Page.18 『柔らかい雰囲気に囲まれて』

拝啓。お父さん、お母さん。

これまで友達を家に上げたのは幼馴染と従弟にのみノンデリの姉以外でしたが、今、僕はその二名以外に女の子(学園のマドンナ)を上げています。

とはいえ、上げたのはいいもののやっていることといえば夏休みの課題です。


「ここ、間違ってるよ」


「え、マジ? あ、ほんとだ計算ミスしてる」


「それと似た問題、必ずテストに出てくると思うからミスないようにしないと痛いところ突かれるわよ」


「教えてくれてありがとう。助かった」


本当に頭がいい。というか目の付け所が凄い。

自分のやつを進めながら俺の手が止まっていることに気づいて間違いを教えてくれるとは……


しかも問題解くスピードが桁違いだ。


明らかに俺の倍のスピードで解いている。


「神咲さんってほんとに頭いいよね?」


「何いきなり……」


「いやパッと見で俺の間違ってる所を見抜いて教えてくれるから」


「逆に気づかない方がおかしいと思うのだけれど?」


さすが秀才。


「私だって間違えることはあるし気づかないことはあるけど、小さなミスに気づけないほどじゃないし」


「今の言葉気づかなかった僕に対しての煽りととってもいいってことかい? なぁ天才さんや」


「私からしたらそう思うだけ。白雲くんにも苦手なものがあるでしょう? 逆に言えば記述問題は私より点数が高いのだから」


「ギリギリのライン攻めてますけどね? 1回でもミスしたら抜かれまっせ」


「ならそのミスを待つのみね」


この人さっきから喧嘩腰じゃないかい?


といっても実際に俺も俺で危うい立場にあるのは間違いない。


神咲さんとの記述問題の点数差はほんの1問か2問間違えただけで抜かされるほどのギリギリのラインを攻めている状態だ。


神咲さんが強気になるのも無理は無い。とはいえ俺も負ける気は無いんですけどね。


「それにしても意外と集中力あるのね? かれこれ4時間くらい勉強漬けしてるけど、まだ疲れたような様子もないけど」


「まぁ勉強は好きでも嫌いでもないから一度やり始めるとひたすらやり続けちゃう性格みたいなんだよ」


「そんな人学生ならほんとに稀よ。大体の人は長時間休憩無しで勉強したらオーバーヒート起こすものだから」


「じゃあ俺と神咲さんはその稀な学生ってことで」


「私は昔からこうだから」


「お墨付きとはこれ如何に」


神咲さんのことだから中学時代も成績は上位にいた可能性は大いにある。

何せ優秀な人だから人望もそれなりに集めていて、高嶺の花として認知されていたに違いない。


「神咲さんって自分に対しての驕りとかってあるの?」


「自信みたいなもののこと? だとしたらないわよ。私は常に努力して、その結果が善か悪に転ぶかを試してるの」


「自信を元から持たないってこと?」


「完全にっていう訳では無いけれど、自信があったのに失敗したら後ですごく後悔するから、よっぽどの事がない限りは自信なんてそんなにないと思ってるわ」


「神咲さんらしいね」


周りからしたら自信がなきゃもっと失敗する、とか自信なんてなしにあんな結果を残してるのは煽ってるとか言うのだろうけど、神咲さんはそれすらも黙らせられるほどに結果は残している。

それに自分を驕らずに協力して得た結果に関しては協力してくれた人がいたからと謙虚に答える。


ほとんどの人は神咲さんが手を貸してくれたからうまくいったと言っている人がほとんどだけど、神咲さんはそんなことを気にしていない様子だ。


「白雲くんも同じでしょう?」


「俺も? 俺は自信というか、やる気がないだけだから」


「それって致命的では?」


「うぅっ……」


神咲さんはたまに意地悪を言ってくる。


「それにしてもお腹すいたわね……頭使うとお腹すくものね」


「神咲さん集中してると空腹感とか感じてなさそう」


「どこかの誰かさんが勉強じゃなくて雑談を始めたから集中力が切れたのだけれど?」


「それはすみませんでした」


俺はノートやらをいったん閉じてお昼ご飯を作ることにした。

正直に言うと俺もかなりお腹は空いていた。


「ご飯勝手に作っちゃうけどいい?」


「買出しに出かけてないから家に何もなし、ご馳走してくれるならお言葉に甘えるわ」


「了解。オムライスにするけど」


「卵料理好きだから助かるわ」


神咲さんオムライス好きなんだ……ちょっと意外かも。


――それから特に会話をすることなく俺は料理に専念し、神咲さんはリビングのジュータンの上でゴロゴロしている。なんか猫みたいとか思ってしまった。


「はい、お待たせ」


「ありがとう……ってすごい……」


「ほんと? なら良かった」


「オムライスって大体の人ってご飯にスクランブルエッグを載せる人が多いイメージだけど、こんなにきれいなオムレツが乗ってるの初めて見たかも」


「まぁいちいち作るの面倒くさいからね。世の中にいるお母さん的な立場にいる人は大体スクランブルエッグだよね」


「私のお母さんが年下男子に女子力で負けてるって今度教えてあげよ」


「それ合法的に俺が恨まれない?!」


「その時はご愁傷さまってことで、いただきます。ん、おいしい……」


「よかったぁ。俺もいただきまーす」


実際の所俺がこんなに料理がうまくなったのは母さんと姉さんが原因だったりする。


母さんは毎日忙しそうで代わりに俺の家にはよく姉さんが来てくれていたのだけれど、姉さんも姉さんで仕事の合間を縫って様子を見に来てくれていたのもあって、せめてお昼くらいは自分で作れるようになろうと思ったのがきっかけだ。


偶然にも母さんが休みの日があって、その日に相談してみたら喜んで教えてくれた。

調味料の種類や食材の調理方法まで、小さな料理教室に通っているかのようにいろんなことを教えてもらった。


その中で一番教えてもらったのがこのオムライスというわけだ。


「このケチャップご飯少し辛いのね」


「あ、気づいた? 一応七味が入ってるんだ」


「なるほど……でもそんなに七味の辛さは感じないわね」


「ほんの少ししか入れてないからね。大本はケチャップだから少し赤を目立たせる程度だよ」


「今度真似してみよ」


「ぜひぜひ~」


それから雑談をしつつご飯を食べ終えると残りの課題を終わらせることにした。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【あとがき~】

あ、おはようございまーす?

さてと、夏休み編第二幕ですね。

翔くんのお家で学園のマドンナと勉強会にお昼ご飯。充実してますね~

征華学園の課題は各教科数問程度しかでてなくて、どれも難しい問題だけど解き方を授業内で教えてもらっているため、分かりさえすればお茶の子さいさいなんだけど、この二人は成績上位者の二人なので、特別課題を出してもらってます。

神咲さんの場合は苦手科目というものが存在しないので、全教科の課題を応用編と並行で解いていくという謎解きみたいな課題を出されていて、翔の場合は薫から一日に一回メールで問題が出されるのが追加課題になっています。

他の生徒も同様にそれぞれの生徒に合った追加課題が後日郵送されてくるため、課題が少なかったとしても夏休みに何もしないということをさせないのが征華学園の学習方針です。


っていうのが補足です。長くてすみません。

では次回またお会いしましょ~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る