしらえに中庭に来たんだとか。


「てかまこちゃんとうち話すの何気に初めてじゃない?」


「確かに! まぁクラスが違うからしょうがないけどさ」


「クソだよね~」


「口わる~」


「あなたたち本当にすごいわね……」


「えー? なにがー?」


私とみさとちゃんがクレープを頬張りながら笑い話をしている前で黙々と食べていた神咲さんが口を開いた。


「なんというかその……」


「初めて話したのになんでそんなに仲いいのかって?」


こくりと小さく頷く神咲さんにすこしきゅんとしてしまったが、私とみさとちゃんは顔を見合せてクスッと笑う。


「「幼なじみだからね、私たち」」


「え?」


2人で口を揃えて出たその単語に神咲さんはキョトンとしている。


まぁ無理もないかな、私とみさとちゃんが幼なじみなんて翔でも知らないんだし。


「おさ、え、幼なじみなの……?」


「うん。って言ってもこれまで1回も同じクラスになったことがないから話したことあんまなかったけどね」


「昔から人気者だったもんねまこちゃん」


「まぁね。この美貌ですから」


「うわぁー女の敵だー」


「つ、つまり2人は昔からお互いに認識があって、今日は幼なじみでありながら初めて話したってこと?」


「そゆこと。まぁ昔の私陰キャだったし、コミュ障だったからねぇ」


「え、陰キャ? コミュ障?」


唐突なカミングアウトにさらに混乱した表情を浮かべる神咲さんを私とみさとちゃんは今、イタズラな笑みを浮かべて見ているのだろうな。


「てか神咲さんめっちゃ雰囲気と違うじゃんっ!」


「え、あ、それは……」


「確かに、普段クールで冷た〜い感じがしてるけど今は普通の女の子、みたいな感じがする」


「もしかして神咲さんって心許した人には緩いタイプ?」


「……」


またまた小さく頷く神咲さん。

今度は私とみさとちゃんの方がキョトンとすることになった。


普段はクールで冷めているかのような神咲さんが、一般的に知られる女の子のように頬を赤らめてクレープで紛らわせようとしている。


そんな表情を男子に見せたらイチコロどころじゃ済みそうない。


「へぇー! 面白いじゃん! もっといろんなこと教えてよー!」


「あ、いやっ別にっ誰に対してもそういうのはっ!」


「あははっ可愛いぃ!」


(あ、これみさとちゃんの可愛いもの見たら愛でたくなる本能スイッチ入っちゃったな……)


これは後で大変なことになるなと思いつつも私としてもまだ知らない神咲さんのことを知れそうで内心ワクワクしている。

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マドンナは恋愛対象に入りません 八雲玲夜 @Lazyfox_07

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