第4話 カミングアウトは
しばらくすると、里奈の呼吸は完全に元に戻り、熱もだいぶ下がったようだった。この部屋には体温計もないそうで、むしろ買って来るべき物は、体温計と冷えピタだったようだ。
「祐作さん、あの、ありがとう。来てくれて。」
少し落ち着いて、リビングの椅子に座った朝陽が改めてそう言った。思わず破顔して、
「いやいや、頼ってくれて嬉しいよ。」
と、言った。照れ隠しに椅子を引いて座る。
「あのさ、さっきお母さんに電話した時、自分の子じゃないって言ってたでしょ。それって、お母さんがあんたの子かって聞いたんだよね?という事は、祐作さん、カミングアウトしてないの?」
朝陽がそう言った。
「あ、うん。でも俺はバイだから、子供が出来る可能性は、ゼロではないんだ、よな。」
少し気まずい。別に恋人同士ではないかもしれないが、一応それに近い相手に、女と付き合う可能性がある、などと話すのは、どうなのか。
「朝陽は?女の子には全く興味なし?」
話題を変えようとして口を開いたが、あまり変わっていない。
「うん。多分。」
朝陽は里奈の方を振り返った。すやすや眠っている。
「じゃあ、俺は帰るかな。里奈を起こしてもいけないし。」
静かに立ち上がり、玄関へ向かう。すると、朝陽も立ち上がってこちらへやってきた。見送るつもりなのだろう。
「朝陽、疲れただろ。今の内に眠っておけよ。」
そう言って、抱きしめた。
「うん。ありがとう。」
朝陽は抵抗せず、むしろぎゅっと抱きしめ返してきた。だが、すぐに腕を放した。頭の上に軽く手を置き、ポンポンとやって笑いかけると、朝陽は少しだけ笑顔を見せ、はにかんで視線を床へ落した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます